その38
手釣りっても木枠でラインを巻けるわけじゃなく、引っ張ったラインの端を持ちながら釣り上げるだけの大分地味な釣り方になるわけだが、メインは根魚だからそんなに気にするこたぁないだろう。
「それでも磯釣りなわけだから、ずっこけて穴に落ちんようにせんとな」
そう言いながら先ほどと同じく足元に注意しながら、水深のありそうな岩礁の隙間を探し歩く。今回やるのはブラクリ仕掛けを利用した穴釣りだから、岩と岩のスキマやぽっかりと空いた場所で獲物を狙いたい……現実でもテトラポットや今の俺みたいに溶岩やらで出来たゴツゴツの岩で出来た磯やらで出来るんだが、マジで足元には注意してくれ。
「特に岩盤みたいなつるっとした場所は特にな…テトラならまだ何とかなることはあるが、それでも隙間にハマって抜けられずに溺死なんざ割とある事故だし、こんな磯場で落ちたら岩で削られてお陀仏だ」
そう自分に言い聞かせて、きちんと足元に海藻などが密集していないかを確認しつつ足を踏み出す。大丈夫だろうとお気楽に探索した奴が、波によって体が引かれたりしてザリザリになって発見とか割とあるからな。
こういう隙間ってのは大きな波を防ぐ利点はあるが、代わりにそれの内部で小さな波や海流が発生するから恐ろしい。ライフジャケットがあってもマジで気休めにしかならんから過信すんなよ?あの尖った岩にぶち当たったら人間なんか一発だぜ。
「ただそのおかげで、大きな波にさらわれないことを目的にした根魚共が潜むんだがな。何事にも表と裏はあるってわけだ――お、いい場所があんじゃねぇか」
実際に起きた事故を思い起こしながら探していると、普段は海の中に深く沈んでいるであろう岩礁が良く見える場所を発見した。干潮時にいける岩場のこういう場所の底には泳ぎが苦手な奴らでもデカいのが潜んでるんで狙い目だ。代わりに潮目をよく見ておく必要があるがな!
「っとそういや、餌を準備していなかったな。ただまぁカサガイをわざわざ切って準備するのも面倒なんで、最初からこっちを使うとしよう」
ゴンゾがマジックバッグから取り出したのは根元が切れてしまった方のペルセベス。人間が食うと旨いように、こいつは魚たちも好物なんだよ。特に殻も気にせず食うような大口や歯の強いやつらにはな。
「ブラクリの針に1つばかし刺して…うし、いってこい!」
そういって仕掛けを足元に落とす。このブラクリは5号ぐらいの重さだし底につくのにもそんなに掛からんだろう……それよか俺が上手く送れるか心配だが、先にある程度ラインを外してあるんで無事に着底したし大丈夫だろ。
「さて、後はちょい持ち上げて棚を探すと…」
手に伝わる波とは違ったコンコンとした動き――それが一気に強くなり腕が引っ張られた。
「早速来やがったか!全く、スレてないってのは最高だな!」
カメノテは結構良い釣り餌です。なるべく安全な場所で取った方がいいですけどね…それでも波が掛かるような場所ばかりですが。
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