第39話
第39話 憤怒の悪魔2
「なんだか、火山の方が騒がしいですね。」
リンは、山頂を見ながら言った。
地鳴りと共に眩い光が山頂で弾けた。そして、収束し、禍々しいオーラが噴火でもしたかのように溢れ出ていた。
「悪魔の仕業でしょうね。しかし、山頂まで行くのは面倒ですね。さっさと降りてこないでしょうか。」
と言いつつも、準備を始めるリン。
いつものスーツを着用し、手にはパイルバンカーを装備している。
「さて、悪魔狩りと行きましょうか。」
―――――
火口付近で、憤怒の悪魔は、紅を取り込み姿を変えていた。
赤い身体に炎の羽衣をまとい、筋肉がはち切れんばかりに、隆起していた。
新しい身体を確かめるように動かし、手を開いたり閉じたりしている。その拳からは握るたびに炎が噴き出し、灼熱地獄から出てきた真の悪魔のような姿だった。
「四大精霊を取り込んだ大罪の悪魔か・・・。ふはははは。なんとも素晴らしい力だ!みなぎるぞ!」
大声を上げ歓喜している憤怒の悪魔に水を差すようにリンが現れた。
「どうやらあなたがこの臭い瘴気を出している本人ですね。」
鼻をつまみながら、臭い素振りを見せるリン。
「ははは。新手か!今の俺は精霊を取り込み最強となった!すぐに死んでくれるなよ!」
「所詮、悪魔ですよ。私はその上位種の魔人。あなたが勝つ要素はありません。」
「さぁ。それはどうかな?この筋肉こそが答えだ!」
「は?何を言っているんでしょうか。やれやれ。脳みそまで筋肉で出来ているようですね。」
「良いから黙って俺の拳を受けてみろ!炎の魔人拳!」
燃え上がった拳を突き出し、放った拳型をした炎の塊が、リンを襲う。
「やめてもらえませんか?スーツが汚れるので。」
と、リンが構え迎え撃つ。
「『真の魔人拳』」
構えから繰り出された正拳突きは、炎の塊を吹き飛ばした。
「ほう。さすが魔人と言ったところか。楽しくなってきたぞ!さあ、拳で語らおうじゃないか。」
「とんでもないむさ苦しい悪魔ですね。」
と、リンが言った瞬間。憤怒の悪魔は、リンの懐に飛び込み強烈なアッパーを繰り出した。
「『炎の魔人拳』」
リンは身体をのけ反らせ攻撃を避けた。アッパーは空を切ったが灼熱の炎が上空へ舞い上がり、噴火しているように見えた。
「話してる途中に攻撃してくるなんて、やはり悪魔は卑怯ですね。」
「このパワーを一刻も早く直撃させたくてな!どうなるか楽しみでしょうがない!」
「当てられたらいいですね。」
興味のなさそうなリンは、「付き合っていられない」といった顔をしている。
そんななか、憤怒の悪魔は近接戦闘でその拳を振るってくる。
リンは、紙一重で躱している。まさにインファイトボクシングのようである。
ヘビー級対フェザー級の戦いを見ているかのような体格差であるが、リンには全く攻撃が当たらない。
「ちょこまかと避けているだけか!これならどうだ!炎の魔人拳!」
繰り出したパンチは、リンの顔面に迫った。リンは左右に身体を動かしサッと避けた。
しかし、その拳はリンの顔面を捕らえた。
「ははは!見たか!必中の拳!」
炎がリンの背後にほとばしり、衝撃波と共に大地が揺れた。
だが、リンは吹き飛ばない。そう、リンは拳が着弾する前に一歩前に踏み出し、その拳の勢いを殺し額で受け止めていた。額からは血が流れ落ちていた。
「悪くないパンチです。でも、その曲がるパンチじゃ威力が落ちてしまいますよ?」
リンは憤怒の悪魔の能力を見抜いていた。憤怒の悪魔から繰り出されるパンチは相手を追尾するように曲がる。避けたつもりでも追尾される代物だ。勢いを殺さないために追尾力は格段に下げているが、威力が上がっているため、掠るだけでも大きなダメージを受けてしまう。
そんな憤怒の悪魔のパンチを額で受け止め、平然と立っているリンに対して憤怒の悪魔が、怒りをあらわにする。
「そこまで言うのであれば、貴様のパンチと俺のパンチ、どちらが強いか勝負だ!」
「いや、今、もうあなたのパンチ、防いだじゃないですか。終わりですよ。」
「ははは。本気だと思うか?」
「はい。思います。今のが全力だと思います。」
「ふざけるな!50%も出していない!」
「あぁ。そうですか。なら次は私の番ですね。面倒なので避けないでください。」
そういうと、リンは構え、踏み込みと同時に一撃を繰り出した。
「『真の魔人拳』」
その拳は、憤怒の悪魔のみぞおちにクリーンヒットした。衝撃は身体を貫き背中から衝撃波となって辺りを吹き飛ばした。
「ぐは!・・・。ふ、ふ、ふははははははは!なんだその攻撃は!魔人の攻撃はそんなものか!」
『な、なんて威力だっ!これが悪魔と魔人の種族の差なのか!?』
「めちゃめちゃ効いているじゃないですか。ぐはって言ってましたし。」
「ははは。何を言っている!その爪楊枝のような細い腕から繰り出される拳など火山に水鉄砲を飛ばすようなものだ!」
「例えも下手ですね。ちょっと何を言っているかわかりません。付き合いきれないので死んでもらえますか?」
「何、これからじゃないか!俺の真骨頂。『痛みの蓄積』の見せ所は!」
前かがみの姿勢になり、力を蓄えた憤怒の悪魔の背中から大きな試験管のようなものが6つ飛び出した。その中の1つは色鮮やかな赤色をした液体が入っていた。
「ダメージを力に変える能力だ!お前がいくら魔人と言えども、その攻撃を耐え、我が力に変えてしまえばどうってことでもない!」
「もうすでに一つが満タンになってますけど。もしかして、一発で1/6埋まってしまったのですか?」
「ははは。さてどうかな?さあ始めようか。次のラウンドを!」
ファイティングポーズをお互いにして、見合った二人。
憤怒の悪魔の追尾する必中パンチとやせ我慢を力に変える能力でリンは追いつめられることとなる。




