孤独な殿
戦場では命などちっぽけな存在だ。
隣国との戦争が始まり早半年が過ぎ、
この最前線にいた兵士も随分と入れ替り
半年前の開戦からいた隊員は私を除き誰一人としていない。
私は部隊の古参として最前線に未だ立ち続けている。
―半年前、新兵として始めて戦場に立ち敵兵に銃口を合わせたとき
手に汗が噴出し敵を狙うアイアンサイトはブレが止まらなかった。
訓練はしたはずだ、だから大丈夫…。
そんな甘い感情がまだ心のどこかにあったのだと思う。
教官には甘い感情など戦場にいらない。
甘い感情を持ったときそれは死を意味すると教えられたはずだった。
だが、戦場は訓練と違った。
訓練とはまったく感じることが無いストレスや独特の空気…
私は息を止めて全てを遮ると再び私はアイアンサイトを敵に合わせる。
ライフルの安全装置を外しトリガーガードに添えた指をトリガーに添え一気に引き絞った。
フルオートで発射された弾はバラけながらも敵兵士へ 直撃した。
直撃と共にゆっくりと後ろ向きに倒れていく兵士。
私は敵兵士から何かが噴出し私を包んでいくような錯覚に陥った。
それはまるで撃たれた兵士の怨念、呪詛。
あの時の瞬間は未だに忘れたことは無い。
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あれから半年後の今…
私は後退する部隊を援護するためたった一人で殿を務めていた。
たしかにたった一人の殿など無謀だろう。
もはや弾薬も少なくなり私も武装を放棄して後ろに向かって前進していきたい気分である。
しかし私はここであえて留まり敵を一人でも足止めすると決めた。
今までの思い出がフラッシュバックしていく…
某国のレーションが不味いことや銃の整備。
長時間アンブッシュしたが敵兵が来ることがなかったこと…
仲間の兵士の死に様も何度も見てきた…戦場では死に方は選べない
…さぁ、そろそろ私も逝くとしよう先に逝った戦友たちの元へ。
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「だああああああああ負けたああああああああ!!!!!!」
雪の降り続く寒空の下、
地元の住人ですら近寄らないような山の中で私の声が響く。
「いやぁ~まさか突っ込んでくるとは思わなかったわ」
私を最後に撃った男は軽い笑いを飛ばしながら私の肩を叩く。
私はいろいろ言いたいことがあったが捨て台詞代わりにこの言葉を残しておくことにした。
「あんだけ乱射したらやられるだろ!!!!ちくしょうめえええええ!!!!」
「はいはい、お疲れさん~」
なんだか冬の寒さが身にしみるサバイバルゲームの一コマであった。
~続かない~
~一応用語やら設定の解説~
・サバイバルゲーム=主にエアソフトガン、ガスガン、電動ライフル etc...とBB弾を使って行う、概ね20世紀以降の銃器を用いた戦闘を模す日本発祥の遊び、あるいは競技名。
・戦場=サバゲの会場、都心から離れた位置の人のあまり来ない山の中。
・アンブッシュ=待ち伏せ。
・アイアンサイト=銃の上側についてる照準を合わせる部分。
・某国のレーション=某国の横流しの携帯食料。今回は、開始前に食べたイギリス軍の水溶きオートミールという後付設定リアルにもある食料で食べると美味しくないです。
・銃の整備=電動ライフルの整備、配線の調整など。
・この最前線にいた兵士も随分と入れ替り半年前の開戦からいた隊員は私を除き誰一人としていない=今回はお仕事でお休みです。
・隣国=半年前からサバゲーで遊んでいるチーム。
この小説のテーマは初めは戦争物に見えますが、
実は中二病的な視点から見たサバゲ物となっています。
最初は夢オチも考えましたがなんだかありきたりなので予想がつきにくい
実はサバゲでしたというオチにしてみたわけです。