第12章 The Chain
教団は何も見つけられず退いたが、検査を拒んで家を守った者たちに数人の負傷者が出た。抵抗した者のうち数名が命を落とした。
Kaelianはその日の服に着替え、ベッドから起き上がった。
遺産の声が現れる。
「…昨日から何も言ってないね…」
「…」
彼は靴を履く。
「…君の家族のことを話すべきだったのに…でも、復讐だけを心に育ててほしくなかったんだ。それは早死にへと君を近づけるだけだから…」
Kaelianは考える。
「三年…それだけ待ったのか、ずっと誰が俺を探しに来るかも知らずにいた。そして、死ぬかもしれないと思ったそのときに知るなんて」
「そんなにすぐに起きるとは思わなかった」
「もちろん違う。教団について知っていることを全部話せ。そして“言えない”とか“後で話す”とか言うな」
「…まあ…当然だろう。ただ、誰でも知りうる以上のことは言えないよ。眼の教団は炎の保持者を見つけて排除することに専念している…成功したときもあるが、多くの場合は他の生物や炎の狩人たちが先に手を出すんだ」
「素晴らしい、また追手が増えた」
「狩人たちは一枚岩じゃない。彼らは独立して力を貪る者たちだ。一方で眼の教団は、炎のような力は誰の手にもあるべきではないと信じている」
「それだけか?」
「教団は魔法使いもただの戦士も含んでいて、数は相当だ。昔は完全に独立していたが、君の家が襲われた時に私が聞いた限り…その行動はRagnorysの王の名のもとに行われていた」
「じゃあ、彼らはこの地にいるべきじゃないな」
「Vladmistの許可がない限り、ここにいるはずがない。だが、その許可を得ているとはとても思えない」
Kaelianは扉に向かって歩き、外に出ようとしたところで Iretha に止められる。
「どこへ行くの?」
「遊びに…外」
「まだあの者たちが近くにいるかもしれない。ここにいなさい」
「…わかった、ママ」
彼はベッドへと戻る。
Irethaは台所から来てKaelianのそばに立つ。
「君の安全のためよ、わかってるでしょ?」
Kaelianは考える。
「どれだけ彼女が知っているか、あるいは知っているつもりでいるか…それを見る機会だな」
彼は言う。
「俺の…安全のため?あの連中は去ったんだ。何が目的だったか知ってるのか?」
「いいえ、知らない。そしてそれを知りたいとも思わない。私が気にするのは君を守ることだけ」
Kaelianは思う。
「“炎”のことを言えば…彼女は口を割るかもしれない。…いや、それでは自分が炎を知っていると白状することになる」
「Kael」
Irethaが顔を上げる。
「今までに自分の中で変な感覚を覚えたことはない?」
「…ないけど、どんなことが“変”なんだ?」
「私…正直わからないの」
Irethaは笑う。
「さっきのは気にしないで。あなたに変なものは何もないわ。朝ごはんを作るね」
***
「…Naevia…Naevia」
石の中のNaeviaが応える。
「…Kaelian?」
「いや、あのときお前を助けた同じ神、俺だ。あの子の信頼を得たようだな。だが、失敗した後だったのが残念だ」
「…うん…失敗した」
「完全に君の責任じゃない。彼の頭の中のあの声を考慮してなかったんだ。僕にも保持者は謎だ」
「…それで何が変わるの?」
「もう諦めちまったのかよ?」
「それはあなたに何の関係が…それに三年も前から何の反応もくれなかったじゃない。炎に興味を失ったのかと思ってた」
「下級の神の生活は忙しいんだよ、信じないだろうけど」
「どうでもいい。あいつは炎を渡さなかった…むしろその方がいい。俺は観念体のままでいる。さて、俺に何を望む?」
「今回は直接あの子を始末してほしい。今や魔力を取り戻し始めたのなら、欺く必要はない。これを利用して倒し、炎を吸収しなさい」
「え、何?」
「聞こえなかったのか?殺せと言ったんだ。もう一度生きたいんだろう?なら、俺の言う通りにしろ」
「殺せない」
「できるし、やるだろう。君は最初のときに、間接的だったがあの子を殺すことを厭わなかった」
「もう三年前の私じゃない!」
「本当にかい…?君は同じだと僕は思うけどね」
「違うの」
「じゃあ教えてくれ、Ragnorys嬢。私の知る限り、あの頃の君は無能な姫で、反逆者を潰すために何百人もの命を奪った。直接ではないにせよ血は君の手にある」
