第一章14 「白の巫女」
戦闘は苦手です。
Sideハク
私、ハクは巫女です。
獣人族のみ信仰している……というよりかは、獣人族のみ知られていないが正解ですね。
過去の英雄の血を引いている私は特別視されています。
その証拠がこの髪の色です。
白い髪の色というのは獣人族では神聖なものとして崇められます。
そして私は信託を受けることができます。
その代わりに自分がその信託を知るとその力を失うという……何とも言えない制約がありますが。
そのせいで私は自由な暮らしを送ることができませんでした。
つい数日前までは……。
少し前の出来事です。
私は信託を受けました。
信託を受けると私は気を失い。
周りにいる人に別の誰かが私の口で信託を話すのです。
それを聞いたじいは私を獣人族領から馬車を使い人属領にある”ヒュマノス王国”へ連れ出しました。
理由は信託の内容と被るようで教えてはくれませんでしたが、じいの深刻な顔を見れば大事なことなのだとすぐわかりました。
そして今はナギルの街という所に滞在しています。
「じい」
今の私は不安で胸がいっぱいです。
この町まで無事に来れたのはカイ様のおかげなのですが、そのカイ様がギルドマスターと領主の依頼で危険な森へと行ってしまいました。
「カイ殿ならば大丈夫でしょう。あの御仁は私たちでは敵わぬほどの手練れ。そうそうやられることはないでしょう。……しかし、ハク様の心配も無理はないでしょう。ですが、今は辛抱の時ですよ」
さすがというべきでしょうか。
私が何も話さずとも、じいは私が何を考えているかは分かってしまうのですね。
「そうですね。カイ様はお強いですし」
そう言っても不安はぬぐいきれません。
……早く無事に帰ってきてくれますでしょうか?
☆
Sideカイ
ドラゴンが倒れてから数十分。
まさか殴っただけで終わってしまうとは思わなかった青年はしばらく待っていたのだが、それでもドラゴンは起き上がる気配はなく、仕方なくあたりの調査をしていたのだった。
「何もかも燃やされて証拠も何もないか……」
辺りは見渡す限り燃やし尽くされていて何もない状態だった。
かろうじて残ったのは精霊信仰の石碑のみだった。
何が書かれているかというと、”風の精霊をこの地に祭る”。
簡単にいうとそのような内容であった。
……つまり収穫なしなのである。
「俺が魔法を使えれば何かしらわかるのかもしれないのだが」
街に戻ったら何かしら魔法を勉強しようと決めたのだった。
しかし、このまま帰るのも気が引けるので、隣で倒れているドラゴンに話を聞く……もしくは領主たちに会わせた方がいいと結論付け、さらに待つことにした。
それから2~30分後。
『う……うぅ……』
ようやくドラゴンが目を覚ました。
「気分はどうだ?」
『うむ……少し頭が痛むが、たいしたことはない』
起き上がったドラゴンは敵対の意思はなく、落ち着いて話を聞いてくれそうな雰囲気だった。
「色々聞きたいことはあるけど……とりあえず、君はどうしてここに?」
『そうだな……てっきり呼び出したのはお主だと思ったのだが、どうやら違うようだの』
そのあと、ドラゴンはこれまでの経緯を話し始めた。
ドラゴン……グィネラは隠れ里のような場所で暮らしていた。
グィネラは日課の散歩の途中で強い魔力を感じ、急いでその場に駆け付けたのだが、どうやらそれは罠だったようで、気づけば転移魔法によりここへ召喚されていたということらしい。
そこに現れた青年が魔法を使った張本人だと思い、襲い掛かった。
というのがこれまでの出来事だった。
「ふむ……。でもいきなり襲い掛かってきたのはびっくりしたよ」
『それは……すまぬ。どうも我らは短気なのが欠点でな。怒り出したら止まらぬのだよ。許してくれ」
「まぁ、いいさ。ドラゴンと戦うなんて貴重な経験ができたからね。うーん。それよりこれからどうする? 君の言っていた隠れ里に帰るかい?」
『そうしたいのはやまやまなのだが……』
歯切れの悪い返答をするグィネラ。
……これほどのことをしたのだから、一般的にはお咎めがあるのだが、今回は青年しかこのことを知らないので、ドラゴンが暴れたがどこかへ去っていったと証言すればとりあえずはグィネラに実害が行かないようにはなるだろう。
「この森を荒らしたことなら気にしなくてもいいと思うぞ。君は利用されただけだしね」
『お主……』
「それより、君をここへつれて来た奴には心当たりはないんだよね?」
『そうなのだ。人族が使う魔法だったので、お主が現れた時そうだと思ったのだ』
どうやら、この騒動を引き起こした奴はわからずじまいのようだ。
とりあえず領主に報告しなければいけないと思い、青年は帰り支度を始める。
「とりあえず、俺は街に戻ることにするけど、君はどうする?」
『隠れ里は人族領から遠いところにあるからな、帰る分にはすぐにとはいかないな。それにこれ以上この姿をほかの者に見せるわけにもいかない。そういう決まりがあるのでな……』
「そうか……俺が君を送り届けられればいいんだけどな」
『うむ……。おぉ!! その手があったか!』
そういうと、グィネラの真っ赤なドラゴンの姿が赤色に光り始めた。
「お、おい!」
敵意がないのはもうわかっているので、青年は非難の声を上げるだけで攻撃はしない。
しばらくして光がおさまり、ドラゴンの方を見ると――
「これなら、主殿についていけるだろう」
真っ赤な髪の幼女がたっていた。
要約
ハクは獣人族領で巫女である。
どのような目的があってナギルの街へ来たのか……
ドラゴンの幼女は仲間になりたそうにこちらを見つめている。
仲間にしますか?
はい
Yes
もう襲っちまおうぜ←
※グィネラはうん百歳です
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