その25
倉庫から戻ると、ギルネットが他のやつと話していたのをやめこちらに合流してきた。
「いいのか?」
「かまわんかまわん。今日の漁獲量を話し終えて世間話してただけだからな」
一応話し相手に目を向けると、既に他の奴と話し始めていた。ギルドで情報収集をしてるってわけか。
「んじゃ案内頼むわ」
「おう!」
早速あの雑多に入った魚の木箱を回収するために道具屋の前を通ると、「急いで用意したので、あり合わせと期限が近いため店から下げた物で申し訳ありませんが…シキルさんの仲が深まったら正式にお礼の品を」とまた店の前にいた店員のリールに、麻袋に入った物を通り際に手渡された。
「袋?中身はなんだ?」
「色々と入ってそうだが…サビキの仕掛けに、こりゃ釣りの餌か?」
巾着のように閉じられた袋の封を開けてみると、中には金属で作られた釣り餌籠に、赤く塗られ小さな皮のようなものが巻かれたサビキ用の針がセットになった仕掛けが1セット。さらに少し青みがかった袋が入っており、立ち上る香りからするとエビに魚…後はキノコやらを乾燥させて粉にしたやつみたいだな。
「なんつーか海の上で嗅ぐ香りだな」
「そりゃ中身はほぼ魚介類だろうしな。なんにせよありがてぇ」
ゴカイやらの餌も買おうかと思っていたが、流石に本当に文無しになりそうだから現地調達のみで済ませる気だったからな。ついでにサビキの仕掛けもかなり有り難い…受付でのやり取りで用意してくれたんだろう――そんぐらいあの依頼が周知されてるってのもありそうだが。
礼を言わねばと思い振り返って店員リールを見ると、笑顔でサムズアップをしてきたのでこちらも無言でサムズアップを仕返した。
「何してんだ2人して」
「お前は気にしなくていい、それよかあのシキルの嬢ちゃんをどうやって誘うか考えとけ」
「おう!……さっきから考えてはいるんだが、改めて考えると1人を誘うってどうやって誘えばいいんだ?」
こりゃダメかもしれんとギルネットにバレんようにリールへ目だけ向けると、笑顔なのは変わっていないが右手でギルネットを指さして――左手のサムズアップが上下逆になっていた。
いつも仲間とバカ騒ぎしている人が、1人の女性を誘うとなると言葉が出ないだろうなぁと。それはそうとギルティです。
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