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8/8

バレンタイン事件

今回はやりとりが激しめなので閲覧注意。

2/14 その日、事件は始まった。

俺は一関竜。テニス部に所属している中学1年生。


今日も何気ない一日。

普通に授業があり、部活があった。


しいて言えば、部活の間際に先輩から「お前チョコもらってないよな」と聞かれたくらいだ。

先輩はちゃかしているわけではなく、「もしばれたら部活できなくなっちまうから頼むぞ」

と念押ししているようだった。


俺にそんな色じれたイベントあるわけないだろ。と機嫌を悪くしながらも、俺は部活を終えて帰路につこおうとした。

そこで、

「竜。これ」

と話しかけてくる女子がいた。

よくちょっかいをかけてくる女子だ。

はじめは俺の反応を見て遊ぶ気なのかと思っていたが、少なくとも雰囲気は本気らしかった。

俺は悩んだ。


学校でチョコの受取は禁止されている。

だが、もしここで受け取らないと、あとから全クラスの女子の間でクズ扱いされるだろう。

そしてこれが冷やかしでもないガチならば、俺も人として申し訳ない。

どっちにしろ、俺に選択肢はない。

だが、、

「うっ、どうすれば良いんだ」

「素直に受け取りなさいよ」

そう背中を押す彼女の声圧に負けて、俺はものを受け取った。


まあ、いつものことだ。俺は人に逆らえない。

「じゃあ、さよなら」

そう、俺の気持ちなんてお構いなしに彼女は去っていく。

俺もさっさと帰ってしまおう。


そうして一日を終えた。


---

そして翌日、事件はおきた。

学校に行くやいなや、臨時集会が開かれた。

一体なんの騒ぎだよ、と思う反面、一つだけ心当たりがあった。


先生たちは真面目な顔で正面に立つと、教頭が語り始める。


「非常に悲しいお知らせです。昨日、学校内でチョコを渡していた生徒がいたと連絡を受けました。しかも複数人。こんなこと、私が教員になって以来のことです。

学校に不要なものは持ってきてはいけない。これは学校のルールです。

どうして軽はずみにルールを破ろうとしたのか、私にはわかりません」

などと、背の凍る御経を読んでいく。


大体の生徒たちはボーっとした顔で先生の話を聞いている。俺も正直、そっち側にいたかった。だが、先生の次の言葉を聞いて俺はハッとした。

「話は以上です。」

と教頭が言い終えると、次に熟年の先生が立って大声で指示をする。

「昨日チョコを渡した人、受け取った人、見ていたのに黙認していた人は、ここに残りなさい。全員です。もし隠れてこの場をしのごうというやつがいたら、そいつは本当に許さないからな」

と。


そして各クラスの関係のない人たちはぞろぞろと帰っていく。その場には意外と多くの生徒達が残っていたと記憶している。


俺は悩んだ。ここから先生の怒りを鎮める最善の手は大人しく残ってお叱りを受けることだ。

だが、ここで残ると部活に迷惑がかかる。部活停止にされたら大変だ。なにより、自分が発端でもないのに先生に怒られる理不尽には耐えられないとおもった。


だから俺は、何食わぬ顔を全力で装って、その場をあとにした。


---


教室に戻ると、しばらく先生たちがいない静かな教室があった。遠くからは先生の怒鳴り声が聞こえる。そ

うとうなお怒りらしい。それに対して、

「いちいちこまけえよな」と先生に呆れる生徒もいれば

「ばかだよな〜」と生徒の非をせめる人もいた。


(バカバカしいな。本当に)と俺も思った。思うことにした。

もし、俺の関与があとからバレても、あんなに怒られるのはゴメンだと自分に誓った。

そしてまた、授業が始まる。

---


だが、事件はそれで終わらなかった。

翌日、部活の時間にそれは起こった。

「竜、ちょっとこい!」

と担任の三井先生が俺を呼び出したのだ。俺は何かやらかしただろうか?いやそんなはずはない。俺は何もやっていないはずだ。と不安になりながら先輩のもとに向かうと、先には熟年の先生、がいた。


