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勇者パーティを追放される寸前の僕は、どうしても辞めたくない!!〜無双仲間に恵まれた無能荷物持ちの逆転〜

作者: かんだ
掲載日:2026/08/20

一人称短編の練習の成果はいかに!?

というわけで、初のハイファンタジーです。

 今日、僕ことルウは追放される。


 僕は本日、日付が変わった時点でパーティルームに呼び出しを受けていた。呼び出したのはうちのパーティ「ホリムルの安息」のリーダー、アレフ。僕の幼馴染だ。


 僕の契約は今日まで。明日からも、このパーティに引き続き所属するためには新たな契約が必要だった。


「日付が変わってすぐにも解除したいくらい嫌われてたなんて」


 僕はめまいがするほど落ち込んだ。


「でも、仕方ないよな。僕は本当に無能だから……」




 去年くらいから僕らの国アラドルフィーネ王国では、『パーティ追放ムーブ』が沸き起こった。


 勇者パーティ候補といわれていた「迅雷の牙」の付与術師だったエルフィンさんや、「北摂のドラゴン愚連隊」の交渉役だったパティーネさんという、主にパーティの裏方仕事をしていた人が連続してクビにされる事態が発生したのが切っ掛けだ。


 しかし、これが不味かった。


 王国は常に魔王が支配するダンジョンとモンスターに悩まされている。そこで冒険者という職業が成り立つわけだ。そして冒険者は何人かでパーティを組み、ダンジョンやモンスター退治を請け負う。


 その中でも有名なパーティは似顔絵や絵姿などが売れるほど人気になり、英雄ともてはやされる。「迅雷の牙」も「北摂のドラゴン愚連隊」もそういった人気のパーティだったのだ。


 なので、ギルドが想定していた以上の影響力が出た。


 大手パーティのやりようを真似て、その他のパーティでも「追放ムーブ」が巻き起こってしまったのだ。




 あらゆるパーティで目に見えてわかりにくい能力の人、主に裏方を務めている人を追い出して、見た目派手な攻撃力のあるメンバーを加える動きが活発化した。


 最初はそれでもうまく回っていた。元いたメンバーの置き土産や、習慣化していたルーティンのおかげでさほど大きな支障がでなかったのだという。しかし、その効果が消えると徐々にその弊害が現れてきた。


 目に見えにくいからといって、何もしていないわけではない。

 裏方の仕事というのはそういうものだ。

 徐々に彼らを追放した影響が出始めた。尤も顕著だったのが、一番先に「追放ムーブ」を起こした二大パーティだった。


 追放された二人は本当に優秀な裏方で、その能力を遺憾無く発揮してパーティを支えていたのだ。


「迅雷の牙」のエルフィンさんは付与術師としては破格の魔力を有しており、かなりのバフを掛けていた。

 それがなくなったことで「迅雷の牙」はほぼ壊滅。今までなら半日もかからず攻略できていたダンジョンで人数を半数に減らしてすごすごと帰還した。


 また、「北摂のドラゴン愚連隊」の方はもっと悲惨で、パティーネさんだからと色々ととりなしてくれていた商家やギルド職員、鍛冶屋、宿屋などからそっぽをむかれ、今までのツケを払えと多額の請求をされた。借金苦の北摂のドラゴン愚連隊は文字通り本当の愚連隊に成り下がり、つい先日野盗扱いで討伐された。


 追放されたエルフィンさんやパティーネさんは、無事ギルドの斡旋で他のパーティに移籍し、そこでおおいにその腕前を披露していて皆からも大事にされているらしい。


 そんなわけでギルドからは「追放禁止令」なる文章が出た。


 ・片方だけの意向でパーティを追放してはならない。

 ・揉める場合はギルドが調停するので、それまでは追放扱いは保留する。

 ・理由なき一方的な追放を望む場合は、追放される者の行き先を確保する。


 などの条件が発表された。


 なにしろ、今回の追放ムーブで実質働けなくなったパーティが多発した。かといって追放された方は元のパーティに戻りたいはずもない。

 追放された冒険者の行き先を確保し新たにマッチングさせることに、ギルドはこの半年ほど奔走したのだ。そりゃあ、注文つけたくもなるだろう。



 しかし、中にはパーティ側の主張が正しい追放もあった。

 乱暴者だったり、利益を掠め取ったり、盗癖、酒癖や借金癖があったりなどの素行の悪いメンバーをこの機を幸いに追放したパーティもあり、そういった意味では動きが活発になったところも多かったのだ。



