歴史の授業
数か月後、Kaelianは扉を開けて言う。
「母さん、Lioraの家に行ってくる!」
「いいわよ、Muyun。夕食までには戻ってきなさいね」
***
(この数か月で、私は火、水、土の魔法を上達させた。Lioraも火の魔法の練習を始め、私たちはほぼ毎日外へ鍛錬に出かけている。違う日には彼女の家に集まって話をしたりもした。身体の鍛錬も続けている。筋肉は全くないが、少しは体力がついた。夜には祖母の本を読み返し、新しいポーションを学んでいる)
家の主室で、二人は床に座っていた。
Lioraが粘土のドラゴンを見せる。
「私のほうが上手!」
「そんなの、大したことない。私のも見てみろよ」
Kaelianが狐を見せると、彼女は笑い声を上げて答える。
「これを狐って呼んでるの? やせこけた猫みたいだけど」
「じゃあ、君のそれはドラゴンなのか? ステロイドを打ったガーゴイルにしか見えないけどな」
「すてろい……何?」
「忘れてくれ」
(一見すると粘土遊びをしている二人の子どもにしか見えないが、実際には鍛錬をしている。手で粘土を形作ることでNarysの成形も上達する、というのが私の持論だ。証拠はない。でも退屈したくないという気持ちならある)
Zoraの腹部はさらに大きくなっており、台所で二人分のクッキーを焼いている。
「冷めないうちにいらっしゃい!」
二人はすぐに立ち上がり、Zoraの元へ駆け寄る。
(ここに来るのが好きな理由の一つがこれだ。無料のクッキー!)
その時、扉から若い男が入ってきた。短い紫の髪に茶色の目、短い「髭」を生やし、肩にはエプロンをかけていて、少しふらついている。
「みんな……ただいま……!」
男は左手に樽を持ち、頬を赤らめて入ってくる。
(あそこにいる酔っ払いはLion。Lioraの父親で、村の酒場の主人だ。かなりの美男子と言っていいだろう。正直、酒場の主人と聞いて真っ先に思い浮かぶようなタイプではない)
Zoraは腰に手を当てて言う。
「また酔っぱらって帰ってきたの!?」
Lionは気まずそうに微笑む。
「えっと……まあ……うん……でもさ」
「でもじゃないわよ! あなたは仕事中に酔っぱらってるのに、こっちはあなたの子をお腹に抱えて家で必死に頑張ってるのよ!」
「うん、うん……だってさ……商人がRagnorysの強いワインを持ってきてくれて……」
「Ragnorysのワインを飲んでたの?」
「……ああ……特別な機会だったから……」
「本当にがっかりだわ!」
「でも……君にも少し持ってきたんだ!」
笑顔で樽を持ち上げると、Zoraが両腕を伸ばして近づいていく。
「愛してるわ! これで痛みが和らぐわ」
彼女は樽を受け取って飲み始めるが、Zoraが飲む直前にKaelianは密かに樽の中に水を作り出す。
最初の一口を飲んだ後。
「私を騙せると思ったの!? これ、強いワインじゃないじゃない!」
Lionに向かって樽を投げつける。
「えっ!?……でも」
ワインを味見し、頭をかく。
「おかしいな……樽を間違えたのかな?」
Kaelianは考える。
(この世界では妊娠中のアルコールの危険性を知らないのか!? うーん、少なくとも二人を結びつけるものはあるみたいだな)
Lioraはこっそりクッキーをいくつか取ると、Kaelianの腕を掴んで自分の部屋へと向かう。
クッキーをかじる。
「ねえ……その本は……何の本なんだ?」
彼女は驚いたように答える。
「知らないの!? Arkhenarysの英雄譚よ!」
(確か……Arkhenarysはこの大陸の名前だったな)
クッキーを飲み込んでから言う。
「知っておくべきだったか?」
「もちろんよ! Arkhenarysの大英雄たちの武勇伝なんだから」
本を一冊手に取り、両手でKaelianに見せる。
「これはSanaganの英雄譚。最初期の大英雄の一人よ! その力はあまりにも絶大で、大陸全土を破壊できたかもしれないって言われてるの!」
「大陸全土?……さすがにそれは大げさじゃないか」
「全然!」
別の本を手に取る。
「こっちはLena Mafuryの英雄譚!」
Kaelianは遺産が震えたように感じたため、心の中で彼女に尋ねる。
(ねえ……どうかしたの?)
