その58
おーおー、今しがた預けてきたカサゴよりも真っ赤な顔をしてんな。なんなら八百屋のおっちゃんが勧めてきていた自慢のトマトと良い勝負なぐらいだ……しかも湯気すらも出てやがる。
「大丈夫なのか、それ」
「んえ?ああ、シキルさんは放っておいても大丈夫ですよ。落ち着いたら此方に戻ってくるはずですから」
ってことは今意識がどっかに行ってるんだな。まぁ十中八九ギルネットがストレートに飯に誘ったのが原因だろうかね…下手すりゃ仕事の話をしたいってのも言わなかった可能性もあるが、誘った後に言ったがシキルの嬢ちゃんの耳に入らなかったってのもあるな。
「それで何かお求めの物がございますか?」
「ああ、グローブが欲しくてな。ただ報酬が入ってから買うことにはなるだろうが」
「畏まりました!魔魚用の方でいいんですよね」
「おう」
微動だにしない嬢ちゃんをそのままにしてグローブの方に案内を始めるリール。まぁ俺が気にしていてもどうにもならんし着いていくか。
「こちらになります」
「案内ありがとよ…つってもこっちも良い値段がすんな」
指ぬきタイプやグリップが効きそうなゴム素材が張り付けられたタイプ、それに鎖帷子のように手の先から肘の先まで覆うような金属製のタイプ…いやこんなヤツ何に使うんだよ。明らかに戦闘用の武具だろ?それとも、これを使わなくちゃならんほどヤバいのが海にいるってのか。
「こいつは何であるんだ?」
「ええっと、それは漁師が使うというよりは加工場の方用に仕入れたものを個人で販売している物になります」
「加工場?今行って来たがこんなのが必要なのか」
「あまり知られていないんですけど、魔化した甲殻類や棘のある魔魚を捌くときに使われているんですよ」
ほうほう、硬いやつら用ってことか。確かにガザミやらを捌く時にはあった方がいいかもしれん。
「正しく防具ってわけか」
「はい!ゴンゾさんが使われているであろうグローブも頑丈な物で魔魚用はあるんですけど、大きな刃物を使ったり硬いものと対峙するには少々心もとないそうでして…それと表面がすぐ痛むそうです」
「成程ねぇ、あれだと覆える場所が少ねぇか」
「そういうことです!こちらで有れば安全ですし、上から覆うグローブを傷つけてもすぐに交換できますから」
キチンと考えて置いてあるってわけだ…そうみるとこいつで10000ミールっては安いのかもしれん。
ま、他にも表面を覆うグローブが必要となると面倒だしパスだ。それに加工場の緊急用的な意味で置いてんだろうし減らすのも忍びない……いつかでかいのを捌くときになったら買えばいいだろ。
「んで俺が使ってるやつの魔魚版はどれだ?」
「こちらですね。最近新しくなったのでグリップも強くなっているはずですよ」
リールが指を差す先にあるのは今使っている物よりも色が明るいグローブだった。
「素材から変わってんのか?」
「ええ、日々使い勝手の良い物にするのがうちのモットーですから!」
「納得の仕事方針だな」
「ありがとうございます!」
良い返事だ――――そんで良い値段すんなぁ…
高級品ばかりである。
デカい魔魚や甲殻類はいつか出ます…
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