 ようするに、ギルドが納得するような追放なら揉めることなく通るというのが、非公式の見解だ。




「まあ、だから僕は追放されても仕方ないんだけどさ」

 とほほと肩を落とす。僕はパーティルームの入り口のドアを先ほどから凝視している。木目の模様でさえ覚えられそうだった。


 なにしろ、僕は本当に無能だ。

 一切合切の言い訳が立たないほどのダメ男だ。


 反対に僕のパーティはとても優秀で、結成から一度も負けたことがない。駆け出しからこちらもう五年。ずっとずっと進化を続けている。



 僕のパーティ「ホリムルの安息」は僕を含めて五人のパーティだ。


 まずは魔法剣士のアレフ。


 ジョブのとおり、剣も魔法も使えるオールラウンダー。次代の勇者とも名高い若手のホープだ。

 優しく、頼りになって、頭もいい。笑顔と一緒に白い歯がキラーンと光っても不思議じゃないくらい爽やかで感じのいい奴だ。

 依頼を受けて出向いた土地の老若男女は全て、解決し終えた頃には彼のことを誰よりも信じ、慕うようになる。ついたあだ名が「初恋泥棒」。そういう立派な青年だ。



 次に魔法使いのシャナ。


 炎の攻撃魔法を得意とする女性で、炎以外の属性の魔法も使いこなせる、おそらく魔法の天才だ。

 『象牙の塔』という魔法使いの研究集団から何度もスカウトがきてる。あそこにいけば最終的には「賢者」の称号を得られて、末は貴族にもなれるってくらいのところなのだが、彼女は「そんな面倒なところに行く気はない」と毎回断っている。

 気のいい、明るく頼もしい彼女はパーティのムードメーカーだ。



 その次に僧侶のリン。


 実は僕とアレフ、シャナは孤児でホリムルの里の孤児院で育った。そこの司祭様の一人娘がリンだ。彼女は僕らが冒険者を目指して孤児院を出た時に、一緒についてきてくれた。

 回復魔法のエキスパートで、他にも防御や索敵の魔法などもできる優秀な修道女だ。当然教会は自分たちのパーティの所属にならないかと誘ってきたが彼女は「昔からの仲間が大事なので」と断っている。すごく優しい子でのんびり屋さんだ。パーティの癒し枠である。



 そして最後に重戦士のホロウさん。


 彼は逆に最近僕らのパーティに加わったベテランだ。ホロウさんは実は例の追放ムーブの煽りを喰らって解散したパーティのメンバーだ。ギルドがうちのパーティは若手ばかりで経験が足らないだろうということで紹介してくれたのだ。

 ベテランならではの知識もそうだが、僕らでは迫力不足な交渉や信頼が足りない場面など彼がいるだけで安心感が倍増する。

 さらに腕前も凄くてミノタウロスくらいなら一人で倒せちゃうくらい優秀な人だ。


「どうしてうちに来てくれたの?」

 と僕が尋ねたら、彼は笑って

「どこでもよかったんだよ、無職だったからね」

 と嘯いた。本当はもっと上のパーティからも誘いがあったと知っている。僕らが心配で面倒をみてくれようとしたのだろう。そういう気遣いのできる優しい人だ。



「ホリムルの安息」は、とにかく優秀なパーティで、勇者パーティの候補にもなっている。その唯一の汚点が僕だ。



 正直に言おう。


 僕は本当に何もできないこのパーティのお荷物だ。

 剣も弓も槍も使えない。

 攻撃魔法も回復魔法も持ってない。

 付与魔法や高度な交渉術もない。

 特殊なスキルもない。


 僕自身の役割はポーター、いわゆる荷物持ちだがつい先日入ったダンジョンで魔道具の収納カバンを手に入れた。これは見た目以上にものがたくさん入るマジックアイテムで、売れば一生暮らせるような大金が手に入るという超レアアイテムだ。


 これがあれば能力ゼロのポーターなんて雇わないで済むのだ。こうなっては僕は正真正銘のお荷物だった。荷物持ちがお荷物になるなんて最悪だ。



 実はギルドの職員からも再三「もう辞めたら?」と言われている。


 曰く

 「ホリムルの安息」は勇者パーティになれる可能性がある。

 そこに何の能力もない僕がいることが彼らの負担になるだろうと。

 僕を庇って誰かが怪我をしてもいいのか?

