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2015年・2016年・2017年

たった一度、想像しただけ

「恐るべき世代」よ

愛を望む青年の想像した

たった一つの素晴らしき楽園は

想像の中でしか栄えられなかった

想像妊娠した聖女は

神の息子を想像で産んだ

そうだわれわれ人間たちは

神々の想像物でしかないのではないか

生きているかぎり

そっと拒絶される胸中の叫び

海水と同じ成分でできている夢と希望

灯を持たず闇の冥王に裂かれ

もう一度地底から人生やり直し

影を更に知れ

影を更に刻め

神に媚を売るのか

当の神は頭を垂れて呆けている

あまりに忘れられていたから

こうして神を殺しながら

自分を神と宣う驕りよ

たった一度、想像しただけで

神話の覇王となったつもりか

地の落ちたお前など

最初から去勢されたエディプスだ

さっさと目をつぶせ


「恐るべき世代」よ

自分のへその緒を斬ったナイフで

誰を殺し続ける

細胞を広げていった先が

樹木が朽ち果てていく土壌地だったら

もし自分が赤ん坊だった自分を

育てなければならないとしたら

きっとその醜さに驚いて

錆びれたゴミだらけの

コインロッカーに抛り込むのではないか

自分は窒息し乾涸びて死んでしまう

かといって灼熱の太陽の許では

同じように乾涸びてしまう

人生とは稚児の遊びの延長線上

靴を思想を肉体を履き違え

取り換え効かないことをいつ気づく

自らの心臓を情報雑誌に委ねた

潰れた貝殻を拾っても元には戻らぬ

たった一度、想像しただけで

性交の仕方だけ学んだと思い込んでいる

その対極の死王を侮りすぎている

お前の種はもう育つ地でもないのに


「恐るべき世代」よ

毎日の新聞を食い散らかして

いつまで恵みを乞うている

廃材を集めて幸せを乞うても

そのパイプにどんな力があるというの

伝統的にしきたりを破ったのはよいが

友人一人も誰もついてこない

虚構の称号をほしいままとしたところで

ふさわしい特殊な名詞などないのだ

きわめて平凡な睦びがお似合いだ

儀式ばった行動の深層ありふれて

浅い物言いしかできなくなっている

代用品で欲望を消費している

剽窃の繰り返しには眼暗のごとく

変なところで適合しても

それが狂ったってことでしょ

最も葬られているのは自分のこころか

たった一度、想像しただけで

自分は満たされていると錯覚している

虚の充填物を棄てろ

おぞましい魔術を使え

もはや自分と内乱調停していくしかない


「恐るべき世代」よ

かつての者は言った

履物を脱げ

お前の立っている場所は

聖なる地である、と

ひたすら俗なるあなたは

愛も知らぬ 十字架も知らぬ

粉々になった宇宙の断片でしかない

窓辺に咲く花の罪つくり

隔てられた当てのない戸口

入り口がなければ追いかけられず

血を塗った想いも持たず

もてあそぶだけの人生

目蓋から零れた水は蒸発した

二人組の神の握った腕は

しびれを切らした

ぞんざいな

テロリストによって

バラバラになって

一本の柱は倒れた

天と空を支えられずに

みな圧搾されて消える

何気ない思考に殺される

たった一度、想像しただけで

神を模倣したという

現実はもはや

錆び屑のマネをしているにすぎない

幽冥界からの怒りを受けよ


「恐るべき世代」よ

鋳型が流水した

生物実験室で発見された数値は

実際の恋愛で生かされることはない

列挙された要因のどれも蓋然性はなく

残虐の叫びに見いだされる血の

煌々とした紅にしか証明されない

流れる水に果てた鳥は那由多の先

優しさの先にある人の死骸

あらわれよ あらわれよ 

衰弱死した自分の感受性

殺されよ 殺されよ

肉体を通しての自分の脆弱性

自然流露的なことばを失った

借りた言葉 痩せた考え

目に見えない肋膜がわれわれを取りつく

礼賛崇拝する者は枯れ果て

焼失された思想を採るしかない

深い悩みを持ち想像力を養う

土の上で胡坐をかいて

手づかみで石を食い

絶え間なく草を吐き

神と性行為をおこなえ

掃き清められた無菌室で

まさか妊娠などしてないだろう

縄も撚らないその指で

放り投げるのは自分の純情

たった一度、想像しただけの

非現実な夢なら見ない方がいい

死すら想像できない者に生など要らぬ

さっさと死ね


「恐るべき世代」よ

豚に餌をやってるつもりで

自分に食べ残しを与えている

どうやって死ぬつもりだ

他人のせいにして

怒りながら死ぬつもりか

たった一度の

死を我々は無碍にしすぎている

どこぞの天国に移ろって

声を失った児童のように

何も言えない状態が続くだろう

浄界の王が言った

今更、聖なるものにはなれぬ

しかしお前はそっと死ねない、と

無数の王の一つでしかないのだ

突如、融没する足首よ

突如、切断された主翼よ

自分の肺活量で

思いっきり呼吸したことのない者よ

たった一度、想像しただけの

聞こえた声は何を言っていた?

聞こえないふりをして

閉ざしたのは

何だったのか考えよ

お前たちは未来の懸け橋

不気味な、きわめて不気味な未来へと

続くために犠牲にされた世代なのだ


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