その19
興奮気味な店員を宥め、買い物を再開する。
「す、すみません。ちょっと思うところがあって溜まってました…」
「気にせんでいい。俺も道具を意図的に壊しまくるのは好きじゃねぇからな」
そりゃ楽に出来るんだろうが、その道具の製作者たちに申し訳が立たんわ。機械で大量生産をするわけじゃなく人の手作りだろうし余計にな…大量購入していくやつらはゲームでの消耗品ぐらいにしか思ってないんだろうが、しっかりと地元民がその光景を見てんだから心象悪くなってんじゃないか?
「ですよね!今度来たときはしっかりと伝えさせてもらいます!」
実際このフンスと力を入れてる店員からは心象良くねぇだろうし。いったい何人の外界人が叱られる羽目になるんだか。
「どうせならきちんと迷惑だって伝えてやれ。仕入れる数だって限度があんだろ」
「確かに…でもよく分かりますね?」
「そら倉庫もなさそうな店に置ける数は決まってるだろうからな。ここが支店だってんなら話は別だろうが」
「一応支店ではあるのですが…本店の父が数を絞っていまして」
ほう?ギルド直営なのかと思っていたが、違うのか。ただまぁ狭い店内だし、漁師が必要な数を少量買っていくような店だってんだから仕入れの量が少ないのは当たり前だわな。
「その本店はこの町じゃねぇのか」
「それがちょっと離れた違う港町なんです…基本的にこの町の漁師の方々はそちらで物を買うか取り寄せるかしていまして」
「本当にこの店は緊急用だから、物がやってくる頻度が少ないのか」
「そうなんです!……あ、でも」
「なんだ?」
「キチンと売ってるのにクレームが来る場合はすぐに呼べって言われてました!ただお父さ…父はやりすぎるきらいがあるので…」
頑固おやじなのかと思っていたが、子供溺愛してるパパってイメージに変わったぞ…下手すりゃ海の藻屑が増えるんじゃねぇのか?
「俺はちゃんと買うから安心してくれ」
「それはもちろんです!」
ならいいんだが。
実家に帰るとパパと呼べと言われる店員さん。
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