「なんで呼ばれたかわかるか?」

「さあ、わかりません」

と答えると、先生たちはため息をつく。そして怒りをあらわにしながら言う。

「おまえ、チョコもらったんだろ」と。


俺は驚いた。まさかバレていたなんて。やはり俺はあの女にはめられていたんだな。とそう思った。

「いいえ。なぜそう言えるのですか?」

と俺は答える。もはや言い逃れするにも意味がない。これはせめて、俺を陥れたのが誰かを聞くための質問だった。


だが高木先生はこういった。

「ある生徒がお前がチョコを受け取る場面を見たって聞いたんだよ」という。

その言葉の意味するところは、あくまで匿名にするということだろう。


(っち。)

と俺は内心で舌打ちしながら、

「そうですか。ならそうなんじゃないでしょうか?」とポーカーフェイスを決め込む。

すると高木先生は俺が黒であることを確信したためか、態度を一変させる。


「なぜあの場で残らなかった!!」

と脅迫する。

俺の精神は震えるが、覚悟は決めた。

俺の道に狂いはなかった。だから今回ばかりは戦う。


「なぜでしょうか?」

「はあ?」

「それは怒られたくないからですよ?」

と当然すぎる心境を正直に、(なんでわざわざ聞くんだこいつ?)という煽りの気持ちを込めて答えた。


その言葉に三井先生は落胆したように「信じらんない」とぼやく。

一方高木先生は怒り狂う。

「おまえなあ、学校のルールくらい守れよ!!部活に迷惑がかかるなんて考えなかったのか?」

俺は自分が思ったことを正直に答える。

「ええ。もちろん」


「もちろんじゃねえんだよ、このやろう!!ふざけてんのか!?」

廊下中に罵声が響き渡る。


「いいえ?むしろ覚悟決めてますよ」

俺は負けじと先生を煽る。ああ、煽ることしかできない。だが、これで俺は戦い抜くと決めた。だから続ける。

「覚悟だ?!」


「ええ、高木先生。あなたはあのとき、絶対に許さないって言いましたよね。」

「ああ言った。お前は本当に許さない。」

「じゃあ怒り狂ってないで、けじめつけてください」


そう言って俺は両手を広げる。

「殺せよ」

「は?お前何いってんだ?」

高木先生は俺の意図がわからず、怒りに震える。だが俺は続ける。

「許さないんだろ?二度とその面見せないのが筋だよなあ」

「はあ?てめえ、本気で言ってんのか?」

先生は俺の胸ぐらをつかむ。もはやヤクザだ。


「ああ。そうだよ。」

俺は先生の腕を握り返して、睨み返す。そして一触即発、殴り合いに発展しそうなその時だった。

「おい!どうした?」

と強面の体育教師が教室に入ってきて、俺たちの間に割って入る。

それで冷静になったのか、高木先生は手を離す。そして一旦落ち着くために、俺を外に出すことにしたらしい。その指示に従って俺が教室をでようとすると、


「お前まだ話は終わってないぞ!」という声が聞こえた気がするが「手洗い行ってきます」と呟いて無視した。

 