 これからはもっと難易度の高い依頼も増えるだろう。

 足手纏いを連れて行けるほどダンジョンはやさしくはない。

 今ならギルドの職員として雇ってあげられる。その方がお互いの為だ。


 そう何度も忠告をされた。



 でも、僕はここを辞めたくはなかった。


 もともと、冒険者になりたいと言ったのは僕だ。アレフもシャナもリンもそんなことは一言も言わなかった。僕が言い出した冒険に僕だけ適性がなかったのは皮肉な話だ。



 アレフもシャナもリンもホロウさんもいつも僕も気にしてくれている。ダンジョンに行けばいつも僕は一番後ろで守られる立場だ。短剣の一つも使えない僕は戦闘ではまったくの役立たず。

 せめてダンジョンのマッピングだけでも頑張ろうと思ったが、方向音痴の僕には一番向いてないポジションだった。


 それでも、四人は愚痴ひとつ言わず、報酬もきちんと等分にしてくれた。さくっと聞いたところ、そんなパーティは他にはない。能力に比例させて分けるのが当たり前だ。



 でも、今日の昼にいよいよアレフから

「明日日付が変わるちょうどにパーティルームに来てくれ」

 と言われた。


 今日で僕の契約が終わる。きっと彼からクビを宣告されるのだろう。


 アレフはいい奴だから、きっと僕を怪我させたくない、死なせたくないって気持ちから言われるってことは疑ってない。

 もしかしたら悪者のフリをして意地悪な言い方をしてくる可能性だってある。


 ……たぶん、まったくもって似合わないだろうけど。


 アレフは根っからいい奴だ。きっと青い顔で僕にクビを告げるだろう。


 シャナやリンが聞くと悲しい思いをするからきっと僕にだけ言いたいのだろう。だからこんな深夜に呼び出されたのだ。



 わかってる。


 仕方ない。



 でも、本当はみんなともっと冒険を続けたい。絶対的に足手纏いなのはわかっている。なんとか僕にできることを探して皆のそばにいられる方法を見つけたいと縋ってみようか?


 僕は100回くらい考えた内容を反芻して唇を噛んだ。



 いや、だめだ。


 アレフが決断したのなら、きっとこれが最善だ。彼だってそんなことは本当はしたくないはずだ。もしかしたらパーティの貯金半分とかを僕に渡して「退職金だ」とか言われるかもしれない。


 その資金を元に、武器屋とか道具屋を始めて皆を支えるって手もあるかもしれない。

 故郷の孤児院に帰ってみんなが魔王を討つのを祈って待つのもいいだろう。



 でも、僕はここを離れたくない。皆のそばで勇者パーティを続けたい。


 なんて、わがままで醜いのだろう。自分がこんなに自分勝手で嫌な奴だと思っていなかった。かけがえのない仲間だと思っているのに。彼らの決断なら受け入れるべきだ。そうわかっているのに、辛くて泣きそうになる。



 僕は溢れる涙をぐっと拳で拭った。


 仕方ないのだ。才能がなかったから。

 せめて、彼らの行く末を応援して暖かく見送るのが幼馴染の僕の使命だ。笑って見送るのが僕の最大の彼らへの恩返しだ。


 時計の針が頂上を過ぎた。日付が変わる。

 僕は一つ大きく深呼吸してパーティルームのドアをノックした。


「どうぞ」


 中からアレフの声がして、僕はぐっと身を縮め、けれどもありったけの勇気を振り絞ってドアを開けた。




「誕生日!おめでとう!ルウ!!!」


「え?」


 僕は飛び散る光の破片と花びら、それから紙吹雪の前で呆然と突っ立っていた。


「いやあ、時間ぴったりだな!」

 とアレフが笑う。その横でシャナが

「アレフがさあ、日付が変わったと同時にお祝いするってきかなくてさあ」

 とぼやくとリンが「まあまあ」と宥めていた。

「どうした? びっくりしたかね?」

 とホロウさんが笑う。



 僕は、あまりの出来事に立ち尽くすしかなかった。


 どうして追放されるなんて思ったんだろう。

 アレフもシャナもリンもホロウさんもそんな人ではないのに。

 僕は劣等感から目が曇っていてあんな醜い想いに駆られていたのだ。



「ご、ごめんなさい」


 僕は耐えきれず泣き出した。


「お、おい? どうしたんだ、ルウ?」

「ほらあ、やっぱ朝からでよかったんじゃん。ねえ? ルウ眠い?」

「まあまあびっくりしましたね? 泣き虫さんですね、ルウ」

「いや、しかし確かに深夜に呼び出されたら何事かと思うだろうな」

「ええ!? お前らだってそれがいいそれがいいって言ったじゃんか! どうしたんだよ、ルウ? そんな泣いてないでこっちこいよ。お前の成人のお祝いじゃないか。これで全員成人だ。いよいよ勇者パーティだぞ」


