第35話
第35話 怠惰の悪魔2
「なんで効かないのかしら。」
「あぁ。怠い。」
「これくらいの悪魔に後れを取っていたら、最強の名折れですわ。」
と、気合いを入れなおすリリィ。
自分の手首を切り裂き、空中へぶちまけた。
霧状になった血のなかで戦う両者。
怠惰の悪魔の体から煙が上がっている。
「あぁ。なんて怠いんだ。」
「神聖化された血を浴びる気分はどう?」
「面倒だ。」
聖水と化したリリィの血を浴びながらも、攻撃を辞めない怠惰の悪魔。
その攻撃は、リリィが辛うじて大鎌で受けきっているが、目で追うことは出来ない。いや、目で追うこと自体は容易に出来ている。なぜなら、攻撃の動作が非常にゆっくりだからだ。
この違和感についてリリィは困惑していた。
『なぜこんなにゆっくりな動きなのにこの速度の攻撃が出来るんですの?』
呼び動作にも似た動きだからこそ攻撃の先を読み防ぐことができている。
その時だった。
「『屑の本懐』」
怠惰の悪魔の高速の手刀がリリィの胸を貫いた。
リリィの胸にはぽっかりと穴が開き、大量の血を噴き出した。
「あら。」
しかし、リリィは平然としている。
攻撃した怠惰の悪魔の手が焼けただれ、痛々しいことになっていた。
「不死か。怠いな。」
「心臓を貫かれても死なないだけですわ。」
「それってかなり怠い。」
リリィはしゃべり続ける。
「あなたの能力は何なのかしら?教えてもらえるかしら?」
「しゃべるのが怠い。」
「・・・。私まで面倒になってきましたわ。」
『時間停止』が効いていない以上違う手を使うこととしたリリィ。
「『時間遅延』」
辺りの時間の流れがゆっくりとなる。
怠惰の悪魔の攻撃速度は変わらない。時間の流れに関係なく攻撃を繰り出している。
「『時間加速』」
今度は周囲の時間の流れが速くなった。
すると、怠惰の悪魔の攻撃も先ほどより早くなった。これにリリィはピンときた。
「あなた怠惰の割にめちゃめちゃ早く動いているだけじゃないの?」
「あぁ。どうだろう。」
怠惰の悪魔の能力は、超高速で動くことであった。早すぎる動きのためゆっくりに見えていた。そしてその逆もしかり、ゆっくり過ぎて早くも見えていた。要するに残像を残すほどの超高速と緩急の応用でリリィを翻弄していたのであった。
「だからって急には対処できる速さではないですわね。」
防戦一方のリリィに対して、圧倒的速度と手数で攻撃をしてくる怠惰の悪魔。
時折混ぜ込んでくる不可避の一撃は、リリィを捉え確実にダメージを与えてくる。
リリィは吸血鬼であり、不死であるが、その再生速度よりも早く攻撃してくる怠惰の悪魔。
「私の攻撃がことごとく避けられてしまいますわ。」
「まだ死なないの?怠いよ。」
「大鎌は隙がありますわね。なかなか扱いが難しい武器ですわ。」
としゃべる余裕がまだリリィにはある。
怠惰の悪魔は空虚な目でただひたすらに攻撃をしてくる。
大量の血を滲ませながら、なんとか攻撃をいなしているリリィが動いた。
「これくらいの血があればあなたも死ぬのではありません?」
怠惰の悪魔の全方位に血で出来た針が浮かんでいた。
その血の針は余すことなく怠惰の悪魔に突き刺さった。
「『血の聖槍』」
連射された針は怠惰の悪魔を貫き続ける。砂埃が上がり、辺り一面に小さな穴が広がった。
「痛いなぁ。」
「今のも避けられてしまうんですの・・・。いや、当たっていますわね。」
「全範囲攻撃は怠いよ。」
「うん?あなた、立っている位置が変わっていますわね。」
「それは避けたからだよ。」
「いや、血の着弾位置からかなりずれていますわ。もしかして、高速移動以外に短い距離を瞬間移動できるんじゃありません?」
「洞察力いいね。怠いけどすごいよ。」
と怠惰の悪魔は、瞬時にリリィの背後を取り、またも心臓を貫いた。
「『屑の本懐』」
リリィは、不死である。しかし、その上限が決まっている。命は8つ。二回も心臓を潰されているので、残り6回で死んでしまう。
「もうそろそろ倒さないと余裕がなくなってしまいますわ。」
「倒す?怠いこと言わないでくれる?」




