初めてのarticulation・2・
私の生まれたこの国『プルトニー国』は緑に囲まれた、希少価値のある鉱物が取れる事で有名な小さな島国。
その国一番の大きい深い森のそばで私は生まれた。
私の両親は、祖父母の後を継いで薬師をしている。
後を継いだといっても、お祖母ちゃんはまだ健在。毎日元気に薬草を育てている。
さすがに森の中に入って薬草を取りにいく事はなくなったようだ。私が小さい時にはよく行っていたけどね。
薬師とはいえ私の両親、それに祖父母も、魔法がそれなりに使える。
と、その前に、まずこの国での魔法使いの話をしなくちゃいけなかった。
この国で、魔法を使うには、二人一組出なければならない。
何故なのかは、よくわからない。
もうずーっと昔から決まっていた、二人一組だって。
だから、お父さんはお母さん、お祖父ちゃんはお祖母ちゃんが魔法を使う上でのパートナー。
でも二人一組で魔法を唱えるのはこの国だけなんだそうだ。そうお祖母ちゃんが教えてくれた。
元々お祖母ちゃんはこの国の出身じゃないから、色々な事を知っている。
お祖母ちゃんの国の魔法は、一人で武器や杖を媒体にして唱えるらしい。
本当はお祖母ちゃんは一人で魔法が使える。
でもこの国に来てから、一人で唱えることはなくなった、と言っていた。
どうしてかと聞いたけど、「どうしてかね」としか言ってくれなかった。
そしてお祖父ちゃんが亡くなってからも、一人では唱えることはなかった。
その他の国の魔法使いも、物や動物を媒体にする事があっても、二人がかりなんて珍しい、って言っていた。
でも、この国の人達はそれが珍しいという事をあまり知らないのだ。
元々国自体が他国との行き来や余所者を嫌う節があって、最初はお祖母ちゃんも忌み嫌われていたそうだ。
忌み嫌われる、ってのは大げさだと思うかもしれないけれど、お祖母ちゃんの容姿が違ったらもっと違ったんじゃないかなと思う。
この国では、黒い髪は災いをもたらされる、と考えられていて忌み嫌われているのだ。
そして、お祖母ちゃんの髪の毛は黒かった。
でも今はどちらかというと、慕われるようになっていた。
詳しくは知らないけれど、この町の流行病をすぐに治してしまったからだって、お父さんが言っていた。
最初はその流行病をもたらしたのは、お祖母ちゃんだって言われたらしいけど。
亡くなった人もいたけれど、結局は流行病を薬で収めちゃったし、その所為か王家からの依頼があったりして、この国の『王家』の力は絶大で、悪く言う人は少なくなったらしい。
そんなお祖母ちゃんの血を私は誰より人一倍多く貰ってしまった様なのだ。
そう、私も、おばあちゃんと同じく、黒い髪なのだ。