その66
まずはともあれ、このジョッキに注がれたエールを飲んで喉と口を湿らせんとな。出された物に手を付けずに話を始めるのはちょっと変だしよ…それにドワーフってのは駆けつけ一杯で酒を飲む種族らしいんでね――ただ単に飲みたいわけじゃないからな?
「ングッ」
ゴッゴッゴ…コン。
「ふぅ。苦みとキレのある良いエールだな」
それに香りも柑橘を思わせるスッキリしたタイプだ…こういうのは魚が合うんだよ。どれ、エスカベッシュもいただくとしよう。
「お、これも旨いな」
香りからして酢が強いのかと思ったらそうでもないな?むしろパプリカや玉ねぎ、更には衣に包まれた魚から溢れ出る脂の甘みや旨味の方が主張してくる……ああ、酒場の突き出しみたいに出されるつまみだからそこまで保存性を高めんでもいいのか。作ってすぐ出るってのもあるだろうしよ。
「ついでにハーブによる食欲の増す香りが襲ってくるし、こりゃ飲兵衛にはたまらんだろうな」
「良いだろ?この酒場は仕事を終えた奴らの憩いの場なんだよ」
「だとしても元気が有り余ってる気がするが」
「そりゃそれが取り柄の奴らばっかだからな!」
つまり脳筋ばかりかい。ま、刺々しい騒ぎってよりは陽気なバカ騒ぎって感じ何で嫌いじゃない。おっと、そろそろ本題を切り出さんとな。
もう一度エールを飲んで口の中の脂を洗い流してと…やっぱこのエール旨いな。
「そういやさっき道具屋にいたシキルの嬢ちゃんに聞いたぞ?随分と誘うのが早いじゃねぇか」
「ん?まぁ仕事の話を聞くのなら早い方が良いと思ってな!」
”兄貴…”
”何とかここまで来たけど、進展はあるのかねぇ”
う~~ん、こりゃ脈なしとかのレベルじゃねぇぞ。そりゃあ仕事の話をしろってのは俺からしたが、まさかそのまま鵜吞みにするとは思わなかったぜ。横にいる船員の感じからして、あの後2人きりに出来る機会があったから実行したんだろうが……
「どうしたお前ら?」
””なんでもねぇっす!””
「そうか?何か頼むんなら遠慮なく頼めよ!ゴンゾおっちゃんもな!今日は奢ってやるぜ?」
「おう。ただお前は次の休みに嬢ちゃんとどこかに食いに行くんだろ?金をちゃんと残せるんだろうな?」
「……ここの酒を奢れるぐらいで大丈夫かね?」
ダメに決まってんだろ。
宵越しの銭は持たない…だから預けてる。
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