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その29

 バキンッ!

「いよし!よくやったぞお前ら!」

 酒の奢りにやる気を出した船員たちが全力でアイスピックを叩き続けたことにより、ギルネットの膝に乗せられた氷は割れ抜け出してきた。おー、大分手が赤くなってるじゃねぇか。


「シキル!俺の小遣い削減は中止だ!ただでさえ減ってんだから勘弁してくれ」

「まぁそうね。これ以上減らしたら生活に支障が出そうだわ」

「だよな!というわけで宴会の金の分を俺の口座から出してくれ!」

「調子に乗らない!」

 テンポのいい夫婦漫才か?にしてもこいつの小遣いは既に搾り取られた後かよ…いつもどんだけやらかしてんだ?


「つーか漁船の資金ばかりか自分の口座も預けてんのかよ」

「おう!俺だと使い切っちまうからな!きちんと管理出来て信頼のできるやつに預けていた方が安心できるだろ?」

「……それで結局引き出すのなら意味ないのよ」

 文句を言いながらもそっぽを向きながら微笑んでんな。まぁ好きな人物の財布を握ってるわけだし、付き合ってもないのに踏み込みがえぐいというか、ギルネットがだらしないというか……そこには気づいていないとかもあるな。


「うし、ギルネットも復活したし地図確認したら行くとすっか」

「磯に行くんだっけか?気を付けて行けよ!油断するとツルっといって頭打つからな…」

 ”兄貴子供のころ何回もうってますもんねー”

 ”だからこんなに脳筋なんじゃね?”

 ”言えてるわ!”

「お前ら…そんなに港に浮かびたいか?」

 ”さーて残りの魚運んできますわ!”

 ”俺も!”

 ”孤児院行ってきまーす!”

 そういって煽った船員たちは、蜘蛛の子を散らすように木箱を抱えて去って行った。


「逃がすかぁ!」

「あっ!ちょっとギル!…行っちゃった……戸締りをするのに船長が居なくてどうするのよ」

「どうせあんたが鍵持ってるんだろ?」

「そうなんですけど、せめて中の確認をさせてから締めないと示しが付かないというか」

 あー、ギルネットは船長だもんな。物が減っていないかとかの確認はしないとだめってわけか…まぁ


「大丈夫だろ。あんたを信頼してのことだろうし、ここに残ってる船員も仕方ねぇなと呆れながらも楽しそうにしてんだからよ」

「ですが…」

「なんだ?あんたの方は愛するギルネットのことを信頼できないってか?キチンと確認してはいるんだろ?」

「……そうですね。ですが週1ぐらいの確認はさせようと思います」

 それぐらいの確認は当たり前だな。定期確認で荷車の傷み具合やらを確認しないといつ壊れるかわからんし、替えの部品の依頼やらもある。


「それと」

「あん?」

「誰が愛するギルネットですか!?私はあいつの事はス…スキなわけじゃありません!」

 そんな真っ赤な顔で言われても説得力ねぇなぁ。

やっぱりポンコツ。

因みにシキルは仕切るが由来じゃありません。


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