(……ううん。ただ、その話が少し気になっただけよ)
Lioraが続ける。
「西の大地の強力で賢い魔法使いで、水の魔法の専門家だったの。『錨殺し』って呼ばれてたんだよ。すごそうでしょ!? でも、錨が何なのかはよく分からないけど」
「それでも好きなんだな」
「うん。でも、最後のが一番好きなの!Ranmara Garmist!歴史上最も強力な土の魔法使いの一人で、Vladmistの最初の大英雄なの。北の大陸の巨人族の侵略からArkhenarys全体を守り抜いたんだよ」
「巨人族って言ったか?」
「うん、知らなかったの?」
「正直、知らないな」
(この世界のことは、まだ一割も知らない気がする)
「すっごく大きいの! 彼らの大陸の名前は……Sigu……Singu……ええと、なんて言うか忘れちゃったけど、ここよりもっと寒くて、ほとんどいつも冬なの」
「なるほど、お気に入りな理由は分かったよ」
「それだけじゃないの! Vladmistって名前は彼女の姓のMistから来てるし、Ranesも彼女の名前をもとにしてるの!」
「ふふっ、本当に英雄が好きなんだな」
部屋にある三つの木彫りの人形を指差す。
「あのお人形も持ってるの! 女の人はRanmaraだよ! あとの二人は……一人は確かThylrosって名前で、中央の地の東部の偉大な英雄だって聞いたけど、英雄譚は一つも持ってないの。もう一人はRagnar Ragnorys」
「おっ! その人なら知ってるぞ……大体は」
「ほんとに!? お願い、知ってること教えて!」
彼女はKaelianに寄りかかり、すがるような目で見つめる。
「いいよ、ただ少し離れてくれ」
彼女は寝台に座る。
「もちろん!」
と、彼女は小さな笑みを浮かべて言う。
***
二年前、Irethaは寝台の上で、膝の上に座っているKaelianを抱きしめていた。
「本当にまだ眠くないの?」
「ううん、まだ!」
「ふふ……じゃあ、歌を歌ってあげようか?」
(それで眠くなるとは思えないけど……もしかしたら音楽の好みが目覚めるかもしれない。……あるいは、耳がやられるかもしれないけど)
「うん! 歌!」
Irethaは喉を整えるように軽く咳払いした。
「ふふ……よし、ええとね……」
唇に指を当て、少し考える。
「子供のころに母が歌ってくれた歌……忘れちゃったみたい。でもね、昔あるお客さんが別の国の歌を教えてくれたの。『Ragnarのバラード』っていうの。聞く準備はいい?」
「うん! 準備できてる!」
Irethaは甘く澄んだ声で歌いはじめた。
「……戦の誉れ、歩む炎、その斧は天の力で断ち切るぅ……
おお、Ragnar! 比なき王よぉ!」
「トゥン・トゥン・トクトゥン・トゥントゥン・トゥクツン」
「北の竜王を怒らせぇ、その兄の血を大地へ流しぃ……」
「トゥン・トゥン・トクトゥン・トゥントゥン・トゥクツン」
「おお、Ragnar! 無敵の王よぉ!
王家の血の源にして主ぃ!
その王国は他のすべての上にそびえ立つぅ!
おお、Ragnar! 平和をもたらす者ぉ!
その魂よ、安らかに眠れぇ……」
歌い終えたIrethaは、微笑みを浮かべた。
Kaelianは口をぽかんと開けて彼女を見つめた。
「まさか、そんなに上手に歌えるなんて思わなかったよ、ママ!」
「ふふ、そんな大したことじゃないわ。さあ、もう寝なさい」
「眠らせたかったの? それとも、やる気を出させたかったの?」
***
Lioraが寝台の端を掴みながら尋ねる。
「本当に嘘じゃないよね!?」
「嘘じゃないよ。本当にそうだったんだ」
「その人のこと、他に何か知ってる?」
「どうやって死んだかは誰も知らないって母さんが言ってたな」
「うーん、英雄にはよくあることだね」
「それと、今のサイクルは彼の名を冠していて、他の大英雄たちと同じように、彼の死を起点に年代が数えられているって」
「それはもう知ってた! 商人があの人の英雄譚を持ってきてくれないかな。人形を手に入れるのも大変だったし。できればまだ知らない英雄の英雄譚がいいな」
(こうして私は、Lioraがかなりの英雄オタクだと知った。もし大英雄たちの公式グッズなんてものが売られていたら、きっと全部持っているだろう)
***
草原では、Lioraが石を作り出す練習をし、Kaelianは高圧の水流を放っている。遺産が言う。
(水の魔法の新しい呪文を練習しているのね?)
(うん、基本はもうマスターしたから、もっと複雑な技を考えてるんだ)
(今やっていることにも十分な破壊力はあるけれど、その水流を自分の手元に集中させてみたらどう? もっと致命的になるわ)
Kaelianは指を揃え、手の中にNarysを集中させ、高圧の水流を作り始める。Lioraが振り向く。
「それは何?」
「まあ見ててよ」
Kaelianは水の射出口を調整し、平らな刃となり、まるでサーベルのような形になる。遺産が言う。
(いいわ! すぐに呪文の仕組みを理解したわね)
(どうしてそれを知ってたの?)
