その75
「おーーい」
「なんだったら若いギルド員の方に一芝居売ってもらうのも…」
だんだん怪しい考えになってきやがったぞ?さすがにそこまでやると違う問題が出てきそうだ。
ズイッ
「戻って来いっての」
「うわぁ!?」
俯くリールの目の前で体を逸らし、そのままの体勢で顔を近づける…よし、戻ってきたな。
「し、心臓に悪いです」
「客を放っておいて耽るからだろうに」
にしても想像以上に驚かれちまったな。こっちも若干ビクッとしたぜ…背が低いからこういう手が取れるなと安易に実行するもんじゃないか。腰が柔軟に動くもんだからそのままの勢いで動いちまったよ。
「それについては、正しいので否定できませんね…」
「だろう?んなわけで余計なことを考える前に、俺の買い物の方に付き合ってくれや」
「畏まりました!」
よし、軌道修正終了っと。これでギルネットが明らかに知り合いのチンピラだったりに絡まれる心配もなくなったわけだ――――色仕掛けはクソボケなんで効かないだろうしな。
「一先ずはロッドにリールを買いたいが、やっぱ良い値段すんだよなぁ」
ロッドが最低でも50000ミールで、500番台やらの小型のリールが5000ミールから…これからやる豆鯵釣りには良いんだろうが、流石にそれ以外にも使いたいってことを考えると2000~3000番台ぐらいのもう少しラインが巻けて万能性のあるやつにしておきたいか。
「アハハハ…代わりと言っては何ですが、最初からラインが巻かれているのが多くなっていますので」
「ん?そうなのか?」
「慣れている方は大丈夫ですけど、巻きの作業って結構手間ですし…それに巻かれているのはジャイアントスパイダーのラインですので」
「その感じからして下糸もやってんのか」
「当たりです!」
ほう、サービスみたいなもんだってのにわざわざご苦労なこったよ。下糸ってのはそのまんまの意味で、メインに使うラインの下に巻いておくヤツのことだ…高いメインラインの代わりに使う笠増しの意味もあるんだが、PEラインやらの滑りやすいもんを使うとリールが空回り――実際はさらに内部部品であるスプールってヤツなんだが――しちまってキャストしても全く飛ばなかったり、獲物が掛かって手繰り寄せようとしようにも永遠とこっちに寄ってこなかったりして逃げられたりすんだよ。それを防ぐために滑りにくいタイプのラインを下に巻くってわけだ。
「正直ボビンやらも準備しないかと思って冷や冷やしてたよ」
「当店ではライン巻きも承っていますのでご安心を!」
商売が上手いこった……こうやって拘るから趣味は金が溶けんだよなぁ。
でも止められないのが趣味。
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