その101
副ギルマスに案内されながら酒場に向かうと、俺よりも年上に見える爺さんが騒がしい酒場でほかのギルド員に囲まれながら座っていた……いびりにしか見えなかったが、爺さんが嬉しそうな顔をしていたんで違うだろう。まぁ、その酒場も俺らが入ってきた瞬間に一気に静かになったんだが。もちろん俺じゃなくて、あとから入ってきた副ギルマスの――ジグだっけか?――方をみてギョッとしていたからだがよ。この感じからすると、酒場に来るのが結構珍しいらしい。
「あそこの爺さんで良いんだよな?」
「ええ、我がギルドの元加工作業者でして」
「成程なぁ、古株ってわけだ」
「それ故に慕われているのですよ。ただ、もう年だからと引退して余生を過ごされているようですが」
楽しそうな余生を過ごしているようでなによりじゃねえか。俺もこんな風にとは言えんが、たまに賑やかさがありながらも穏やかに過ごしたいもんだ…今フラグが立ったような気がするが、リアルでそんな波乱万丈何でそう起きないし大丈夫だろ。
「んん?ジグの坊主が来たってことは…お前さんがあの依頼を達成してくれた外界人かい?」
「おうよ、あの根魚たちは気に入ってくれたか?」
「身に血が残っていない極上品を気に入らん奴はおらんよ!しかも中型魔魚も景気良く釣ってくるとは驚きだぜ…おかげで暫くの間は満足できそうだ!」
「そりゃ良かった」
何で爺さんが自分で釣りに行かねぇのかと聞こうと思ったんだが、テーブルの近くまでやってきたらその理由がよく分かった――――片足が義足だわこの爺さん。ただまぁ、それを一切気にせずに見せているってことは足自体に未練はないんだろう…にしても、ジグの兄さんと一緒に近づくと他のやつらがじりじりと下がっていくのが面白いな。本人はちょいとムッとしているから不本意みてぇだが。
「依頼した理由がわかるだろ?この足じゃあ磯場で踏ん張るってのが難しくてよ……」
「それでも何で塩漬けになってたんだ?ここにいるやつらに頼めたろうに」
「無理だ無理。こいつらがあんな場所に行ってみろ、海藻につるっと滑ってお陀仏よ」
「そこまで何も考えずに踏み込みゃしないだろ」
「いえ、既に何度も失敗しておりまして」
流石にいくら脳筋と言えど、危険な場所って言われてんだから気を付けはするだろうと思っていたんだが、ジグの兄さんから追撃が飛んで来た。
「マジか?」
「ええ」「おう」
「……マジみたいだな」
試しに周囲に居るやつらに目を向けてみると、一斉に逸らしやがった…どうしようもないなこの脳筋共。
確かにリアルでは波乱万丈は起きない…リアルでは。
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