 みんなの心遣いが痛くて僕は泣きながら説明した。


 追放されると思っていたこと。辞めた方がいいとギルドの職員から言われていたこと。昨今の追放ムーブが怖かったこと。収納カバンの所為でやることがなくなったことなどを順番もバラバラで説明したが、皆が黙って根気よく聞いてくれた。



「やっぱアレフの所為じゃん」

「ええええ?」

「あんたが、日付変わると同時にパーティーしようなんて言うから」

「そうですわねぇ。契約は誕生日で切り替わりますから、割とバレバレのサプライズパーティーだと思ってたんですが、まさかそんな誤解を生むとは思いませんでしたわあ」

「そ、それはまたひどい誤解をさせてしまってすまなかったな」


 四人、特にアレフは平謝りだった。

「悪かった!! お前だけまだ未成年だったから気にしてるんだとばかり思ってたんだ。だから盛大に祝ってやろうと思って」

 とアレフはいつもの優しい笑顔で僕に笑いかけた。


「それにしてもあたしが気になるのは、そのギルド職員よ。なんだってルウを勧誘したのかしら?」

「かんゆう?」

 あれは辞職勧告だったのでは? と僕が首を傾げると、シャナは腰に手を当てて首を大きく振った。


「いいや。あんたをギルド職員に勧誘してるのよ、それ」

「そうですわねぇ……わたしもそう思いますわぁ」

 リンも同じ意見でアレフとホロウさんも難しい顔でう頷いた。


「なんでだろう。僕なんて頭もあんまり良くないし、ギルドには全然利益のない役立たずなのに」

 と僕が首を傾げると、四人はものすごくショックなことを聞いたというような恐ろしい表情になった。



「や、役立たずって誰が?」

 と恐る恐るアレフが聞くので

「僕だよ」

 と答えると彼らは衝撃的なニュースでも聞いたように顔を歪めた。


「だ、誰がそんなひどいことを言ったんだ! 俺が斬ってくる」

「私の炎で燃やしてからよ」

「いいえ、私が地獄に叩きこみますわ」


 幼馴染三人は笑顔の中に何か恐ろしいものを秘めてそれぞれ得物を手にした。


「待ちなさい。それは後だ。事情を説明してやりなさい」

 と年長のホロウさんが諭すように言うと、アレフが困った顔で僕を見た。



「ああ、その…お前は役立たずなんかじゃない」

「でも」

 僕が何もできないのは事実だ。


「じ、実はな……俺たちが駆け出しの頃から割と順調だったのには訳がある」

 アレフは言いにくそうに話し出した。




「ぼ、僕の絵姿を売ったぁ!?」

「そうなんだよ、ほら冒険者パーティの絵姿を売るシステムがあるだろ、あれあれ」

 とアレフが説明をしてくれた。


 確かに、冒険者パーティには絵姿や似顔絵を売るシステムはあるが、通常ああいうのは人気のトップクラスのパーティのものだけだと思っていたが、新人の顔を売るためにも新人枠でそういうサービスがあったらしい。そこで僕の絵姿が売れたのだ。それも、想定外に。


 通常、駆け出しのパーティは資金繰りが厳しい。資金繰りが厳しいと武器や防具、薬草などが揃えられず苦労するのだが、僕らのパーティは初期装備を僕らの、いや僕の絵姿を売った金で潤沢に揃えられたんだそうだ。


「そんなの売れるの?」

 と僕は半信半疑だったが、三人ははあっと深くため息を吐いた。



「ルウ、お前鏡見たことないだろう。銀の髪、金色の瞳、さくらんぼ色の唇、薔薇色の頬、スラリと手足が長く、おまけに鈴を転がしたような声!って散々評判になってて、ぶっちゃけ貴族とかやばい店からの引き合いを断るのにギルドに相談したことが10回以上あるんだぞ」


