初めてのarticulation・6・
「やり直し、利かないよ」
その言葉に、落ち込んでいた心が、益々重くなってきた。
何が起こったのかまったく分からずに、儀式は終わっていた。
儀式といっても、パートナーになる二人と、立会人と、対になっている何か、たとえばリングとかネックレスとかブレスレットとか…その他色々あるのだろうけれど、そんなペアになる物があれば、何かがない限りチャッチャと終わってしまうのだ。
何で知っているかって、ベルゲニアとプラナスの立会人を私がして、対になる物も私が準備した。
意外と言われるけど、私は手先が器用で、染色に使う葉や木々をお祖母ちゃんに教わっていたから、準備できる限りの一番上等な絹の糸を染めて、それと二人と相性の良い石をビーズにして織り込みながら、ブレスレットを作ってあげた。
儀式の作法は、両親の話、お父さんとお母さんがどんな風にして知り合ってって件から始まるんだけど、その中に儀式の話もあって、その話をこれでもかって散々聞かされていたから知っていた。
子供の儀式と笑われるかもしれないけれど、その儀式がが何故だか上手くいってしまって、二人はちゃんとしたパートナーになれたのだ。
これに関しては、大人に吃驚された。
何も知らない子供は遊びでするんだけど、それが正式に出来るとは考えていなかったみたい。
儀式は、お互いに合意の上で行うのが当たり前なんだけど、合意の上でもパートナーになれない事があるそうで、大抵が儀式が正確に行われなかったからというのが失敗する理由なんだって、後から聞いた。
だから、学園内での儀式は立会人が先生がする事が多い。
でも、先生方が立会人をする時には決まり事があって、色々な事をクリアして儀式が行える。
そして先生方を立会人にして儀式を行ったからってパートナーになれるか、というと…
上手くいかない事が稀にあるらしい。
先生方だから儀式を失敗する事はないはずだけど、そういう場合はパートナー同士に問題があるんだそう。
それは両親から聞いた話。
理由も聞いたんだけど、難しい言葉がたくさん出てきて、小さかったから何を言われているのかわからなかった。
そんな私の様子を見てお母さんが、
「要するに、お互いの相性だけじゃないって事よ」
と言ってくれた。
両親のように仲良くても早々パートナーにはなれないんだなって、漠然とその当時の私は考えていた。
そんな大切な儀式なのに反論する間も与えられず、儀式をおこなってくれた立会人である、コーナスはその止ん事ない儀式を淡々とこなして、さらりと何処かに行ってしまった。
コーナスというのは、私より二つ学年が上で、学園内で一、二を争うぐらいの実力の人。
私の平穏を奪っていった権化と友達な訳ではなく腐れ縁だと、後でコーナスは主張していた。
そして何故そんな事になったのかを問いただしたら、
「『立会人をしろ』としつこいから、仕方なく」
なんて、憮然とした態度で私に言い放ったのだ、コーナスは。
そして本当に不思議な事に、コナースの取り仕切ってくれた儀式は、すんなりとものの見事に滞りなく終わってしまっていたのだ。
コーナスがいなくなって、呆然としている私を笑って見ている目の前の男、セネシオだけが残されてしまった。