その7
「結局終わりまでやっちまったな…」
最後の箱を運び終えた後にそんな事をぽつりと零すゴンゾ。と言っても本人は様々な魚を見ることができ、満足げな顔をしている。
「いやぁ助かったぜおっちゃん!」
そう言いゴンゾの肩をバンバンと叩くのは荷運びを主導していた男。周囲の船員から漏れ聞こえた話によると、どうやらこの漁船の船長でギルネットという名前のようだ…まぁ刺し網っつー名前は漁船の船長にふさわしい気はするが、随分安直じゃねぇか?
「助かったっていうがな、途中から完全に俺を主体にしてただろうが」
明らかに1人で運ぶやつじゃねぇ木箱まで渡してきやがったぞ?
「そ、そんなことはないぞ」
「ならあのサーモンが入った箱は何だってんだ?」
指を差した先はメートルサイズのサーモンが氷とともに詰め込まれた箱…何匹も入っていることから明らかに300キロ以上はあるだろう。
「……報酬は弾むぜ!」
この野郎良い笑顔で言い切りやがった。
”最高だったぜゴンゾのおじきー!”
”いよっ樽のような腕の筋肉!”
”店に来てくれりゃサービスするよー!”
そんな気のいい声も聞こえる始末である。
「まぁ俺も途中で面白くはなってきたからいいがな」
現実じゃ運べない量が運べるってのもそうだが、腕が綺麗に上がんのよ。この年になると微妙に腕がキツくてな…腰や膝も健康に気を付けていても軋むというか、これ以上は無理って体が言うのさ。そこまで再現されてなくてよかったぜ。
「そう言ってくれて助かるわ…んじゃこいつが今言った報酬だ!」
差し出された手にはきらりと光る銀貨が6枚。
「あー…すまんが最初に言った通りまだこっちに来たばかりの外界人なんでな。これが幾らかわからんのよ」
「そういや言ってたな。これは俺らの世界の金でミール!大体100ミール前後でパンが一斤買えるぞ。今回は銀貨で6枚だから6000ミールだな!」
ほうほう…基本円と変わんねぇって考えで良さそうだ。んであの魚の入った箱を運んで6000円ってとこか。
「正直安いか高いかわからんな」
「まぁ普通って感じだ。ギルドで依頼した場合の適正価格だな…ただ弾むって言ったからには追加がなくちゃな!この箱を持って行ってくれや!」
数人の船員が重そうに運んできたのは、今回漁獲した魚たちの詰め合わせだ。しかも中でも鮮度が良く味の良さそうなものを選んでくれたようだ。
「こいつは…良いのか?」
「おうよ!あそこまで活躍されてしょっぱい魚を渡したら漁師の名折れってもんよ!」
「なら有り難くいただくが……ついでにそのギルドっての場所を教えてくれんか?」
「ギルドっても色々あるが、どこに案内して欲しいんだ?」
「そら勿論、こいつらに関係ある場所よ」
ゴンゾの指さす先は――今貰ったばかりの魚たちである。
思い付きのまま書いていたら、何故か調子のいい漁船の船長が誕生しました。
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