第73話
第73話 旅路1
フィル達一行は、順調に聖王国アルムストラへ向かっていた。
「フィルぅ~暇だぁ~。」
茶々丸の上でごろごろしながら紅が言った。
「確かに移動中はこんなものじゃないかな?」
「そうですよ。変に魔物と遭遇してもタイムロスになるだけです。」
「旅ってのは、ハプニングがあっての旅だろぉ。何にもないのつまんなーい。」
「暇なら寝ていればいいじゃない。うるさいわよ。」
「さっき寝たから眠くない。」
「まったく子供でありんすね。」
「なんか暇つぶしになることかぁ。」
フィルは腕を組み考えた。
「そういえば、リンは僕が作った小手壊れちゃったんだよね?」
「申し訳ございません。ルシファーと戦闘した際に壊れてしまいました。」
「そしたら、茶々丸と紅で新しい武器を作るってのはどうかな?」
「おお!面白そう!」
「ワン!」
「小手だと限界があったんだよね。今度はちゃんとした武器にしてあげたいんだけど、リンって格闘以外も大丈夫なの?」
「近接戦闘が得意ではありますが、剣なども使えます。」
「そっか。なら設計図は僕がちゃちゃっと作るから、紅と茶々丸で作ってみて。」
「そんな簡単に出来るんかぁ?」
「少しずつ作ればアルムストラに着くころには出来上がると思うよ。間に合いそうになかったら僕も手伝うしさ。」
そうして、旅路の休憩中や野営の時などに紅と茶々丸は、リンの専用武器を作ることになった。
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「みんな!街道に蟹がいるぞぉ!」
「マッドクラブですわね。」
「食べよう!」
「泥臭くて食べられないでありんしょう。」
「それにしてもでかい蟹だ。」
「茶々丸が小さく見えますわね。」
「道の邪魔になっていますね。食べるかどうかはさておき討伐しましょう。」
「うちがやる。」
藍がライフルを構え、魔力を溜めていく。
マッドクラブは口から泡を吹くだけで何もしてこない。
「『冷銃』」
藍の氷結弾は進化していた。氷の塊を射出するのではなく、冷凍ビームを発射できるようになっていた。
パキパキと音を立てながら、全身が凍り付いていくマッドクラブ。
自重に耐え切れなくなり粉々に崩れ落ちた。
「あぁー!蟹がぁ!」
紅が大きな口を開けて叫んだ。
「そんなに食べたかったら溶かせばいい。」
「そっかぁ!蟹の身は美味いんだぞ!」
ちょうどいい温度で氷を溶かしていく紅。
そして茶々丸に耳打ちをし、鉄でできた鍋を出現させた。
「藍。水をこの鍋にいれてくれぇ。」
「どうする気?」
「茹でガニだぁ!」
紅のクッキングのせいで強制的に休憩になってしまった。
巨大な鋏と足を鍋に入れ、鍋に着火した。
ルンルンと鼻歌交じりで煮えていく様子を見ている紅。
「フィル様はあれを召し上がるんでありんす?」
「魔物だけど蟹だよね?ちょっと挑戦してみようかな。」
「フィル~。絶対うまいぞぉ~。」
「紅もああ言ってるし、他の国では魔物の肉は高級品だって本にも書いてあったからね。」
「紅のいうことはあてになりんせんが、本に書いてあったなら一度は食べてもいいかもしれんせんね。」
「私は食べないわ。明らかに泥臭そうでしょ。」
「でも、なんだかいい匂いがしてきましたよ?」
「まさか、リン。あなた食べる気じゃないでしょうね?」
「フィル様が食べるのであれば、私もお供するまで。」
赤く茹で上がったマッドクラブの殻を剥き紅が頬張った。
「うまぁ~。」
「美味しそうに食べるね。じゃあ僕もちょっと。」
フィルは恐る恐るマッドクラブの身を頬張った。
「ん!これは美味しい!」
「だろうぉ?ただのでかい蟹なんだよぉ!みんなも食べてみぃ?」
紅に促されるようにリリィ以外はマッドクラブを食べた。
「意外にいけますね。」
「美味しいでありんす。」
「美味。」
「お腹壊しても知らないわよ。」
「リリィも食べろよぉ。」
「私は要らないわ。」
「好き嫌いは良くないぞぉ。こうやってみんなで食べてるときに一人だけ食べれないってのは空気悪くするぞぉ。」
「紅、あんた意外に辛辣なこと言うわね。」
「リリィは吸血鬼だから血を飲めばいいんだよ。」
「好き嫌いは人それぞれでありんす。強要することではありんせんよ。紅。」
「んじゃあ、上手い血を紹介してくれよぉ。」
「美味しい血ですか?もちろん、フィル様の血ですわ。」
みんな驚愕した。
「リリィ。フィル様の血を飲んでいるというのはどういうことですか。」
「フィル様!リリィに噛ませているでありんすか!?」
「リリィ、血なら教会にいくらでもある。」
「ちょっとくらいいいじゃない!必要以上に飲んでないし、フィル様の許可も得てるんだから。」
「フィルの血が美味いのかぁ。フィル、ちょっと噛ませろぉ。」
「紅は吸血鬼じゃないでしょ!」
「ちょちょ、やめて~。」
フィルたち一行は、お互いの親睦を深めながら先に進んでいった。




