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三題噺もどき5

起床

作者: 狐彪
掲載日:2026/02/03

三題噺もどき―はっぴゃくじゅうなな。

 




 何かの物音が聞こえた気がした。

「……」

 視界に広がるのは、輪郭のはっきりとしないぼやけた世界。

 窓の外から光が入り込んで来て、朝だと分かった。

「起きなさいよ~」

「……」

 どうやら先程の物音は、母が2階に上がってきた足音だったらしい。

 床が冷たいからスリッパを履いているのだけど、元からうるさい足音に拍車をかけてうるさくなっている。

 ドスドスと効果音が見えてきそうなほどにうるさい。太っているわけではない。地に足つけて歩いているんだろう。知らないけれど。

「……」

 枕元に置いてあるはずのスマホを引っ張ると、あと数分でアラームが鳴る時間だった。

 それまでは寝てもいいようにアラームをかけているのに、毎度毎度……起こしてくれるのはありがたいのだが時間を考えて欲しいと思わなくもない。

 そんなことは口が裂けでも言えないけれど。一応、弁当も作ってもらっているし、学校に行けているのはなんだかんだ親のおかげなのだから。

「……」

 部屋の中が冷蔵庫の中のように寒い。

 外は雪でも降っているんだろうか……そうでなければこんな寒さはあり得ないだろう。いつものことだけど。

 私の部屋は陽が入っても数時間だし、その時間を過ぎてしまえば全く入ってくることはないので、外以上に寒い。それなりに新しい一軒家のはずなんだけど。

「……」

 リビングからは、テレビの音が聞こえてきた。

 朝のニュース番組をつけているのだろう。いつも決まった番組を見ている。

 大抵コーナーの流れは決まっているし、始まる時間も固定されているので、便利なのだ。時計を見れば時間の確認は簡単だが、このコーナーが始まったからそろそろ準備しようとか、出来るからな。

「……」

 しかし寒い。

 これで全く雪も降っていない、なんなら外に行けば陽が照っていて温かいことだってある……風が強く吹いていなければの話だが。

「起きなさいって」

「……ん」

 ノックもなしに部屋の戸を開き、そう声を掛けられた。

 起きているのにそう言われると、起きる気がなくなるのは何なのだろう。

 しかし一応、返事はしておかないと更に面倒なことになるので、適当に返しておく。

「……」

 戸も閉めずにリビングへと戻っていった。

 さらに大きくテレビの音が聞こえる。大方妹が大音量で見ているんだろう。

 別にみてもいないくせに変に音量を上げるのはアイツの癖だ。本人は大抵スマホをいじっている。うるさいのだから辞めて欲しいものだ。

「……」

 ニュースキャスターが話す声に混じって。

 遠くからサイレンの音が聞こえてきた。外からだ。

 もう慣れたものではあるが、毎朝毎日サイレンがどこかで鳴っている。

 いっそフルートとかバイオリンとか、もうちょっと静かで緩やかな音にしてほしいものだ。うるさいなんてことは言わないが、その音で起こされることだってある。

「……」

 それと普通に、サイレンの音は、苦手なのだ。

「……」

 はぁ、そろそろ起きるとするか。

 もう一度スマホを見れば、もう残り1分という時間だった。

 さっさと起きて、顔を洗って、朝食を食べるとしよう。

「……」

 身体を起せば、暖かな毛布の中から一転、冷えた空気が全身を包む。

 足元はまだ毛布の中に居るはずなのに、足先はすでに冷えている。

 末端冷え性も考えようだ……何をしても温まらないのはコレのせいだろうか。

「……ふぁ」

 遠くから聞こえるサイレンをかき消すように、わざと大きなあくびをする。

 そういえば、そろそろ中間テストがあるのだった。基本冬休みの宿題から出るらしいから、勉強らしい勉強をしていない。

「……」

 テスト期間になれば、午前授業になり、午後からは学校で自習ができる。その間は部活もなくなるし、あの子と勉強ができる。その時に食べるお菓子をどこかで買いに行かないとな……そろそろバレンタインもあるし。

「……」

 テストなんてそれなりに適当にしてしまえばいいのだ。

 それに勉強はいつも以上にはかどるだろうから……。

「起きたのー!!!」

「……」

 リビングから母の大声が聞こえた。

 さっさと下に降りよう……また部屋に来るかもしれないからな。












 お題:テレビ・フルート・雪


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