自分の不備を認めない大人
図工の時間が始まると、先生は大きな声を出して、机の上のものをしまうように指示した。
「はい。筆記用具以外のものは全部しまって。今から配る紙に白い紙に問題を書いてもらいます。問題も私が読むので聞き忘れないように!」
周りがざわつく。必死にノートを見返す子もいれば、「なにがでるんだ」「余裕でしょ」と言い放つ子もいる。
ガヤガヤ
「うるさい!始められないでしょ!もう一度だけ読み上げますからよく聞くように!」
2回目の注意。そうすると教室内はシーンとする。
「問題。片方はダチと読みます。もう一つは左右を向いたときに見えるものです」
は…?何の問題?と
一瞬思考が停止してメモを取るのを損なってしまった。
だが幸いにも隣の席の子が小声で呟いているのを聞いて内容を理解した。
「隣にいるのって友達じゃん。そういうことでしょ」
「あ〜なるほど」
なぞなぞかよ。しょうもな。
一瞬そう思いながらも素直に答えを書くが、辺りはテストであることを忘れ、皆が「友達?」「うん?おかしくね」とざわついた。
「だち友」もありえるよね
「そもそも友と限らない。人達。机達のほうが普通」
テスト中だというのに色々な説が飛び交った。
問題自体しょうもないのに、答えが定まってないというのも先生の発案ミス。適当な人だと思ってただけに余計に呆れる。
ある程度時間が立つと先生は解説を始めた。
「は〜い。答えを言います。答えは友達ですね」
「え〜」
生徒たちはつまらなそうな顔で反発する。中には「しょうもな」という一言が走ると先生の顔色が変わった。
「黙りなさい!今私がしゃべってるのよ」
先生がキレて教室に不穏な空気が流れる。一言発するだけでクラスの空気を凍りつかせられる。これが先生の権威の力だ。
「異議あり」
だが、さっきしょうもなといった生徒は自信を持って反感の意思を示した。
続けて別の男子たちも「異議あり」「異議あり」と言葉を続けていくと、クラスの空気は異色に変わっていく。先生の力と生徒の反発力が均衡したように感じたから。
俺も便乗しようか考えたが、この状況ではまだ負ける可能性がある。怖さのほうが勝って、ただ静かに傍観していた。
「あなたたち、我慢ができないんだね。そんなんじゃ社会でやっていけないよ。」
屁理屈が来た。これを返されると子供は何も言い返せない。社会は大変、理不尽だと言われるが実際どれくらいそうなのか知らない。そして我々は社会で生きるために学校に来ているがゆえに、そこに行けないといわれるのはどうしても痛い…
だけどここで僕は動いた。せっかく動いた反発の空気をいつものお叱りモードに変えたくなかった。
机の下でこぶしを握った。
誰かが言わなきゃいけない。
「先生。自分の不足を棚に上げて社会はあーだこーだ言うの、ずるいと思います。
大人は自分の非を認められないとすぐにそれを言う。正面から僕たちとちゃんと向き合おうという心はないんですか?」
教室の時計の針が止まったように感じた。
先生の口がわずかに開いて、でも何も言えなかった。
その沈黙の時間が、なぜかとても気持ちよかった。
(本当にこんな展開があったら先生どうするんだろうね。)




