5分前着席
朝
私は通学途中で忘れ物をしたことに気が付いた。
今急いで戻れば、遅刻ギリギリに間に合わなくもないな..
そう思った私は、家に引き返して、体操服を引っ張り、走って学校に向かった
学校についたのは8:15分
遅刻まであと5分はある。
息切れが酷いがセーフだ。
クラスにはまだ先生はおらず、生徒たちがはしゃいでいる。
その光景を見た私はホッと安心する。
私はそそくさと荷物をおいて、教室のドアに集っている友達のもとへいった。
ホームルームの鐘が鳴るまで残り2分。でもその2分で雑談を楽しむのは、私たちの生き甲斐だ。
とはいえ、時間になったら座っていないといけない。
少し実際には先生が来るのは少し遅かった。わたしたちは鐘がなっても先生が来ないので、少しだけお話を続けた。何なら、周りにはまだ席を立っている子もいる。
間もなく先生が見えた頃、私たちは一斉に自分の席に戻りだした。
そして先生が入ってくる。
「起立」
「礼」
「おはようございます。」
日直がいつもの定型文を読み上げる。
先生はいつも持っている小冊子を教卓にポンとおいて、一息ついてから言葉を発する。
「おはようございます」
「...」
「みんなさ、私がくるまでおしゃべりしてて良いと思ってる?」
急に不穏な空気が流れる。
お説教モードだ。
「私が来たのを見てそそくさと部屋に戻る光景、見ていて不快です。」
「20分になったら着席してるのは絶対」
「ほんとは5分前には静かにしているものなの。」
「私だって早く来るかもしれないよ?」
「何のために早く来てると思ってるの?」
先生が言葉を発するたび、教室にいるみんなはシュンとなってゆく。
「誰かが、先生がくるまでしゃべってて良いと思ってるから、皆ながされちゃうんだよ」
「自覚してほしいな。」
「桜井さん、大谷さん、友道さん?」
私たちの名字が名指しで呼ばれる。
私の背筋が一気に凍る。。
学校において、この瞬間ほど怖い一瞬はない。
「先生、あの……」
「友道さん」
私は反論する勇気もなく、ただ縮こまっていた。
先生が歩いてくる。
目の前まできて、見下してくる。
「なんで呼ばれたかわかってる?」
「……はい。」
私はただそう言うしかなかった。
「時間を守ってって言ってるよね?なんで守れないの?」
「……」
私は何も言えなかった。何もしていないわけではないからだ。
でも先生は私の意見など聞いてくれない。
「私言ったよね?絶対着席しててねって」
「はい……」
「いつから着席しなくてよいと思ったの?」
先生はどんどん怒りを露にする。
私はうつむくしかなかった。
本心を言えば、
5分前から着席している理由がわからない。
いや、実際15分には予鈴が一回鳴りはする。
この先生は、予鈴がなった時点でもう着席するべきだと主張しているのだろう。
そんなこと、初めて聞いた。
だって、本鈴が鳴ったらホームルームが始まるってだけじゃない。
でもそんなことを言っても、先生を怒らせるだけなのだ。
「友達が着席してないから自分も、って思った?」
「そんな、そんなこと……」
「でも実際そうだったよね?だから私が怒るんだよ」
「はい……。」
私はどんどん萎縮してゆき、先生が何を言っているかも聞き取れなくなった。
とにかく下を俯いて、解放されるのを待つ。
私にできるのはこれしかない。
「友道さん、さ。本当に反省してる?」
私は怖くてうなずくこともできなかったが、首を縦に振るジェスチャーで答えた。
「……そう。大人の世界じゃ常識だからね?」
「はい……。」
「席に戻って」
私は無言で席に戻る。
先生が私の席の横を通る。
その時、微かにこう聞こえたのだ。
そのあと先生は、表情を変えて出席を取り始めた。
キーンコーンカーンコーン……
授業が始まる。
朝から憂鬱だ。
頭が冷え切ってしまったが、それでも1時間目の授業が容赦なく始める。
正直授業の気分では全くないけど、鑑賞に浸るくらいなら授業の話でも聞いて落ち着いた方がまだましだった。




