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【2025年7月30日完結!】天界の司書、転生したら最強でした!  作者: 愛猫私


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第304話

第304話 親善試合 ガルフVSヴィヴィ1



 マルスとヴィネスの戦いの熱が冷めやらぬ中、次の試合が始まる。


 「続いては、第二試合。元第二騎士団長ガルフ・バン・アドレニス対鞭刑の処刑人ヴィヴィ!!」

 「どうも、ヒューマン。私は鞭刑の処刑人ヴィヴィ。竜谷で悪行を行った者を鞭打ちの刑に処する執行人。よろしく。」

 「これはご丁寧に。私はガルフ・バン・アドレニス。元アドレニス王国第二騎士団長だ。よろしく頼む。」

 「これは処刑じゃないけど、私が処刑しかできない。だから、手加減できない。」

 「それは望むところだ。私も手を抜いてもらいたくはない。」

 

 ビリビリとした空気が会場を包み込み、マルスとヴィネスが作った熱を帯びた空気が、冷え切り始めた。

 

 「イグニコルアス!私の勇姿をその目でしかと見とどけてくれ!」

 『は!?何言ってんねん!どうみても格上の相手やろ!ガルフ一人でどうにかできる相手ちゃうぞ!』

 「そんなことはこの際どうでもいい!私がいかにイグニコルアスの器としてふさわしいか見て頂きたい!」

 『そ、それってどういう・・・。』

 

 イグニコルアスが意味深なことをいうガルフに戸惑っている間に開始のゴングが鳴らされた。


 「では、試合開始!」

 

 最初に動いたのはヴィヴィだった。片手に持っていた鞭を振るい中距離を完全に無視して、ガルフを叩いた。『パーン』と乾いた弾ける音が響く。しかし、その軌道上にガルフはいない。

 

 「その鞭というのは少し隙があるようだな。」

 

 鞭の最高速度は、鞭によってはマッハ2に達すると言われており、高速運動によって、鞭の先端が空気中で衝撃波を発生させる。しかし、その初動は、ヴィヴィが握っている柄の部分であり、ガルフはヴィヴィが鞭を振るう瞬間にすでに移動を始めていた。

 そもそも鞭は動いているものを狙うのにも相当の熟練度が必要である。ガルフはさらにその先を行く。中距離タイプでかつ、静止しているものであればヴィヴィは正確に打ち抜くことが出来る。しかし、ガルフは武器の特徴を一瞬で捉え、距離を縮めた。

 ガルフの魔剣がヴィヴィを襲う。

 しかし、『毒の鳥竜(ヴァイパー・ラプトル)』の血を引くヴィヴィは、華麗にその斬撃を避ける。そして、空中から鞭を振り、そのインパクトをガルフ目掛けて狙う。

 軌道の読めない鞭の動きはどこで、インパクトが生じるか判断がつかない。ガルフは常に動き続け、攻撃を避ける。

 

 「意外にすばしっこい。」

 「鎧を着ていても、これだけの機動力を身につけることはできる。」

 「じゃあ、これは?」

 

 ヴィヴィは鞭を振るいガルフを狙った。明らかにわかりやすい軌道。ガルフは問題なくそれを躱した。「パーン」と弾けた音が聞こえた瞬間、衝撃波と共に何かの液体が飛び散った。

 ガルフは衝撃波で吹き飛び、そして、その液体を浴びてしまった。

 

 「『毒酸の(アシッド・ウィップ)』」

 

 ガルフは、今までにないほどの鞭の衝撃で離れた位置でも吹き飛ばされた。そしてさらなる追撃の謎の液体を浴びた。飛び散った液体は、ガルフの鎧を溶かし始めていた。

 『毒酸の(アシッド・ウィップ)』は、鞭の衝撃をさらに強化させ、先端で小さい爆発といってもいいほどの衝撃波を発生させて、さらには、ものを溶かす液体をまき散らす凶悪な攻撃だった。

 

 「参ったな・・・。」

 「それは降参って意味?」

 「いやいや、鎧を壊されるのは困る。これは、アドレニス王国があった証のようなものだ。そして、私が、王族であることを証明するものだ。」

 「もうあなたたちの故郷は無いのでしょ?いつまでもしがみついてるのは潔くない。」

 「そうだ。もう跡形もない。だが、この竜谷が私にとっての次の故郷としたい。」

 「なんで。」

 「イグニコルアスがいるからだ。彼女が見る景色や経験する全てを共に過ごしたい。」

 「はぁ!?」

 

―――――

 

 『はぁ!?ガルフは何言ってんねん!!』

 『これは、何を見せられているんだ。』

 『・・・。ヒューマンなりの求婚か?』

 

―――――


 「何にも知らないのにそんなに急に距離縮めてこられても、すっごく気持ち悪いんだけど。」

 「私とイグニコルアスの面識は、そこまで深くない。しかし、魔剣を携えたときからこの場所この瞬間に繋がれ出会う運命。」


―――――


 『イグニコルアス。ガルフはああ言っているがどうなのだ?』

 『あほちゃうか!あんな堂々と公の場であんなこと言って・・・。』

 『・・・。満更でもない様子。興味深いな。』

 『茶化すなや!ガルフは本気なんや!』


―――――


 「もう私の故郷は存在しない。ゆえに王の剣としての私の意義は無くなった。しかし、これからはイグニコルアスの剣となり、ともに生きていく所存。」

 「神龍様たちは、わたしたちでも届かない存在。ヒューマンが踏み入れていい領域じゃない。」

 「そんなことは私には関係ない!領地を越え、種族を越え、全てを超越することそれが、今の私の意義だ。だからこそ、イグニコルアスは私のものだ!」

 『・・・どきっ!』

 

 イグニコルアスの胸にガルフの言葉が突き刺さった。

 そして、ガルフもまたそれを体現するかのように、莫大な闘気を纏い始めた。

 

 「さすがに、いかれたストーカーを神龍様に近づけるわけにはいかない。」

 「この短いヒューマンの一生。イグニコルアスに懸けると誓った。ゆえに最後まで錆びることなくイグニコルアスの剣の刀身としてあり続ける!『列炎龍の(ドラゴン・ブレイド)』!」

 

 愛に燃えた男の本気が会場を埋め尽くす。



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