第71話
第71話 呪術本の出所
フィルは、ミューラーの母親が露店で買ったと言っていた本に目を通していた。
その本はいかにも呪術が書いてありそうな代物であったが、内容を読むと重要な呪術の結果などが書いていなかった。
『呪術に必要な素材を用意して、嫌いな相手の家に設置しよう!』
などと書いてあり、信ぴょう性に欠ける代物であった。
しかし、先日の事件からして効力は絶大であり、遊び半分でこの本を広めるのは危険だと判断したフィルは、早速その露店を特定することをリンに命じた。
「フィル様、本の出所が判明いたしました。」
「やっぱり仕事が早いね、リンは!」
「いえいえ。フィル様のお役に立つことが私の仕事でありますから。」
「それで、出所はどこだった?」
「はい。母親のいう通り、アルムストラの救援物資の中に同じ本がありました。念のため在庫を調べすべて買い上げておきました。すでに売られたものは、リリィと藍、翠と紅に回収させております。」
「ありがとう。アルムストラに魔女がいるってのは、間違いなさそうだね。」
「はい。露店の商人に確認を取ったところ、本を作ったものは、アルムストラのヒューマンで所在地も判明しております。」
「わお。そこまでわかっていたら直接会いに行くべきだね。魔女なら魂を復元する黒魔術を知っていそうだし、もし知らなくても伝手があると思う。」
「魔女は身を隠すのが上手いと聞きますが、こんなにあっけなく見つかるものなのでしょうか。」
「まあ、十中八九偽の情報だと思うけど、アルムストラに呪術の手がかりがあるっていうことはわかったから行ってみよう。」
「かしこまりました。では、出立の準備に取り掛かります。」
―――――
「ガルフ兄様もこちらにいらしたんですね。」
「あぁ。今回もフィルに任せてしまって申し訳ない。」
「いいです。僕がやりたいことなんですから。」
二人は結晶に包まれたメルトとアルトの前にいた。
「それで何かわかったのか?」
「はい。呪術の出所はアルムストラであることが確実になりました。なので、一度、アルムストラに行ってみようと思っています。」
「そうか。二人の魂は、フィルの中にいるんだったな。」
「はい。かなり消耗しています。魂を復元させるために魔女の力を借りようと思いまして。」
「それしか方法がないんだな。」
「・・・。力不足で申し訳ありません。」
「いや、攻めているわけじゃない。心配しているだけだ。ルシファーとミカエルの戦いでフィルの力がこの世のものではないことはわかっている。しかしだ。あえて危険な地に行くというのは、どうしても心配になってしまってな。もし、フィルまでいなくなってしまうとなったとき、どうしたらいいかと考えてしまう。」
「大丈夫ですよ。なんて言っても僕は強いですから。」
「ははは。そうだな。私なんかよりもはるかに強い。しかし、サリープも私もフィルの無事をいつも願っているぞ。」
「ありがとうございます。必ず、メルト姉様とアルト兄様を元に戻す方法を見つけて戻ってきます。」
「あぁ。頼んだ。」
―――――
新しい王城の扉の前に、一台の馬車が止まっていた。
しかし、馬ではなく茶々丸が大きな勇ましい犬の姿になっており、荷車と繋がれていた。
その上には、紅が乗っており、荷台にはフィルと4人の従者が乗っていた。
「それでは、アルムストラまでの道のりを説明します。」
リンが、皆に話始めた。
「ケルンを出て、途中城壁都市バルカンを通り、以前ダンジョンが出現した森は、道が悪いので迂回します。森の外側を通り、山道を通り抜ければ聖王国アルムストラに着きます。全部で2週間程度を予定しています。」
「以外に近いんですわね。」
「はい。しかし、山道については、舗装されているとはいえ、落石や魔物が出現する場合もあります。そこで足止めを食らうと予定が崩れます。」
「山道以外に危険なところはありんすか?」
「以前ダンジョンが出現した森にも魔物がいますので、外側を迂回する場合ももしかしたら魔物が出てくるかもしれません。」
「うちらなら大丈夫。」
「そうでありんすね。大概の魔物は敵じゃありんせん。」
「そうですわ。蹴散らしてやりますわ。」
「途中、村などで補給することを想定していますので、余計な物資は積んでいませんので注意してください。」
「その時は、魔物でも食えばいい~。」
紅が茶々丸の上でのけ反りながら言った。
「それは出来ません。フィル様はヒューマンです。魔物の肉など食べさせるわけにはいきません。」
「フィルは魔物の肉食べないのかぁ?」
「うん、あんまり食べたくはないかな。」
「そうなのかぁ。美味い魔物もいるんだぞぉ。」
「機会があったら試してみるよ。あはは・・・。」
「では、出発いたしましょう。茶々丸お願いします。」
「ワン!」
リンの掛け声で茶々丸がゆっくりと歩きだした。




