その13
呆れたような顔をする隊長さんに俺はギルネットが言った内容は事実であるというのと、ついでにあのガキが現地民であることを侮辱するような発言をしていたということを伝えた。すると
「やはりか…そこに転がっている男はたびたび問題を起こすもので有名でな」
腕を縛るという話だったのに、もうミイラのように縛られグネグネと藻掻く男を指さす隊長。ここまでくると滑稽だ…しかもまだ始まってから2週間しか経ってねぇのに悪名高いとはなぁ。
「ろくな有名じゃねぇな」
「全くだ。今までは我々が現れる前に逃走をしたり、侮辱のみな為口頭での注意に留めていたのだが…建物、それにギルドの損壊を図るとはな」
「本人としちゃ締め出された仕返しみたいなもんだろうが、損壊はいかんよなぁ?」
「ああ、勿論だ…情報提供感謝しよう。後はこちらに任せて欲しい」
所々で怒気が漏れていたところから、厳重注意で済むってことはなさそうだと安心したゴンゾはギルネットに近づき
「終わったぜ」
「みてぇだな。あの隊長さんもそうだが、お前さんも途中でいい笑顔になってたぜ?」
「おっと、そりゃ気を付けなきゃいけねぇな…あのガキがどうなるのかが楽しみだなんて口が裂けても言えないからな」
「今言ったよな?」
何のことだかねぇ。
「では、この被疑者をこれより留置する!」
「了解しました!」
「りょうかいでーす…よっと!」
”!?~~!”
緩い雰囲気の隊員がミイラを肩に背負い立ち上がった。うん?やけに体の曲がりが弱いような…
「おうあんちゃん。多分ソッチ背中だぞ」
「んぇ?……あっホントダー」
「いけませんよ。仮にもまだ被疑者なのですから」
自分の肩で暴れるモノを確認して裏返したが…肩を持ち上げて傾斜を強くして、ゆっくりと振り向いて確認してたからありゃワザとだな。もう一人もこの発言だし、ここの衛兵たち良い性格してんな。
「もしかしたらギルネットとゴンゾ殿には追加で聴取があるかもしれんが、その時はよろしくお願いしたい。……そうだ、私の名前はゼル・ピンテールと言う。何かこの町であったときは私の名前で衛兵に伝えてくれればすぐに駆け付けよう」
「おう。ゼル隊長でいいかい?」
「それでかまわん」
「よかったなぁゴンゾ!衛兵隊の隊長との縁なんて運がいいじゃねぇか!ただ、なんで俺だけ呼び捨てなんだ?」
「今までの行いを思い出すんだな」
「……わりぃことは何もしてねぇな!」
「迷惑を考えろ迷惑を」
はぁとため息をつきながらも、しょうがない奴だという目を一瞬ギルネットに向けたかと思うと
「行くぞ!」
反対を向き、野次馬を抑えるほかの隊員を引き連れながら去って行った。
「苦労してそうだなあの隊長さん」
「まぁ港周辺の治安維持だからな。最近の外界人騒ぎもあって余計忙しそうだわ」
「港ってことはお前さんの迷惑は全部あの人が対応してるってことか」
「おう!いつも助かってるぜ!」
こりゃこれからも掛け続けるな…
治安維持の人は苦労人にしたくなる不思議。
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