俺はトイレを済ませて、家庭科室に寄り道したあと、再び教室に戻った。

そして体育教師である長田先生も参加して1対3で戦いが始まる。

「さて、状況を整理しようか。」

と長田先生は冷静に話を進めようとする。


「先生、こいつはばけの皮を剥がしましたよ」と高木先生が怒りを抑えた笑みを浮かべて続ける。

「こいつはバレンタインの日。チョコを受け取っていた。だが、集会で指摘したときに残らなかったどうしよおうもないやつだ。」

「一関、あんたがこんなに馬鹿だとは思わなかった」

と三井先生も一言添えた。


「なるほど。一関、学校のルールを破ることは、学校の中では犯罪だ。この自覚はあるか?」

「ええ。」

「なら、なんであんなことをした?」

「俺には俺の行動原理があります。第一に怒られること、叩かれることを避けるために動く。

チョコを渡されそうになった時点で、おれに選択肢はなかった。

そして集会で先生に怒られるのも、避けたかった。

第二に、怒られることよりもより優先順位の高いことがあります。

それは、理不尽には死んでも屈しないという俺の覚悟だ。」


俺はさらに続ける。

「長田先生、俺にとっては理不尽に叱られることは理不尽です」と正直に告げた。

すると先生は納得したように頷きながら言う。


「わかった。一関、お前の言い分はもっともだ」

(よし)と俺が安心しそうになったときだった。

「だがな、それはお前がやったことの免罪符にはならない」と先生が続けたのだ。

「はい?」

「お前はルールを破ったんだ。そしてそれを正当化するために屁理屈をこねているだけだ」

「は?」


俺は怒りをあらわにする。

だが、長田先生は冷静に続ける。

「いいか?ルールを破ることは犯罪だ。そしてお前はその罪を犯した。だから罰を受ける義務がある。わかるな?」と諭すように言う。

(ああ、そうか)と俺は思った。この人は俺を悪者にして終わらせようとしているのだ。

だがそうはさせない。


「そうですか。そうですね。ならやはり高木先生、けじめつけてください」

俺は話を続ける。

「いや、つけなくてもいい」と長田先生が割り込むが、無視する。

そして再び続ける。

「本当に、どんだけ生徒をいじめるのが楽しくて仕方ないんですか。俺はあなたみたいな人を見ると反吐がでる。俺は絶対にあんたを許さない」

そう言うと、先生の顔色が一変する。


「おい一関!お前本当にいい加減にしろよ」と怒り出す。

そこで俺は畳み掛けるように言う。

「さきに仕掛けておいて、勝手な人だ。そうやって怒鳴って、自分の立場を悪くしているだけですよ」

「なんだと?」とさらに怒り出す。


三井先生は黙りこくってその場を見ている。何か雰囲気の変化を感じたのだろう。だから俺は続ける。

「俺は絶対にあんたを許さない」

そう言うと先生はついにブチギレたようで、俺に向かって拳を振り上げる。


俺は先生の拳を掴んだ。

俺には絶対に譲れない信念があった。だからこそ、このパンチは絶対に受け取るわけにはいかなかった。

「離せ!このやろう!」と高木先生が怒鳴る。だが俺は離さない。

そしてしばらく拮抗状態が続いたが、俺が高木先生の拳を握りしめると、高木先生は痛みに耐えきれず、悲鳴をあげる。

そしてそのまま手を離すと、

「先生、大丈夫ですか?」と言ってやった。

長田先生は驚きながら、様子を見ている。

「お前……。よくもやったな……」という声とともに先生は俺への怒りをあらわにした様子を見せた。俺もまた一歩後ずさって間合いを取る。


「俺はあなたを許さない。あなたも俺を許さないと言った。ならばどちらかが消えるのみ。その覚悟、見せてもらいましょうか?」



と挑発すると、長田先生が俺を止める。「落ち着け」と言ったが俺は止まらない。むしろ怒りのボルテージは上がっていくばかりだった。

そして俺が再び先生に挑みかかる。

先生はそれを避けるために教室の端まで後退する。そして距離を取りながら叫ぶ。「一関!!お前みたいなやつ絶対に許さないからな!!」

だが俺も一歩も引かない。

「ならあなたは俺をどうするんですか?」

「それは……」

と口ごもったところで俺は続ける。

「あなたは俺をどうするつもりなんですか?先生に怒られるのが怖く、自分の立場を守るために俺の口を封じた。そのことに対する責任をどうとるつもりですか?」

と言うと先生は黙った。

そしてしばらくしてから言った。


「っち。まったく現代の子はいいねえ。これだけ大人を馬鹿にしても、無傷で返さなきゃいけないんだ。本当に、お前なんか社会ですぐくたばるんだからな。」

