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ミリ知ら転生超銀河悪徳領主 ~1mmも知らないSFファンタジーRPGの悪役領主に転生したからストーリーをガン無視で銀河征服することにした~  作者: 新人@コミカライズ連載中
第三章:主神が降り立つ時

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第12話:主神が降り立つ時

「分かった分かった。俺が悪かった。でも、お前はイグニアのことで忙しかったし、ヴァルキュリアのパイロットが二人も領内から離れるわけにはいかないだろ?」

『そんなこと言って……本当はヒルデと浮気するつもりだったくせに……』

「違うって。今度はお前との時間もちゃんと作るから、それでいいだろ?」


 通信越しに捲し立てるセリアを宥めながら溜息を吐き出す。

 無駄な言い争いをしてる暇はないのに、どうしてこんなめんどくさい女になってしまったんだ……って、ほぼ俺のせいか。


『ほんとに!? 絶対絶対、本当に!?』

「ああ、本当だ。それより、お前が到着してるってことはオーディンも来てるのか?」

『うん。一応、到着してるけど』


 言いながら、セリアの声のトーンが僅かに下がる。


『急いでって言うから短距離ワープを連続使用してきたんだけど……おかげで動力炉の残量がほぼ空。チャージが終わるまでまともに動けないかも』

「それは、まあ俺が乗れば大丈夫だろう。最低限動けば、なんとかなるはずだ」


 短距離ワープの連続使用。

 緊急時の手段としては有効だが、動力炉への負担は相当なものになる。

 ローレライから急行で来たなら、確かに今は抜け殻に近い状態だろう。

 まあ、そのおかげで帝国軍の到着に間に合ったのなら悪くはない。


『それと……その位置だとトラクタービームも届かないから、もう少し高所に移動してもらわないと回収できないかも』

「流石に、そこまで上手くはいかないか。他には?」

『帝国の艦隊が接近してきてる。この速さから考えると、予め出撃準備をしてたみたい。テロの裏に、帝国の手引があるのかも』

「やっぱりか」


 改めて、自分の推測が合っていたことを確認する。

 しかし、そうなると悠長にしている時間は更に無くなってきた。

 いくらヘルヤが守っているとはいえ、半ば無防備なオーディンを敵の前に晒したくはない。


「分かった。俺が乗り込むまでは耐えてくれ。すぐにトラクタービームの範囲まで移動する」

『了解。約束、絶対守ってよね!』


 通信が切られ、ヒルデに向き直る。


「……と、言うわけだから急いで行こう」


 三人で発着場を後にして、近場の高所である管制塔へと向かう。

 だが、移動を始めてすぐに状況は悪化した。


 先程、セリアがコロニーの外壁を撃ち抜いた轟音はテロリストたちの注意を引くのに十分すぎたらしい。

 武装した集団が通路を固め、戦闘艇が緩やかに旋回しながらエリアを巡回している。


「……流石に面倒だな」


 物陰に身を潜め、じっと通路を観察しながら俺は呟いた。


「排除しますか?」

「いや、ヒルデちゃんはさっきの戦闘で消耗してるだろ? 後のこともあるし、今は回復に専念して欲しい」


 となると回り道を探すか、俺がやるしかないかと考えていると――


「……ん?」


 背後で微かな電子音が耳に引っかかった。

 振り返ると、カノンが何かのデバイスをこっそりと操作している。


「どうした? 誰かと連絡が繋がったのか?」

「い、いえ……!」


 声をかけた途端、カノンはびくりと肩を跳ね上げ、慌てた様子でデバイスをポケットへ押し込んだ。


「め、メンバーの人と連絡が取れないかなと思って……! でも、繋がりませんでした……!」

「……そうか。でも、あんまり余計なことはするな」

「ご、ごめんなさい……」


 妨害装置を無効化して通信を無力化したとはいえ、まだコロニー全体がテロリストに制圧されているのは間違いない。

 メンバーと繋がらなかったのも、捕縛されている可能性が高そうだな……と考えた時だった。


 ――ドォォォンッ!!


