夜道
短めです。
暗い夜道、女は一人で歩いていた。
今日は新月のためか、街灯の明かりが僅かに道を照らすだけで他は闇に包まれていた。
女はふと足を止め、後ろを振り返った。
しかし、直ぐに首をかしげ再び歩き始めた。
そんな様子の女に忍び寄る影があった。
男は全身黒色でじりじりと女に近づいていく。
あと一歩で女を掴めそうになった時、女が男に気付き悲鳴を上げた。
「いやぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
「チッ!」
女は全速力で駆け出した。
男も舌打ちをした後、全速で追いかける。
―やっと見つけたんだ、逃がさねぇよ!
女は死に物狂いで駆けていた。
履いていたピンヒールは折れ、髪は乱れまくってたが今はなりふり構っている状態では無い。
普段から運動はあまりしていないので、直ぐに息が切れ始めた。
喉が渇き、声が上手く出せなくなる。
そして暫くの後
「つ、着いた…」
女はやっと家の前まで来ることが出来た。
「あと少し…‥」
そう呟き、家に入ろうとすると…
「逃がさねぇよ」
ふいに背後から酷くしゃがれた男の声が聞こえた。
「こ、来ないでぇぇぇえええ!!…グッ」
女は必死に抵抗しようとしたが、男に口を塞がれ地面に叩きつけられた。男はその上に乗り、にやりと笑う。もちろん女が叫ばないように口は塞いだままだ。
「残念だったなぁ、もう少しで家に帰れたのによぉ…ま、俺が逃がすはずが無いけどな」
男は手にあるナイフを女の首に突きつけた。ナイフは街灯の光で銀色に輝いている。
「心配しなくてもいいぜぇ、直ぐに殺してやるからよ。痛みは感じるだろうけどな」
「ん~!!」
男は女が何かを叫ぼうとしているのを見て、舌なめずりをした。その目は不気味に爛々と輝いている。
「じゃーな」
「んんー!!!」
男は軽くそう言うと、何とか逃げようとする女の頚動脈を勢いよく切り裂いた。その刹那、女の視界一面に赤色が広がる。
「ん!!んんんんーー!!!!!!」
女は暫く地面をのた打ち回っていたが、その体は徐々に体温を失っていき、遂にはピクリとも動かなくなった。
女の様子を見ていた男はうっとりとした表情をしていたが、動かなくなった瞬間その顔からは表情が消え失せ、女の死体を蹴り転がすと元来た道を歩き始めた。
「あーあ、面白かったのに…もう動かなくなっちまった」
そういう男の顔はまるでお気に入りの玩具を取られた子供のようだった。頭の後ろで手を組み、さっきの出来事を思い返す。
「くくっ、でもあの顔が見れただけいっか。あの恐怖に支配されてるときの顔、たまんねぇ!!」
男はそう呟くとクスクスと笑い始めた。
その笑いはだんだん大きくなり、最後には町中に響きそうな声で笑い続けた。
そして次の日の朝、ニュースではこんな物が流れていた。
「それでは次のニュースです。今日の朝、△県××町で女性の遺体が発見されました。この女性の身元は分かっていません。また犯人についてはまだ何も分かっていませんが、近くの住人の話によると、昨日の夜ある男が狂ったように笑い続けていたという事で、警察はその男が犯人という方向で捜査を進めています。それでは次は最近話題の………」
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