序章01 「プロローグ」
皆さま初めまして、そしてご無沙汰しています。
邦継です。
前作の更新をお楽しみにしていた皆さま大変申し訳ございません。
見切り発車が足を引っ張り、設定をろくに作らなかったことが原因で、最終的にモチベーションが上がらず途中で打ち切りという形になりました。
今回は半分新作半分リメイクのような感じになっております。
皆様がこの作品を読んで楽しんでいただけると幸いです。
2016 10/27 主人公の名前を”黒羽快斗”から”黒羽快”へ変えました
Side快
青々とした草花が辺り一面を覆っている森で、たった今殺し合いが始まろうとしている。
白を基調とし若草色の下地を使っている見事な羽織を靡かせ、黒を基調とした胴着を身に纏っている20代と思われる男性がいる。腰には装飾が一切ない黒一色の刀……刀身も真っ黒な刀を差している。そして周りには男性を取り囲むように、涎を垂らし飢えに飢えているであろう狼のような動物が五匹。彼を取り囲むようにしている。
そのような状況下にも関わらず彼は動揺することなく……楽しそうといった笑顔を浮かべている。
数分であろうか、時間が流れているであろうが数時間経ったかのように感じる緊張感のなか、彼はゆっくりと腰を落とし刀を抜き構える。
それを待ってましたかと言わんばかりに一斉に周りの狼たちは突っ込んでくる。彼はまだ笑っている。
とてもではないが見てはいられない。武器を持ってはいるとしても狼の集団に襲われれば無傷ではいられまい。いや、確実に殺され食料になってしまうだろう。
そのような悲惨な出来事には…………ならなかった。
彼はまるで見えているかのように狼の突進を躱していく。そして一匹ずつ首をはねていく。
噛みついてくる物には半身で躱しざまに一閃。二匹同時にひっかいてくる物には間を瞬間的に加速し通り過ぎ、着地したと同時に一匹を、さらに踏み込み一閃。流石に分が悪いと思ったのか、その脚力を生かし逃げようとした二匹を追いかけ一匹ずつ仕留めていく。
……とてもではないが人の成せる技ではない。
そして、狼が彼の周りから完全にいなくなった頃に言葉を発する。
「うーん。……これ食べられるのかな?」
人とは思えぬ動きをする彼は狼を何匹か担ぎ、何事もなかったかのようにその場を立ち去った。
地球ではないこの世界には、冒険者と呼ばれる職業がある。剣などの武器を使い、または魔法という摩訶不思議な力を扱いって魔物と呼ばれる獣たちを狩る。そして時には捕まえて報酬を得るという危険と隣り合わせなものである。
その冒険者たちの中で危険すぎるからと、決して近づいてはいけないと呼ばれている森が存在する。
……ごく最近にその森から生還した男が冒険者の集まる”ギルド”に所属したとかしないとか。
☆
俺黒羽快の両親は3年少し前に病死という形でこの世からいなくなってしまった。
それからは幼い頃から居合を教えてくれていて、武術道場を経営している祖父のもとに引き取られ毎日大学へ通っている。
武術を学びながら医学系の大学へ通っていることもあり、周りからは少し浮いている。そのために友人は数えるくらいしかないのはここだけの話だ。
両親がなくなってからというもの、より一層居合の稽古に力が入っていた。理由は……悲しい過去を思い出さないようにというのが事実だ。
その努力が報われたというのはどうかとも思うが、つい先日祖父から”免許皆伝”をいただくことになった。同じ流派ではあるのだが、祖父は空手や拳法など無手を得意とする武人である。
なぜそんな祖父が俺に居合を教えているのかというと、子供のころの俺が”刀”に無性に興味を持っていたからだ。そして半ばわがままのような形で祖父から刀の扱い方を教えてもらえることになったということだ。
そんな経緯だったからか、最初はそこまで力を入れて教えてはくれなかったのだ。だが、日数が経ってある日祖父が『お前は刀に愛されている』と言って、その日から本格的に刀の扱いを教え込んでくれた。
結局どういう意味で言ったのかはわからなかったのだが、いわゆる”才能がある”ということだと解釈している。
そんな毎日を過ごしていた俺なのだが、大学の帰り道に交通事故にあった。お恥ずかしい話なのだが、信号無視のトラックに引かれそうになった子供をかばって……と、まぁベターなことになってしまったのだ。
――そして俺は今、雲の上にいる。うん、このような小説をどこかで見たことがある。いわゆる”死後の世界? ”みたいなところだ。
ざっくりと周りの状況を説明すると頭上にはきれいなオレンジ色の空が広がっており、足元には先ほども言ったとおりに雲が広がっている。離れているところには神殿のようなものがっていて、一言でいうのなら黄昏時のギリシャ神話風景だな。
「俺は国か地獄かどちらになるか…………天国でお願いしたい」
しみじみと願うばかりだ。
思えば20年近く生きてきて善行をやってきたことも無いような気がするし、悪行の範囲が分からないがやってはないと思う。つまりどっちつかずなのだ。サブカルチャーと呼ばれるアニメやライトノベルを楽しんでいたことと、祖父との稽古……あとは大学ではトップではないが常に上位にはいるくらいの勉強はしていた。
うん、天国でお願いします。
まだまだやりたいこともあったのだが、まぁ死んでしまったのなら少しでも良い方へ。
「そう、君は死んでしまったのさ! ようこそ死後の世界へ」
唐突に後ろから話しかけられた。驚いて慌てて振り返ってみると、そこには12歳くらいの金髪の少年が立っていた。見た感じ白人の少年で、服装はテレビやそういう類の資料とかで描かれているような神話時代の人々の服装で、背中に翼とかは生えていない。天使?
