第45話
第45話 傲慢の悪魔1
マルスは、身体が完治したのちに、フィルのところへ訪れていた。
「フィル様はいらっしゃいますか。私騎士団のマルス・エッガーランドと申します。」
「こんにちは!騎士団の方が僕に何か御用ですか?」
「フィル様、大変申し上げにくいことなのですが、元騎士団団長のジャック・ボーガン様が、悪魔憑きの疑いがあるので、どうかお調べになっていただきたいと思い参りました。」
「元団長が?何かの間違いではないんですか?」
「私も未だに信じられないのですが、手合わせしていただいたとき、気を失う寸前に瞳の色が黒く変わったのを見ました。ただ、意識が混濁していたといわれてしまえばそれまでなのですが、念のため確認していただきたく思い参ったところです。」
「なるほど・・・。申し訳ないのですが、今武器の制作が忙しくて僕が直接行くことはできないんですよ。なので、僕の従者を派遣しますね。」
「ありがとうございます。」
「翆と藍、お願いしてもいいかな?」
「承知したでありんす。」
「了解。」
―――――
マルスと翆と藍は、騎士団の訓練場に向かった。
その道中、マルスは翆と藍と雑談をしていた。
「マルス殿はどんな適性がありんすか?」
「僕ですか?水属性に適性があります。剣技に昇華できるほどではありませんが。」
「私と一緒だ。」
「藍様は、水の精霊ですよね。その恩恵を少しでも受けたいです。」
「能力は人に貸すものじゃありんせんよ。」
「翆様のおっしゃる通りでした。しかし、ヒューマンはあまりにも脆弱な生き物なので、とくに今回の一件でボーガン様にことごとく負けてしまいましたので・・・。」
「マルス、自信喪失。」
「あはは・・・。お恥ずかしい限りです。騎士団としてまだまだですね、僕は。」
そんな話をしている間に、ボーガンのいる訓練場に到着した。
すると、翆と藍が急に身構えた。
「お姉ちゃん・・・。」
「そうでありんすね。あれは大罪の悪魔でありんす。」
「やはり、ボーガン様は悪魔に憑りつかれているのですか!?」
「それもかなり強力な悪魔。」
「それとなく騎士たちを避難させてもらえるでありんすか?」
「わかりました。」
バタバタと戦闘不能になる騎士を医務室に運ぶふりをしてそれとなく、騎士たちをボーガンから遠ざけるマルス。
「対面して対話したほうがいいでありんすかね。」
「情報を聞き出すのも重要。」
騎士が全員いなくなったところで、ボーガンが言った。
「貴様、マルスと言ったな。戦いもしないで怪我人の心配をしている場合か。お前は騎士だろ。今すぐそこの木刀を持って打ち込んで来い。」
「ちょっと待つでありんす。」
「あなたはダンジョンを踏破していただいた、フィル様の従者様ではないですか。どうしてこちらに?」
「白々しいでありんすね。わっちたちは悪魔を見分ける術を持っているでありんす。本性を現したらどうでありんすか?」
「悪魔だってことはわかってる。」
「私が悪魔憑きだと?あはは!何を言うかと思ったらご冗談を!」
「冗談ではありんせん。ボーガン様には申し訳ないでありんすが、悪魔を祓わせていただくでありんす。」
「悪魔憑きになってしまったら、命の保証はない。冗談でなければ、この身を守るため貴殿たちと戦うことになる。よろしいか?」
「この人、悪魔に憑りつかれている自覚がないみたい。」
「そうでありんすね。やりづらいでありんす。」
ボーガンは、自分が悪魔に憑りつかれているとは思っていない。
しかし、傲慢の悪魔は、ボーガンに憑りついている。理由はわからないが傲慢の悪魔はその姿を現さない。
マルスが割込みボーガンに呼びかけた。
「ボーガン様!あなたの騎士としての正義感は悪魔ごときに負けるようなものじゃないはずです。どうか、払いのけてください!」
「何を言っている!騎士である以上、力なくして何も守ることはできない。ゆえに、すべてをなぎ倒す力を得るために日々精進するのではないか!その力のない者は強者の踏み台になるしかないということがなぜ理解できない!」
「元騎士団長の言葉とは思えないでありんす。」
「最低・・・。」
「我が騎士道を馬鹿にするのもいい加減にしてもらいたい。」
「騎士道ならもっと紳士的なことをいうと思いんすけど。」
「ただの弱い者いじめ。」
「なんだと!そこらの愚者と一緒にするな!」
そう叫んだボーガンの身体から真っ黒のオーラは噴き出した。
ボーガンは携えていた水星剣アクアリウゼムを抜き、翆と藍に向けた。




