その37
仕掛け準備。
一度磯の手前である足場の安定した場所に戻ると、道具屋で購入したラインに穴釣り向きの仕掛けであるブラクリを取り出し準備を始めた。
「取り敢えず根魚を釣らんといかんしな」
正直ガン玉を買ってあるんでブラクリを使わんでももどきで釣れなくもないんだが、折角店屋が作った質の良いのがあんだから使わん手は無い。自作のだと重さの調整は出来るが根掛かりの回数がどうにも多い気がするし、なおかつそれが出来るほど数もないからなぁ…早いとこ金稼いで種類と数増やさんと。
「最初っからスナップサルカンが付いてんのは買う手間もなく楽で良いもんだ。ラインの結びは…面倒だしクリンチでいいか」
糸自体もそんなに太くないし問題ないだろう。今回のクリンチってのはインプルーブドクリンチノットっつー仕掛けをラインやハリス――ラインの先に繋げることのある、見えにくさや頑丈さを重視した糸のことだな。他にも種類があるがそれはまた今度って事で――に結び付けるときにやる定番の方法の1つで、特に金属金具のサルカンに結ぶのが多いんでサルカン結びとも呼ばれるぞ。
「今回は波も強くねぇし大型狙いでもないんで、ダブルじゃなくてノーマルでいいだろ」
まずサルカンの端についてる穴にラインを15センチぐらい通したら折り返し、折り返した方のラインをもう一方のラインに5、6回ほど巻き付ける…この時サルカン側に輪が出来るようにしてくれ。そんで巻き付けた後のラインをできた輪に通すんだが、このままリールやらに繋がってる側の本線と巻き付けた側のラインを引っ張ると元祖のクリンチノットになる。インプルーブドはこの輪を通した後のラインを折り返して、輪に通したことによって出来たでかい輪にもう1度通す結び方だ。
「手間は1つ増えるがサクッとできるし強度も増すとあればやっておいて損はないってね」
にしても服は瞬時に着替えられるってのに、ラインの結びやらは手でやらんといかんのか…まぁ俺自身は慣れてるから構わんが。最後に水を掛けて摩擦でラインが痛まないようにしっかりとだがゆっくり絞って完成だ。この時に唾を使うってのもいるがそこは好き好きだな…俺は何となく嫌なんで海水使うが。
「うし、これで準備完了――早速手釣りと行こうじゃねぇか」
ロッドを使用するのだけが釣りじゃねぇってのを見せてやろう……周りにゃ誰もいないがな!
ようやく釣り開始!
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