まるで嵐が突然消えたかのように、高木先生の怒りのボルテージは下がり、俺を叱る雰囲気から見下す雰囲気に切り替わった。

「あなたみたいな人が社会を地獄にしているんでしょうね。」と俺は煽り返す。


「ああ、もういいさ。好きにしな。」

そう言って高木先生は解散の合図を先生たちに出す。

なるほど、これが問題児だけが遭遇できるという、先生が指導を諦めるパターンか。

俺うもこの領域に達したか。よし。

だが、喜ぶのもつかの間。もちろん、これが自分にとってよいわけではないことを俺は知っている。


部活は出れない。教室でも異端扱い。先生たちからは常に白い目で見られ、冷遇される。小さなミスでもぶつぶつ文句をぶつけてくることだろう。

社会の授業で習った。村八分ってやつだ。


つまり何が言いたいのかというと、俺は社会的死刑を受けたに等しい。

よって、このまま引き下がる俺ではない。

すべてを失った俺は、最後まで命を燃やし尽くす。ここで、敵と定めた先生たちと最後まで戦いきらなければ、俺はただのまぬけだ。

ここから俺の逆襲が始まるのだ。


---

俺はまず、先生たちに謝罪をすることにした。

「長田先生、三井先生、高木先生。この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

そう言って頭を下げる。

「ああ、もういいよ。俺も大人げなかった」と高木先生が言うが、俺は続ける。

「いえ、そういうわけにはいきません。私は先生に迷惑をかけたのですから、責任を取らなければいけません」

と言うと先生は困った顔をした。

「急にどうしたこいつ?」と三井先生が不審に見る。


俺はそんな薄情な三井先生を無視して、笑顔で高木先生に近づく

「おまっ!」と長田先生が気づいたときにはもう遅い。

俺は、高木先生の腹に包丁を刺した。包丁は家庭科室から拝借したものだ。


「な、なにをするんだ!」と高木先生が叫ぶ。そして包丁を刺した俺を追い払うように押し返す。

長田先生も俺を止めにかかるが、すばやく後ろに後ずさって、先生たちと距離を取る。


そしてもう一本の包丁を取り出して、先生たちを牽制する。

「この中学校の教育理念は、思いやりの心を育むんですよね〜。高木先生〜」

と俺がわざとらしく、言うと高木先生は反応して言う。

「何が言いたいんだ!」

「いや〜実はですね〜」

と言って俺は続ける。


「私はこの中学校の教育方針に共感しております。つまり先生のおっしゃる通りです」

と言うと長田先生と三井先生が驚きの表情をみせる。だが気にしない。そのまま続ける。


「だから先生方にはご理解いただきたいのですが……、私は暴言と理不尽が横行する世界は死んでもごめんです。でも、自分だけ死ぬのもなんだかなと思いまして、あなたたちを地獄に招待します。」

と言うと今度は3人とも絶句する。


「高木先生。これが覚悟ですよ。これが許さないっていう言葉の重みですよ」

と言うとやっと長田先生が反応する。

「お前!自分が何をやっているのかわかっているのか!」

俺は笑顔で答える。

「もちろんです」と言って、もう一本の包丁を構えて姿勢を低くする。


さて、そろそろか。

騒ぎを駆けつけた他の先生がやってくる。もっと暴れたいが、タイミングを間違えればすべてが台無しになる。だから、次で決める。

俺はできる。この瞬間のため、俺は全身全霊をかける!!

 

「古今東西、人は理不尽と戦ってきた。だからこそ俺もその一人として美しく散ろうじゃないか!

現代は廃れた武士の嗜みをとくと見るが良い!!」

そう言って俺は全力で腕を振るい、目を瞑って、自分の腹に包丁を刺した。


「ごああああああ!」

クソ痛い。だが、俺は歯を食いしばって耐える。折り返し地点はすでに過ぎた!あとは迷わず前進するだけなんだ。竜!お前はやれる!


そしてそのまま倒れ込みつつ、包丁を横にすべらせると、腹から臓器が飛び出る。

「な!一関!!」

という長田先生の声が聞こえる。その声を最後に俺の意識は途切れた。


------


翌日。

「では次のニュースです。昨日、中学校の男子生徒が教師の腹を刺し、その後、自分の腹を斬って自殺する事件がありました。

警察によると、この中学校では以前から生徒への暴言や暴力があったとのことで、今回の事件はその延長線上であるとみて調査を進めています。

また、死亡した一関竜さん(14)は普段から真面目で謙虚な生徒であったということです。」


とアナウンサーが答えて番組は終了した。


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