「黙れ!、それは私じゃない」
「ただKaelianの命を絶せば新しい人生が得られる。石のままではなく、自分の望むように使える人生をだ」
「もし新しい人生を得ても、唯一の友を殺した罪と生きるなんて私は望まない」
「…ああ、かつての冷たい姫Naevia Ragnorysはどこに行った?あの人は他人の命など気にしないタイプだった」
「彼女は湖の底に残った。今は別人」
「新しい“別人”にも“友”がいるのか?冗談だろ、あの子は君の友達なんかじゃない。君の元の王国と同じく利用しようとしているだけだ。君が彼を好くふりをするのは構わないが、我々は君が彼を羨んでいるのを知っている」
「羨望?」
「そうだ。君にはない母と生活が彼にはある。彼は母のそばで安心して眠れるが、君は石の中だ」
「…」
「フッ…お前の沈黙がすべてを語っている。彼を殺せば、お前は自分の人生を取り戻すだろう。再び食物の味を味わいたくはないのか。本当の愛情がどのようなものかを知りたくはないのか。為すべきことはただ一つである。」
「私…それが欲しい」
「ふふ、知ってた」
「でもできない」
「できるさ。小さな助力をやろう。君が断れない一押しを。もともと君の内にあるものを咲かせるだけだ」
「な、何?…そんなことは!…」
「ちなみに、姫よ、私は羨望の神だ…前回は名乗らなかったね」
Naeviaは石から出ようとし、草原に立つとKaelianが目の前にいた。
「信じられないかもしれないけど、先週はずっと出られなくてさ。訓練が遅れちゃってさ。あ、そうだ。今日はこれを持ってきたんだ」
Kaelianは儀式の本を指す。
彼は本を地面に置き、ひざまずいて読み始める。後ろにはNaeviaが立っている。彼女の目はどこか遠くを見ているようだ。ゆっくり彼に近づき、手に純粋なNarysの刃を成形する。
「いや、いや、いや、いや、やりたくない!」
彼女は内心で叫ぶ。
「お前がやりたいなら、やればいい」
Kaelianは最初のページをめくる。
「ねえ、見て、目次に第1巻の項目が載ってる…え?…Naevia?」
Naeviaは刃を振り下ろし強く突き立てた。純粋Narysの刃は熱い肉に突き刺さる。
「Kae…lian」
Kaelianの目が見開かれる。
「な、なぜ…何をしたの?」
その刃はKaelianの肉ではなく、Naevia自身の肉に刺さっていた。
Naeviaは言う。
「…神が…でも、私は断った」
彼女は床に倒れる。
Kaelianはすぐに駆け寄り、彼女の頭を抱き上げる。だが血も外傷も見当たらない。
「ぐあああ、くそ、このバカめ、これが唯一のチャンスだったのに!自分の命よりあいつの命を選んだのか!」
と神の声が怒鳴り始める。声は次第に薄れていく。
「Naevia!!」
Kaelianが叫ぶ。
「いいや、あたしは人間として死ぬ方を選んだ。道具として生き直すよりも」
Naeviaは最期の瞬間にそう思う。
Naeviaは少しずつKaelianの腕の中で形を崩し始める。
彼女がいた場所をじっと見つめていた。
「彼女は…死んだのか?」
遺産が言う。
「…違う、彼女の体は再び石に戻った」
Kaelianは石を拾い上げる。しかし何かが異なる。石にひびが入っている。
「召喚する」
彼は言い、水の球体を作る。
「やめろ!。それをすれば、君がNaeviaに会うのはこれが最後になるかもしれない」
「でも彼女は…」
「石は彼女の魂の導管のようなものだ。壊れれば、再び出るときに魂が壊れる」
「じゃあ…どうすることもできないのか?」
「まあね。でもその本の中に答えがあるかもしれない」
Kaelianは石をしまい、儀式の本を拾い上げる。
「彼女は“神”と言った。たぶん彼は彼女を強いていたんだ…また俺の命を救ってくれた。今度は俺が彼女に新しい命を与える方法を探す」
こんにちは、ここまで読んでいただきありがとうございます! これで第1巻の最終話になります。
ライトノベル風のフォーマットでは1巻=12話構成ですが、Web版では2分割して、各12話ずつの2巻にしました。つまり、Web小説の第1話と第2話は、本来のフォーマットでは第1話にあたります。
第2巻(Web小説版)は1か月後に公開予定ですが、もし応援をいただければ、もっと早めに公開できるかもしれません。