第251話
第251話 ゴーレムVS結晶体1
機能停止をしたボロボロのエヴァは、完全に沈黙してしまった。
ニニンが与えた巻物を呼んだ瞬間、秘術はエヴァの動力源を使い発動してしまっていた。
電雷鉱を原動力とするエヴァが、機能停止するほどのエネルギーが魔力へと変換され、秘術を発動させる結果となったが、立ち尽くすエヴァは、活動を始めない。
『秘術:水晶化粧』は、ニニンが持っていた最上級の土属性の魔法であった。
エヴァは動かないが、ボロボロの金属の体が、ちょっとずつ結晶化していく。この結晶は、魔石のように魔力を帯びているものであった。だからこそ、再起動まで時間がかかってしまった。
無防備な所をゴーレムに殴打されるエヴァ。
しかし、びくともしない。肩や胸、脛や手の甲など鎧で隠す部分がすべて透明な結晶に変わっていく。ボロボロだった金属が煌めく結晶となり、エヴァを包んでいく。
「動力補填完了。再起動します。」
ぼやけた視界が明瞭になった。
電雷鉱をエネルギーにしていたエヴァが、自分を構成する結晶から発せられる魔力で再起動することができた。
「これが『秘術:水晶化粧』」
今のエヴァにどういう原理で動いているかなどどうでもよかった。
必要なのは目の前で自分を殴打してくるゴーレムどう倒すか。エヴァを覆う結晶は、ゴーレムの岩石よりも遥かに硬く、ゴーレムの岩石が砕けてしまっていた。
自分の電雷鉱が全く機能していないことに気が付いた。ゴーレムの攻撃を無視しながら胸のコアが入っているところ開け、中から電雷鉱を取り出した。その電雷鉱は使い潰され、手に取った瞬間砂になってしまった。
「全エネルギーがこの術を発動するために利用されてしまったわけですね。」
「がん!」とエヴァが殴打するゴーレムの拳を抑えた。
ゴーレムは岩石をぴくりとも動かせない。ゴーレム自体は岩石の塊だ。問題なのは、フィルが作り上げた魔石であることだ。ゴーレムの攻撃力よりもエヴァの防御力が上回ったとて、フィルの作った魔石を破壊できなければ、この戦いの勝利とは言えない。
エヴァは試しに、魔石を殴ってみた。
やはり傷一つつけることはできなかった。さらに電雷鉱がなくなってしまったため、電気の形質変化を利用することができなくなってしまっていた。
エヴァの得意とする電気の技が使えず、防御力だけが増大している状態だった。
エヴァは自分に起こっていることを分析する時間を必要とせざるを得なかった。
戦いの最中、わかったことがいくつかあった。
この体を覆う結晶は、魔力の発生源であり、それを利用してエヴァ自身が動いている状態だという事。エヴァは魔力を電気に変える機関を持っているので、疑似的に電力を発生させることができる。
その電気は、攻撃に利用できるほどではなく、自身の機械を部分を制御するのに使える程度だった。
「解析優先ですか・・・。そんなことしている場合ではないというのに。」
戦う時間が長引けば、ピポナッチとニニンを回復させるのが遅くなってしまう。
そんななか、自身の活動限界を示す数値があり得ない数字になっていることに気が付いた。
「こんなことが!?」
電雷鉱の数千倍の魔力の含有量を示しており、これを攻撃に転じさせることができれば、ゴーレムの魔石も破壊できるのではないかと考えついた。
しかし、エヴァが考えつく魔法を行使しても破壊には至らない計算が算出されるばかりであった。
「魔人族のデータベースの魔法では、到底破壊できませんか。ならば、回復を優先させていただきます。」
エヴァは、ゴーレムから降り、ピポナッチとニニンの方へ向かった。
移動速度は、電雷鉱を利用した量産型エヴァよりも遅いが、ゴーレムよりは早かった。
ニニンを担ぎ上げるとピポナッチのところへ向かった。
「このまま戦線を離脱することも選択肢にありますが、今は回復が優先ですね。『超回復領域』」
底知れない魔力がニニンとピポナッチを回復させる。
2人の自壊した体が徐々に回復していく。ニニンは老婆のような姿が元のニニンの姿に戻っていく。
ズシンズシンとゴーレムが近づいてくるのが分かるが、この状況下で回復を止めるわけにはいかない。
全快させるには時間が足りないが、最悪な事態からは脱出できる程度まで回復させることが出来そうだ。そう計算しているエヴァは次にゴーレムの攻略を思案し始めた。
「危険な状態からは脱することは出来ましたが、さて、目的はこのゴーレムの破壊です。」
自分が特殊な状態に陥ったこともあり、どのように力を行使すれば倒せるのかを考えるエヴァは、なぜニニンがこの秘術を渡したのかを考えた。
さんざん言っていた、状態異常でのサポートの不調和。さらにニニンの隠し玉が雷の形質変化。
「これでは、住み分けが全くできないではありませんか・・・。」
しかしながら、ニニンはピポナッチを違う方面でサポートすると言っていた。
それは、エヴァに対しても同じことが言える。最終局面でエヴァと同じような力を発揮したニニンは、エヴァに違う方面からのサポートを願った上でのこの土の形質変化による結晶化なのだと。
「ニニン様の思惑どおりなのかもしれませんが、フィル様の作った魔石は神の領域に踏み込んだものでしか破壊できない代物です。そういったことを信じていない私には、機械的なことしかできませんよ。」
ゴーレムの攻撃が着弾する直前、回復作業を中断し二人を抱え離れた場所に二人を寝かせ、ゴーレムと対峙した。
「クリスタル・エヴァが出来る最高峰の攻撃は・・・。」