(昔の保持者が知っていたのよ。この呪文は魔法使いの間ではあまり一般的に使われていないわ)
Lioraが近づいて言う。
「わあ! 水の剣!? 私もそれ覚えたい!」
「君は何でも覚えたがるな」
「当たり前でしょ。見て、私が覚えたやつ!」
彼女は刃のついた細長い石を作り出す。大したものではないが、物を切ることはできそうだ。
「ははっ、土の魔法は僕より上達が早いな」
「へへっ、私はこの時代で一番の土の魔法使いになるんだから」
「ああ、きっとね」
数時間後、二人は木陰で休むために木の下に座る。
「今日の鍛錬は疲れたな」
KaelianはLioraのNarysが急速に回復していくのに気づき、両手を頭の後ろに組んで尋ねる。
「ねえ……今度こそ、君のNarysのことを話してくれるか?」
「……ほんとに知りたいの?」
「だから聞いてるんだよ」
「うーん……まあ、もう友達だし、あなたになら教えてもいいかな。パパが教えてくれたんだけど、パパの家系では赤ちゃんのほとんどが三歳になる前に死んじゃってたんだって。Narysを作りすぎるせいで死んでたってことが分かったらしいの」
「……それで、どうしたんだ?」
「Narysを感じ取って、瞑想でそれを放出する方法を見つけたの。でも、赤ちゃんがそれを間に合うように覚えられなかったり、感じ取れる年齢になる前に死んじゃったりしたら、何の意味もないの。それに、それがうまくいったのは男の子だけで、女の子はそれより先に死んでしまっていたの」
「ああ、なるほど……じゃあ、君はどうやって生き延びたんだ?」
「あなたのお母さんが、ときどき赤いポーションみたいなものをくれたの……何だったのかは分からないけど、それを飲むと楽になった」
「赤いポーション?……たぶん何か分かるよ。Haraの根の抽出液だ。Narysの過剰を抑えるのに役立つんだ」
「……そのポーションのおかげでしばらくは生きられた。でも、体中が痛くて、息をするのも苦しいときがあった……家から出ることすらできなかったの。他の女の子たちが一緒に遊ぼうって誘ってくれたけど、いつも断らなきゃいけなくて……そのうち、誰も聞きに来なくなっちゃった」
(……この子は遊びに誘われてたのか!? 私なんてそれすらなかったのに! まあいい、怒られる前にちゃんと話を聞こう)
彼女の目が少し潤む。
「でも、一人じゃなかったよ……ママはすごく甘やかしてくれたし、パパは自分が子どもの頃にやらなきゃいけなかったみたいに、Narysの放出の仕方を教えてくれた。それでも……寝台から起き上がることすらできなくて、悲しくなることもいっぱいあった。でもね……」
Kaelianは彼女に近づく。
「でも何?」
「両親が大英雄たちの話をしてくれたり、英雄譚を買ってくれたりするようになったの……その物語が、私に生きたいって思わせてくれた。冒険をして、有能な人だって認められたいって」
「……」
「あなたに会う前に、Narysの逃がし方を教えてくれた。それで体調も良くなり始めて、他の子たちと外で遊びたくなったんだけど……その子たちはもう私と遊びたがらなかった。だから、村からできるだけ遠くまで歩いて……草原に着いて……そこであなたを見たの。私の英雄譚に出てくるみたいに、魔法を使っているところを」
話し終えると、彼女は微笑む。
「なるほど、あの時僕をこっそり見ていた理由はそれだったのか。想像もしてなかったよ。で、今はどんな感じなんだ?」
「今はずっと良くなったよ。ある点を超えるとNarysが溢れそうになるけど……あなたと鍛錬を始めてからは頻繁にNarysを使うから、そういうことはめったに起きなくなったの」
Kaelianは微笑み、首をかしげる。
「じゃあ、君にとって魔法は一種のセラピーみたいなものなんだな」
「セラピー?」
「今のは忘れてくれ。最後に一つ聞きたいんだけど、君と君の父親だけが紫色の髪をしていることに気づいたんだ。理由を知ってるか?」
彼女は立ち上がり、微笑む。
「この髪の色の人は、あの大魔法使いRanmara Garmistの子孫だって言われてるの! それが、私が彼女を一番好きな理由の一つでもあるんだ」
(遺産、これって本当だと思うか? それとも、Lioraが作り話をたくさん聞かされただけかな)
(その伝承は存在するわ。Ranmaraはその髪の色を持つ唯一の人物だったの。Lioraの魔法の特異な体質を考えると……本当にそうである可能性はかなり高いわね)