「そうよ!言っとくけど私やリンよりあんたの絵姿の方が桁二つ違うほど売れてるからね」


「最近では拝むとご利益があるって私の祈祷入りで売り出してるので、桁三つですわ」


 ホホホとリンがなんだかとんでもない暴露話まで付け加えたが、どうやらその資金は今でも僕らのパーティを大いに潤しているらしい。



「ええっと、僕、役に立ってる?」

「もちろん!」

 四人は大いに頷いた。


「お前がいてくれるおかげで俺たちは不本意な依頼を受けなくてもいいし」

「あんたのファンの貴族からの庇護も受けてる」

「そうそう。教会の方にも支援者がいて、色々と手配もしていただけてますし」

「ジジイ連中も君を拝むと極楽へ行けるって信じているくらいだからな」


 僕はまったく無能で能力も何もないけど、外見だけでもみんなの役に立っていることを知って、ほっと胸を撫で下ろした。


「そっかあ、よかった」

 僕の涙が止まってことで、皆も安心したのだろう、盛大に色々なご馳走が並べられたテーブルについた。



「それにしても、そのギルド職員は気になるわね」

「そうねぇ。ルウに懸想しているのかもしれないですわねぇ」

「明日抗議しておこう」

 などと話しながらも、その夜僕は大いに食べて、初めてのお酒を少し飲んで、楽しくて嬉しくて散々騒いでついついその場で眠ってしまった。




◆◆◆




「おやさしいことで」


 うっすらと聞こえてくる声が僕の脳裏を掠める。でも瞼が重くて目が開けられない。僕はじっとテーブルに突っ伏してその声を聞いていた。

 ふわりと肩に毛布の重さを感じる。アレフが毛布をかけてくれたのだ。


「魔王軍遊撃王アレフ・ジークリンドが人間に親切にするなんて姿、部下には見せられんな」


「黙れ、ホロウ。悪鬼の貴様をルウリード様の側に置くだけでも腹立たしいというのに」


「仕方あるまい。神殿の予言を狂わせるためには五人組だと思わせた方がいい。年齢や姿形もバラバラに見せた方がよかろうよ。まあ、ルウリード様の麗しいお姿が変わっておらんで、どれほどそれに効果があるか知らんがな」


「しかし、魔王軍屈指の極悪非道暗黒神官のリンドアーネが修道女とは笑うしかないな」


「シャナリオンが魔法使いで通すならそれしか空きがなかったのだ。それもこれも魔王陛下がよりによって『冒険者になって勇者パーティになり魔王を討ち取る』とか言い出すから」


「拗ねるな、拗ねるな。しかし、ご自身がご自身を討ち取られるおつもりかのう?」


「それはない。そんなことはさせない。神との約束の最後の生まれ変わりだ。なんの能力もない人間に生まれ変わられるとはお労しい限りだが、このターンが終われば我々魔族と人間の間には境界が引かれ、二度と争いが起こることはなくなる。それが魔王様、ルウリード様の願いだ」


「……千度も殺され生まれ変わる代わりに平穏をか。お前は神の誓いを信じているのか?」


「信じる訳ないだろう。あんな連中の言うことなど、新米冒険者の『俺は勇者になる』って言葉より薄っぺらだ」


「ではなぜルウリード様の好きにさせてる?」


「忠誠とはそういうものだ。私の魂は彼と共にある。何があろうとも」


「……イカれてやがる。お前が魔王として立つなら悪鬼族は着いてやるぞ」


「お断りだ。忠義のない者の約束なんぞ不要。我々三名は永遠にルウリード様の僕だ」


「ま、せいぜいうまくやるこった」



 変な夢だった。アレフとホロウさんの声なのに、会話の内容はさっぱり意味がわからなかった。

 僕は何も知らず、何も気づかず、眠りに落ちていった。


 とにかく僕はパーティの役に立っており、辞めなくていいらしい。そのことが僕を安心させ、おかしな夢のことなどすっかり忘れさせたのだった。


 これからも、僕は「ホリムルの安息」の一員なのだ。


 追放されることなく、僕の人生は続いていく……はずである。おそらく、たぶん。

シリーズ以外の短編を投稿するのは始めてです。ドキドキ。

長いタイトルにしてみました(長ければいいってものじゃないとかツッコミは勘弁)


もうちょっと長くなるかと思ったら、短く済んでよかったよかった。

いつもは「3S探索者の代理人」という長編を書いているので、

夏休みにに少し違うのを書いてみました。


読んでいただけたら嬉しいです。

感想、評価、ブックマーク、リアクションなどいただけましたら泣いて喜びます。


では3S探索者の代理人もよろしく!


「3S探索者の代理人」

https://ncode.syosetu.com/n0274kw/

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― 新着の感想 ―
けっこう面白かったです。 ギルド職員の末路は如何に・・・
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