3 入学
「おい、そろそろ戻れ」
「はーい」
少年がそう言うと、カラスは少年の右耳に吸い込まれるように移動し、そしていつの間にか銀色の小さい鳥を象ったイヤリングへと変化した。
(おさらいしておきましょう)
(何をだ?)
(契約の内容ですよ)
(はぁ、1つ、アラン・ウェイドを演じること、2つ、いかなる状況においても正体を明かしてはならないこと、3つ、必ずお前の体を取り戻すこと、大丈夫だ、ちゃんと分かってる)
(頼みますよ?特に3つ目、いやほんとに)
(何度も言わなくてもわかっ……)
「おい、今までどこにいたんだよ」
汽車を降りて改札へと向かおうと歩いていた時、急に後ろから足を軽く蹴られ振り返ると、肩の当たりまで伸びた金髪の綺麗な少女がいた。
(おいアラン、誰だ、'リスト'にこんな子いたか?)
(えっ!?なんで??)
(おい、めっちゃ睨まれてるぞ?どうすればいい?)
私とアランの会話は念話のようなもので、頭に思い浮かべるだけで良いため、外には聞こえない。
(えーっと、とりあえず、アハハッって感じで誤魔化してください)
(ッチ)
「アハハハ……」
指示どうり乾いた笑みを浮かべる。
パチンッ
その瞬間、左頬へと鋭い痛みが走る。
「フンッ」
少女は私をビンタするとそのまま通り過ぎて行った。
(おい)
(あの〜なんて言うかその〜…スゥゥ…ごめんなさい)
(はぁ、あの子は?)
(幼馴染です、アストラに来るとは思ってなかったんでリストには入れてませんでした。多分ですけど1年行方不明だったからそれで)
(この前実家に顔出した時になんであってやらなかったんだよ)
(忘れて…ました)
(はぁ〜、お前なぁ、あまり乙女の純情を弄ぶもんじゃないぞ)
リストというのは、私がアラン・ウェイドとして生活していく中で、特に注意するべき人物をまとめたものだ。
しかし、これからだというのに早速リスト外の人物と一悶着起きてしまった。
おかげで周囲注目を集め、私は急いでその場を離れた。
(はぁ〜幸先が思いやられる)
(ため息ばっかりですね)
(誰のせいだと思ってんだコノヤロウ)
改札を出ると校舎がある方へと向かうが、校舎は湖の真ん中に浮いている為、皆どうすれば良いのかと悩んでいた、その時、校舎の方から1匹の大きな鷹が飛んで来たかと思えばいつの間にか黒のローブを着た老婆へと姿を変えた。
「「「お〜」」」
何人かの生徒は関心と驚きの声をあげる。
「皆さん、この度はアストラへのご入学おめでとうございます、式の準備で湖に橋をかけるのを忘れていました」
そう言うと、老婆は校舎へ向けて杖を一振する。
すると、轟音と共に湖の下から大きな石片が複数浮かび上がって、大きな橋を作り上げた。
再び生徒から関心と驚きの声が上がる。
(凄いな)
(魔女さんでもそう思います?)
「さて皆さん、荷物は一旦預かります」
老婆が手を叩くと荷物はウズに飲み込まれたかのように消えた。
「申し遅れました、わたくし教員のアストリッドと申します、講堂へと案内しますので着いてきてください」
〜 大講堂 〜
アストリッド先生によって案内され、大きな門を開くと上級生達による演奏と共に入学式が始まった。
みな席に座ると演奏が止み、正面に視線が集まる。
「この度はアストラへの御入学おめでとう。ーー」
アストラの校長、アディノール
要注意人物、若い見た目とは裏腹に、数々の偉業を成し遂げたこの国の宝と言っても良い人物。
見た目こそ4〜50程度ではあるが実際は200を超えているのだとか…
私たちがこの学園へときた目的はただ1つ、
アランの体を取り戻すこと。
今はイヤリングに無理やり魂を定着させた状態であり、生きたカラスへと姿を変えることはできるものの、いつまでもこのままという訳にも行かない。
体を取り戻すための研究と、戻った後の社会復帰を考慮した結果、ここアストラが最も適していると判断した。
そしていずれ訪れるであろう、'最良未来'の為、
アランと私は'契約'をした。
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