しかし、地球ではまずお目にかかれないであろう整った顔立ちをしており、いわゆる”ショタ”と呼ばれる部類では断トツの人気を誇るであろう顔だちをしている。
「えぇと……君は?」
「おっと失礼。僕の名前は”ノア”。神様さ!」
天使かそれに順ずる何かだと思ったのだが……まさかの神様だったとは。個人的なイメージとしてはもっと白髪のおじいさんを想像していたのだが……。
「地球では昔からそういう風に描かれているほうが多いだろうね。実際は老若男女様々さ。想像力が豊かなのは君の国の特色ではあるけれども、それを現実だと決めつけるのは色々とよろしくはないと思うよ、僕は」
あれ? 俺声に出てたか?
うむ、言葉は発していない。……どうやら神様は人の考えを読むことができるようだ。というのが分かったところで、俺には対抗する手段はないのだがな。
ノア……ノアの箱舟くらいしか出てこないな。一応ノア神とか読んだ方がいいのかな? でもなんかしっくりこないしな。ショタ……神様……ショタ神とか仇名にしたら面白そうだな。
「ショタ神……ショタ神か。いいねぇ、面白い表現の仕方だ。今後も僕のことをそう呼んでもらってかまわないよ」
どうやら神様は気に入ったようだ。
ということをしている場合ではない。今俺がなぜここにいるのかを説明してもらわなければ。
「あぁ、そうだったね、それじゃあ説明していこうかな」
「……人の考えを勝手に覗くのはやめてくれ」
「フフフ、そこまで構えなくても大丈夫だよ。基本は人の子の思考は読まないようにしているんだ。……さて、まずはこの場所について説明していこうかな。最初に君が考えていた通り、ここは神様が住む世界。君がいた国では”高天原”って呼ばれていたね。そこにある僕の……プレイベートルームだと思ってくれてかまわないよ」
そうなんですか……でもさっき俺の思考をずっと読んでいましたよね?
「まぁまぁ、そこは置いといて。次にいこう!」
「……おいおい」
「さて、ここから本題に入ろう。なぜ君をここに呼んだかだけど、簡単にいえば僕が管理する世界に転生……今回は転移という形になるね、それをしてもらいたくて来てもらったんだ」
さらっと話題をすり替えたか……まぁいいけど。
それにしても異世界か……楽しそうだとは思うが、どうも裏がありそうで怖いな。それになぜ俺なんだろうかっていうのも気になるし……。
「なぜ君かっていう質問には答えられないよ。あっちに行ってから自分で探し出してみてくれ。君の言う”裏”ってのに関わることだしね。それと、僕の世界でやってほしいこともあるし」
やってほしいこと?
「……厄介ごとは勘弁だぞ?」
「いや、そんなに厄介でもないし難しくもないよ。君には世界を旅してもらって、体験した事とかを定期的に僕に報告してくれればいいから」
え、それだけ? そんなことでいいの?
「意外かい? まぁ、それだけって思うかもしれないけれど、僕の世界にはね、”魔物”と呼ばれる生き物がいる、そいつらは、君たち人間を襲ったりする凶暴な奴らさ。そいつらと戦いながらの旅は……さながら、君たちが言うところのゲームをしている感覚だろうねぇ。もちろん死ぬときは死ぬけどね」
少し危険な気がするけれども……楽しそうだ。
じいちゃんに教えてもらった武術が日の目を見るときが来たって感じかな。日本では全力で戦うことなんてできなかったからな。
……あれ? 俺って戦闘狂だったっけ?
まぁ、どうでもいいか。第二の人生を謳歌することにしよう。楽しく暮らせて、周りにも迷惑をかけないで生活できるならどこでも満足だ。
「――君は、本当に面白い人だよ。欲がなくて、神様からしたらこんなに模範的な人間はいないよ」
「よしてくれよ。俺はどこかの宗教に入っているわけでもないし、ショタ神に対しても信仰心とかないぞ」
「いいよいいよ。僕は信仰の押し売りは好きじゃないほうだしね。それじゃそろそろ転移させるけどいいよね。餞別として僕の世界のことは、少し君の頭の中に入れておくよ。それと武器として君が生前使っていた刀を一緒にしておくよ。……じゃあね」
そうショタ神が言うと、俺の足元に黒い穴が開いた。
……あ、これ落ちるやつだ。
「それじゃあ、いい旅になることを祈っているよ」
「お、落とすのかよぉおおおお!?」
俺の声がむなしく響く、高天原だった。
☆
Sideノア
「随分と面白い存在だったね」
そう呟いていた。長い間話し込んでしまったけど、これは彼の人徳によるものなのか、それとも単に僕がおしゃべりしたかっただけなのか……どっちにしろ――楽しい時間を過ごさせてもらったよ。
「これで当分のお役目は一応終わりかな? 彼の持ち物にひと工夫も済んだし。さて、これから彼が歩む道は、茨の道かそれとも……」
どっちにしろ、これから僕がかかわることはまずない。僕がかかわるようなことになれば、それは――
「これ以上は、あまり考えないようにしよう。……せめて彼の歩む道が幸多きことを」
僕は願ってはいられない。彼がこの世界を救ってくれることを。
黒羽快
この物語の主人公。
基本自分が楽しければいいという人間、しかし根が優しいのでたいていはいらぬ苦労もしょい込むお人よし。
もともと居合などをやっていたので刀の扱いは手慣れている
ノア
異世界の神様。
主人公からはショタ神と呼ばれている。
何やら主人公を使って何かをしようとしているが、現時点では詳細不明