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正月SS

あけましておめでとうございます!今年も釣り爺さんの趣味にお付き合いいただけると幸いです。

ちょっと長いです!

 ――――TOS開始前の去年の大晦日。


 浜辺で様々な人たちが今年最後の夕日が海に沈むのを心待ちにしている……が、ゴンゾもとい権蔵(けんぞう)はそんな最中浜辺ではなくその奥に広がる海の沖にやって来ていた。

「にしても悪いな船長。こんな年の瀬だってのに船出してもらっちまってよ」

「気にすんなってゴンさん!俺からすりゃ親父の代からの年末の恒例行事なんだから!むしろあと何年続くかが心配だよ?」

 そう話すのは魚探で魚を探しながら船を操舵する若い男。一昨年辺りからこの船を継ぐことになった新しい船長だが、勘は確かでいい棚に案内してくれる…ちょいと余計な一言が混ざるのが傷だがな。


「何年続くかなんざ俺にも分からねぇな…まだまだ現役のつもりだが知らぬ間に60を過ぎてるしよ。あとゴンさんって呼ぶなっつってんだろ」

「良いじゃんゴンさん。強そうな響きだし」

「強すぎんだよ」

 あの代償と引き換えに急成長したじゃんけん使いが脳裏にへばりついて仕方がない。おいタンバリンとコーラを振るのをやめろ!


「ったく…そろそろポイントか」

「そうだねぇ……お!また群れの反応が入ったよ!」

「んじゃ準備すっか」

 次は狙いのやつが釣れるといいんだがねぇ…仕掛けはタイラバにしてんのに釣れんのがカサゴにワラサ、それにヒラメと来たもんだ。いやこいつらが釣れるのは分かるしこの時期に釣れると嬉しいもんだから、明日の宴にゃ持ってこいなんだが一番欲しいのは違うんだよ……キンメダイも嬉しいがこいつじゃねぇ。


「型がいいのが釣れるのに微妙な顔だね」

「そら狙いのが来てねぇからな…時間的にもここがラストだろ?」

「うん、これ以上暗くなるとこの船だと危ないからね」

 となるとあと1時間ぐらいか。夕マズメだし来てもいいと思うんだが?


 そう考えながらベイトリールのクラッチを外しタイラバをまた海に落とす。この時期だと狙いの魚は温度の安定する深さ100~200メートル付近にいるはずなんだがな。

「うし、底に着底したな」

 そうなったら急いでハンドルを巻いてタイラバを持ち上げて引いていく。こんときに底にいるやつらが気が付いて追いかけてくる。ただ落ちたらすぐ引かないと食いつかないんでタイミングが命だ。


 コンッ


「お」

 アタリがあるな。ただこの状態はまだ飲んでないんで続けて巻いてと…さぁ来るか?


 ――グン!

「いよっしゃ!」

 腕にかかる重みと海面に大きくしなるロッドの穂先。間違いなくでかいのが乗ったぞ!


「船長!タモの準備を頼む!」

「はいよ!」

 割と上の方で来たんで根に潜られる心配はないが、明らかに引きが強い……ハンドル横のドラグを緩めてラインを切られないように調整しファイトを継続させる。この調整を都度やらんと思わぬところで暴れられる可能性があるからな!


「魚影が見えてきたよ!」

「こっちも確認できた!」

 揺らぐ水面に映る銀色に少し赤身の混じった魚影…ヤツだ。

「船長!」

「準備できてるよ!」

 疲れた腕に鞭を打ち、ドラグを強めに締めた状態で未だに暴れるヤツをタモに引き寄せる…よし!


「入った!大物だよゴンさん!」

「ふぅ~…ナイスフィッシングだ」

 ただ釣りの続行は出来んな…肩がもう上がんねぇわ――まぁ元々上がりにくくなってるがな。



 ・

 ・

 ・


 ――――正月。


「いやぁ兄さん!相変わらず良いの釣ってくるねぇ!」

「本当本当!ヒラメにキンメも最高だけど――この大きい真鯛も釣ってきちゃうなんて!」

「はん、褒めても持ってきた酒しか出んぞ」

 待ってましたと騒ぐ兄弟姉妹達にため息を出しながらも、どこか嬉しそうに日本酒の準備を始める権蔵。


 いやぁ無事に真鯛が釣れてよかった。もう買って帰るかと思っていたが最後にこの50センチレベルのが釣れて大満足よ!……まぁ代償もあるが。

「にしても筋肉痛はまだ来ないが疲労が凄いな…これが老化ってやつなのかね」

 車を運転するのも釣りの後じゃあきつくなってきたし、あと数年が関の山かもしれんな。そうなったら何すっかね?


「おじさん釣りやって疲れたの?」

「あん?」

 台所でお猪口を探していると、後ろから声を掛けられた。えーっと…末っ子の(みなと)の娘か?

「どうした」

「お父さんたちが飲むなら、私たちは他の部屋で遊ぼうってなったから飲み物取りに来たのよ」

「あ~そういうことか。ここと冷蔵庫にあるんで好きに持ってけ」

 この時期だと冷えた飲み物は嫌な奴もいるだろうから分けて用意してあるんだ。といっても常温でも十分冷えてるがな。


「はーい……それで老化が何とかとか言ってたけど、疲れてるんでしょ?好きなことなのに」

「そらこの年だからな。仕事も辞めて存分に趣味に走るかと思ってたが、好きでも体が思いに追いつかんのよ」

「ふ~ん――ならさぁ、ゲームとかどう?」

「ゲーム?」

 お猪口を用意して振り返ると、満面の笑みでスマホをこちらに向けてきていた。


「ほら!今年の夏から始まる仮想VRゲームなんだけど、色々なことがかなり忠実に出来るそうなの!どう!?」

「お、おう…ちょっと落ち着け」

「ここに釣りも出来るって書かれてるのよ!デモプレイをした人たちからの評価も良いし当たりだと思うの!」

 こりゃ駄目だな…ただ釣りがリアルみたいに出来るってのは興味がある。



「ゲーム名はトランジション・トゥ・アウターソサエティ…長いな」

「英語の頭文字を取ってTOSって訳せばいいんだよ!」

 ならTTOなんじゃ…言いにくいか。

「成程。酒を運んだら詳しいことを聞こうじゃねぇか」

「やった!これでお父さんたちと交渉しやすくなる!」

 ソッチが本音かい。

SSもといプロローグ。

ベイトリールの説明などの釣り具の紹介とかは本編で出てきたらということで…大みそかに作っているので時間が少ない!


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