 ライブ会場のある区画の方角から、地響きのような重低音が轟き渡った。

 何かが爆発したのかと思ったのも束の間、すぐにそれがスピーカーから発せられた楽器の音だと気づいた。

 それも、コロニーの設備を最大出力で叩き鳴らしているかのような規格外の音量の。


『クソテロリストどもが私のライブの邪魔してんじゃねーぞ!!』


 コロニーの館内放送を丸ごとジャックしたかのように、女の怒声が全区画に響き渡る。


『全員!! 私の歌を聞けぇぇぇ!!』


 言い放つと同時に、本格的な歌唱が始まった。


「くそっ……! 向こうで観客が反抗しはじめたらしい」

「ライブを止めるために、至急集まれとのことだ」


 テロリストたちが苛立ちを露わにしながら、次々とライブ会場の方角へ走り出す。

 まるで誰かが図ったかのように、俺たちの前を塞いでいた集団が潮が引くように消えていった。


「今のうちだ。行くぞ」


 好機を見逃す理由はない。三人は再び通路を駆け始めた。


「オーディンに乗り込んだらヒルデちゃんはすぐにパイロットスーツに着替えて、出撃準備を」


 今は時間が一秒ですら惜しい。

 移動しながら俺は次の流れをヒルデに前もって説明しておく。


「了解しました。クラウス様は?」

「俺はそのまま――」

「あ、あの……!」


 俺たちの会話に割り込むように、カノンが声を上げた。


「どうした? 花を摘みに行きたいなら我慢しろ」

「ち、違います……」

「じゃあ、なんだ?」

「そ、その……オーディンさんって言うのは何なんですか……? それがあればテロリストさんたちを倒せるんですか……?」


 ただのギタリストのくせに、変なところに興味を持つやつだなと思った。

 当然、機密をわざわざこんな一般人に漏らすようなことはしない。

 代わりに、俺は別のことを尋ねた。


「そもそも、お前はなんでまだついてきてるんだよ。通信は回復してるんだから、自治区の警備隊にでも保護してもらえばいいだろ」

「ご、ごめんなさい……でも、本当に怖くて……その、一人でいるのが……」


 俺の目を見ずにぼそぼそと答えるカノン。


(これまためんどくさい女だな……)


 そう思いつつも今はわざわざ対応している暇もない。

 無理に引き離して余計に騒がれても困るし、このまま連れて行くのが一番マシかと判断する。


「処理しましょうか?」


 隣でヒルデがいつもと変わらない様子で、物騒な判断を仰いでくる。


「いや、そこまでしなくていいから……」


 呆れつつも答えたところで、俺たちは目的の管制塔の屋上へと到達した。


「ライラ、着いたぞ」

『やっと~? もうさっきからテロリストくんたちの戦闘艇に絡まれっぱなしで、うざ~……』


 通信を入れると、ほどなくしてライラの声が返ってきた。

 その声からは先刻の涙ぐんでいた様子は消え、いつもの調子が戻っているのが分かった。


「じゃあ、さっさと回収してくれ」

『オッケー』


 了承の返事を受けて少し待つが、いつまで立っても上空の穴からトラクタービームが降ってくる気配がない。


「……どうした? 何があったか?」

『いや、乗るなら()()をやってくんないと』


 ライラが強調した『あれ』に、俺はちゃんと心当たりがあった。

 それはオーディンを開発するに当たって、彼女が盛り込んだコンセプトの一つだ。


「…………いや、緊急事態だぞ? 帝国の艦隊まで来てるんだから、そんなことをしてる場合じゃ――」

『あれをやらないとオーディンには乗っちゃダメだから』


 有無を言わせぬ口調で言い切られた。


 冗談の色は一切無く、100%の本気だった。

 ヴァルキュリアに男を乗せるなと言い張った時と全く同じ。


 この女のこだわりに例外はない。それは俺が一番よく知っている。


 俺はヒルデとカノンの顔を見回した。


 ヒルデは無表情。

 カノンはきょとんとした顔でこちらを見ている。


 顔が熱くなるのを感じながら、俺は覚悟を決めた。

 右手を、高々と掲げる。


「しゅ、主神よ! い、今ここに……降り立て! お、オーディーンッ!!」


 沈黙。

 数秒の、長い沈黙。


 一体、何の罰なんだ、これは。


『まだちょっと照れが残ってる。初回だからそれで許すけど、次からはもっとマンキンでやってよ』


 ライラの呆れた声と同時に、頭上から白い光の柱が降り注いだ。

 トラクタービームが三人の身体を捕捉し、足が地面を離れる。


 コロニーの天井を抜け、宇宙空間を経由し、次の瞬間には金属の床の上に降り立っていた。


「わぁ……こ、これがオーディンさん……なんですか……? 宇宙、船……?」


 カノンが目を丸くして、艦内を見渡している。


「ああ。ガワは旧式戦艦のままだけどな」


 中身を急造で仕上げただけで、外観こそはまだかつてのヤールングレイプルそのものだ。

 だが、中身はライラのチームによって完全に別物へと生まれ変わっている。


「フリストの状態は?」


 トラクタービームの搬入口で待機していた搭乗員の一人に尋ねる。


「格納庫にて既に出撃準備完了しております」

「じゃ、ヒルデちゃんはそっちに」

「はい。ご武運を」


 一礼すると、ヒルデは格納庫へ向けて走り出した。

 先ほどまでの消耗など感じさせない、力強い足取りで。


 対して俺はそのままの足でブリッジへと入った。


「遅くなって悪かった。ここからは俺が指揮を取る」

「は、はい! これより本艦の指揮権限は艦長クラウス・フォンライン閣下に移行します!」


 オペ子ちゃんから指揮権を受け取りつつ、階段を昇る。

 最上段に設えられた艦長席は、随分と久しぶりに見るように感じた。


「やっぱり、俺はロボットの後部座席よりも……こっちの方がしっくりくるな」


 椅子に腰を下ろし、肘掛けについたコンソールを操作する。

 正面のメインモニターに、外の戦況図が映し出された。


 迫る帝国の艦隊。

 散発するテロリストの残存戦力。

 そして宇宙空間で孤軍奮闘する、ヘルヤの赤い影。


 ここまでは遅れを取ったが、ここからは俺のステージだ。


「嚮導艦オーディン、抜錨ッ!」


 肘掛けに腕を預け、静かに、しかし確かな声で俺は言った。

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