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第3話

第3話 魔術の才


転生してから6年が経とうとしたある日。

 フィルはいつも通り図書室で読書をしていた。

 「え?精霊いなくてもこの子めっちゃ強くね?」

 「フィル様、読書は寝ながらするものではありませんよ。」

 眼鏡をくいっと上げミレンが言った。

 「もう、今日の勉強は終わらせたんだからだらだらさせてよ~」

 「行儀のお話をしているのですよ。ほら、こちらに。」

 ちょこんと椅子に座らされたフィルが不服そうな顔をしていると、

 「フィル様ももう少しで、王国の魔術学校へ入学されるお年ですね。」

 「魔術学校ね。やっぱり学校ってことは図書室があるんだよね?」

 「そうですね。こことは違い学術書とかが多いでしょうけど。」

 「物語系はないのかぁ。行く気なくなるな。」

 「あくまでも、勉学に励む場所ですから」

 ミレンが呆れていると、フィルが急に立ち上がりミレンに言った。

 「厄介な奴が来た。ミレン、また読みに来るからまたね。」

 「あ、はい。」

 不思議そうな顔をして見送るミレンをよそに、フィルは急いで図書館をあとにした。

 


王宮の玄関口に、一人の男が立っていた。

衛兵たちが槍や剣などで取り囲み、様子をうかがっている。

「貴様!何者だ!その風貌、スラムのヒューマンが王宮へ何用だ!」

「あっががががががが。」

その男はボロボロの服を着ており、顔面蒼白、口からは泡を吹き、歯をがちがちと嚙み合わせていた。

「まさか!悪魔憑きか!すぐに殺せ!宮殿内に絶対入れてはならん!」

衛兵が一斉に切りかかった。

「あがががが!」

しかし、黒いオーラにより吹き飛ばされてしまった。

「上位の悪魔憑きか。恐怖に取りつかれるな!」

すでに何人かが震えており、戦意を喪失していた。

「このままでは、宮殿に入ってしまうぞ。増援は!」

「はい!僕が来ました!」

「フィ、フィル王子!?」

「ここは僕に任せてください!魔術の才に恵まれたこの僕に!」

そういうと、いくつもの火球がやせ細った男へ着弾し燃やし尽くした。

「う~ん。魔人の類じゃなくて悪魔か。やっぱり厄介だ。」

 肉体のない悪魔は、憑代になる肉体に憑依しているだけなので、憑代を燃やしても悪魔自体は倒せない。魔術の才があると自信満々に言ったが、悪魔自体はピンピンしている。

 「馬鹿な、ガキめ!憑代を燃やして殺したのはお前だよ!」

 「どうせ、もう死んでただろ。死体に憑依するしかできない低位の悪魔に僕がやられると?」

 「ヒューマンのガキ風情が!悪魔より闇魔法に長けてるものがいないってことを教えてやる!『闇玉(レイス)』」

 「効かないよ?」

 フィルの周りに展開されたバリアのようなもので、悪魔の魔法は打ち消された。

 「闇魔法には光魔法で中和できるって知らない?しかも、『闇玉(レイス)』って威力が取り柄の下位魔法じゃん」

 「ふざけるな!そんなに上位の魔法が見たければ見せてやるよ。『闇黒砲(あんこくほう)』!!!」

 小さなブラックホールと言っていいエネルギーの塊は、フィルへ一直線に飛んできた。

 「単一の上位魔法同士をぶつけたらここら辺吹き飛んじゃうよね。中和しないと『閃光砲』」

 フィルが放ったのは、単一の光魔法の上位魔法の閃光砲。それも全くの同エネルギーのものだった。

 お互いの魔法は、お互いを打ち消し合い何もなく消えた。

 「は?」

 「同じエネルギーの魔法同士をぶつけると、爆発すると思った?ちゃんと勉強したほうがいいよ。何度やっても同じことの繰り返しだから、こっちから行くね。」


 

 フィルの前に突如魔法陣が出現した。

 「二次元構造から三次元構造へ。そして、さらに時間を加え、四次元構造へ昇華。あとで魔法陣による魔術のおさらいしておかないとね!あ、君は死ぬんだけどね。」

 「なんだよ、その魔法陣は・・・。」

 「え~と。属性は火と地と光と陽の上位魔法を媒体に、時間は1秒ってところかな。あれ?これ放って大丈夫かな?」

 「おい!やめろ!見ればわかる!そんな高密度の魔力を詰め込んだ魔法陣を発動させたらここら一帯が消し飛ぶぞ。」

 「実践したことないからちょっと保険で、結界を・・・。三重くらいかな。」

 「見逃してくれ。そんな魔法を生身で受けたら消えちまう!」

 「悪魔は地獄に帰るだけでしょ。死なないよ、多分。」

 出現した魔法陣から、光の筋が放たれた。

 「あ、やばいかも。三重じゃ全然足りないや。」

 光の筋は悪魔に照射された。時間にして設定した1秒とはいかず、フィルが途中で中止したので、実質0.02秒。さらには、三重にしていた結界を計18枚に増やしたが、ガラスに鉄球を当てるように粉々に貫いた。

 軌道を上空へ行くように斜めにしていたことから、辺りには被害はでなかった。

しかし、雲は消失し、大気に穴が開き、空が割れていた。文字どおり空という空間が割れていたのだ。

 何が起こったのか理解するのに時間のかかる衛兵たち。しかし、空が割れているのをみて驚愕した。

「どうなってるんだ。悪魔はどこに?」

「これはやりすぎたな。悪魔の魔力も感じないし、消えちゃった。それにしてもこの空元に戻るのかな?」



「号外!号外だよ!フィル王子!悪魔憑きを一人で撃退!~」

フィルの活躍は瞬く間に世に知れ渡った。割れた空は丸一日かけゆっくりと修復していったという。



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― 新着の感想 ―
[良い点] わっはっはっ。やってしまいましたね。 号外が出ちゃいましたね。こりゃ騒がれちゃうぞ〜(笑
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