第一章09 「出発」
今回はかなり短めです。
Sideダグラス
ギルドマスターの部屋には、いま二人の男が残っていた。一人はこの部屋の持ち主であるギルドマスターのガイン。もう一人のナギルの街の領主であるダグラス=ヒュマノスだ。黒髪の青年が部屋を出た後の出来事である。
「まったく、ガイン。とんでもない青年のを連れ込んだものだな」
「ちょっと待ってくれよ領主。別に俺が連れてきたわけじゃねぇよ。アイツが勝手にこの町に入ってきただけだ」
「そうだが、少しぐらい悪態をつくぐらいいいじゃないか」
先ほどの青年が考えていたように、この領主たちは最初はどこの馬の骨ともいえぬ青年を犠牲にしてでもと考えていたのだが、どこで間違ったのやら。共犯者ともいうのだろうか、どちらにもリスクのある約束をしてしまったのである。
「しっかし、あそこまで腕っぷしもよくて頭も切れるとか……」
「ガインの言いたいこともわかるが、それ以上は言わないでくれ。先ほどのことを思い出して腹が痛くなってくる」
そう領主は言うが、少し顔がにやけているのが見受けられる。何が面白いのかはガインにもわからない。その後領主は街の中央に建てられている自分の屋敷へと帰っていった。一人になったガインは、誰に言うでもなく一人呟く。
「もしかしたら……あいつがこの国の救世主に……まさかな」
今後どうなっていくのか、それはだれにも予想はできないのだった。
☆
Side快
「あっ! 探しましたよカイ様!」
とことことハクが俺の近くへと近寄ってくる。……何とも言えない愛くるしい歩き方をする女の子だ。
っとそういうのは後だ後。さっそく依頼を片付けに行くとしよう。
「――ということがあってな。俺はこれから依頼を片付けに行かなきゃらならない。悪いがここでお別れだ」
「そういうことなら任せてください! 私がしっかりサポートします」
……話が通じていないのだろうか? それとも大の大人10人分くらいの食べ物をおなかの中に押し込んだから頭がおかしくなったのではないのだろうか?
「ハク達が通ってきた白魔の森に行くんだぞ? あそこで襲われそうになっていた女の子を連れていくと思うか?」
「……でも」
「でもじゃない。どうせ俺はあそこで数日サバイバルしていたから、ホワイトクラスとか言う魔物相手じゃ死にはしないよ。それに一生の別れじゃないんだ。依頼が終わればここに戻ってくるさ」
「わかり……ました。それではここでお帰りをお待ちいたします」
最後は伝家の宝刀”頭をなでる”でこの場を納める。さすがに女の子を連れて闘うっていうのは、いくら俺でもキツくなることがあるだろう。命を預かるようなものだから”自分の不注意で死なせてしまいました”なんて言いたくないしな。
「それじゃあ俺はもう行くよ」
そう言って俺はギルドを後にした。後ろから『いってらっしゃいませ』という先程より元気のない声を聴きながら。
要約
ダグラス:あの青年は怖いな……。
カイト:めんどくさいことは早めに終わらせよう。
ハク:……(´・ω・`)ショボーン