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【2025年7月30日完結!】天界の司書、転生したら最強でした!  作者: 愛猫私


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第89話

第89話 思い出の地



『ステッカーパウダー』は、発動したがヘリオスのオーラで歪んでしまった次元によって正しく発動されなかった。


―――――

 

フィルとクロムウェル、そしてメグは、海風が心地よく、地面には無数の青い花が咲いており、奥には崖の上に立つ一軒の古ぼけた家が見える場所にいた。

 フィルたちは、大陸の最南端に転移していた。

 ここは、メグの記憶にある場所であり、メグの思い出の地である。


 「ここは・・・?」

 「わしの故郷なのだ。ステッカーパウダーの効果で、わしの記憶の先に飛んでしまったのだ。」

 「戻る手段はあるのでしょうか?」

 「・・・ステッカーパウダーはもうないのだ。」

 「では、ヘリオスを置いたままということですか?」

 「転移できないならそう簡単には戻れないよ。とりあえず、ほかのみんなと念波で連絡を取ってみる・・・。」

 

 そういうと、フィルは従者たちへと念波を送った。しかし、反応がない。


 「あれ?遠すぎるのかな?とにかくヘリオスを置いてきた状態だからケルンを目指して移動すべきだと思う。」

 「そうですね。ヘリオスが暴走してしまうと地上が破壊されてまた魂が地獄に溢れてしまいます。」

 「・・・お主は、地獄の悪魔なのか?」

 「はい。そうですが。あなたは?」

 「・・・わしは、メグというものなのだ。魔女をしておるのだ。」

 「・・・クロムウェル。今言うことじゃないと思うけど、メグさんに見覚えはない?」

 「はて?初対面ですね。」

 「・・・。それはそうなのだ。悪魔が前世の魂の記憶を持っているわけがないのだ。なんでもないのだ。気にしないでほしいのだ。」

 「そうですか。そう言われると逆に気になりますが・・・。」

 「とにかくなのだ。近くの町へ移動するのだ。ここには、もう何も残っていないのだ。」

 

  息子の魂であるクロムウェルが、前世の記憶を残していなかったことがわかり、本当は悲しくてしょうがないはずのメグは気丈に振舞った。

 

「メグさん・・・。」

 「フィル。こうやってわしが覚えているだけで十分なのだ。ありがとうなのだ。」

 「なにか私とメグさんには接点があるのでしょうか。やはり気になります。教えてもらえますか?」

 「・・・メグさん。クロムウェルに伝えるだけ伝えてみたら?」

 「・・・。そうか。・・・お主は、わしの子どもだったのだ。」

 「・・・!?・・・ど、どういうことでしょうか!?」

 「わしは、ここでお主を生んだ。じゃが、お主は、生まれてすぐわしのせいで死んでしまったのだ。そこで、悪魔と契約をしてなんとか10年生きさせてもらったのだ。その10年間は、わしにとって夢のような時間だったのだ。初めて歩き、初めて言葉をしゃべり、いつも甘えてくるお主をわしは愛しておった。しかし、10年たった日、悪魔の契約で決められていたお前の魂は、地獄にとらわれてしまったのだ。いろいろ魔術を駆使して地獄から魂を呼び戻そうとしたのだが、無理だったのだ。」

 「そして、地獄で蹂躙された魂は悪魔となって、今の私がいると・・・。はて、私からしたら何のことやらさっぱりです。」

 「クロムウェル!」

 「いや、そうでしょう。何百年の時を過ごしてきていると思っているのですか。地獄では、地上と時間の速さが違う。地上でのたがが10年に私の記憶が、私自身の自我が左右されるとでも思っているのですか?」

 「・・・。その通りなのだ。」

 「だからと言って、わざわざそんなことを言う必要はないだろ。」

 「フィル様、何を言っているのですか?私は悪魔です。地上での母親に久しぶりに会ったからと言って気の利いた言葉なんて言うわけがないじゃないですか。そんなことより、今は地獄の管理者のクロムウェルとしてここにいるだけなのですから。」

 「貴様!」

 「フィル。もういいのだ。全てわしのエゴなのだ。死なせてしまったことに対しての謝罪も会いたいと思う願いも。」

 「・・・メグさん。」

 「そんなことよりもヘリオスをどうするかということが重要なはずです。」

 「そうなのだ。皆と合流してあの化け物をどうするかを考えるのだ。」

 「・・・。」


 クロムウェルとメグの再会を取り持つことができなかったフィルは肩を落とした。


 クロムウェルは、そそくさとその場を離れ歩き始めた。

 メグもそのあとを追い、フィルが続いた。

 

 クロムウェルは、今までの話がなかったかのようにフィルに話しかけた。

 「フィル様、従者の皆さんを再召喚したらどうでしょうか?」

 「そんなことができるのか?」

 「まぁ。出来なくない。でも念波も届かない状態じゃ、再召喚もうまくいかないと思う。」

 「可能性があるならやってみてはいかがですか?」

 「そうだね・・・。ちょっと待ってて。」


 フィルは、平面構造の魔法陣から立体構造の魔法陣へと変化させ、魔力を高め始めた。

 召喚魔法の魔法陣が完成した時だった、規則的な立体構造がぐにゃりと歪み粉々に砕け散った。


 「どうしたのだ!?」

 「誰かに干渉された?いや、違う。次元を司る召喚魔法自体が封じられてる。」

 「どういうことでしょうか。」

 「壊れる前にわかったんだけど、次元を司る魔法を妨害している奴がいる。」

 「それは一体誰なのだ?」

 「ヘリオスだよ。あいつ自体がこの世界の空間をゆがませてるからうまく発動できない。これじゃ、次元に干渉する魔法は使えない。」

 「素材を集めてステッカーパウダー作ってもそれじゃ使えないのだ。」

 「では、ここから自力でケルンまで戻らないといけないということですか。」

 「そうなるね。でも、念波が使える距離まで近くなったらどこで合流するかは調整できる。とにかくケルンへ向かおう。」


 フィルたちは、近隣の街まで再び歩き始めた。


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