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【2025年7月30日完結!】天界の司書、転生したら最強でした!  作者: 愛猫私


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第213話

第213話 都の船



 天魔神ライズと天魔神チラスが現れた、都アルムストラと都アドレニスは見るも無残な瓦礫の山と溶岩と濁流の流れる地獄になり、跡形もなくなっていた。

 残っていたのは、洪水や溶岩に耐える魔国特製の船だけであった。

 

 都を守るために船の外を守っていた冒険者や兵士たちは、天魔神の姿を見てから自分たちの卑小さを痛感していた。

 

 「この世の終わりだ・・・。」

 「あんなものどうやって倒すんだ・・・。」

 

 流れ来る溶岩に飲み込まれていく冒険者や兵士たちも少なくない。

 逃げるように船に乗り込もうとするが、入り口を閉めなければ、多くの避難者に犠牲が出てしまう。

 船は、天魔神の動向を確認するよりもまえに、扉を閉め始めた。


 「おい!待ってくれ!俺も乗せてくれ!」

 「邪魔だ!先に行かせろ!」

 「まだ人数的な余裕はあるはずだろ!」

 

 命の危機から脱出するために冒険者や兵士たちは、混乱の渦に身を投じた。

 ひっきりなしに走り込み、持ち上がり閉じようとしている桟橋と扉に群がる者たち。

 そのすぐ下には、溶岩が流れ込み、落ちれば即死。

 しかし、他人のことなど考えている余裕はなかった。上からは巨大な岩石が飛来し、押しつぶされる者もいた。

 洪水は、何もかもを洗い流し、濁流が飲み込んだものを切り裂き彼方へと運んでいく。

 

 そんななか、ガルフたち都アドレニスの船に乗っていた騎士団長たちは、甲板のうえにいた。

 豪雨のなか、天魔神チラスの暴風をまとった拳を魔剣で切り裂き、船を守っていた。

 だが、地上の一兵士では、なんの力にもならない。

 吹き飛ばされ、叩きつけられ、びしょ濡れになり、なすすべなく転げまわっていた。

 

 「この大規模な攻撃に有効打はありません!ガルフ様!」

 「しかし、船体にダメージを与えられてしまえば、元も子もないぞ!」

 「ガルフ。ここは、一旦引こう。」

 「ユーア殿まで・・・。」

 「その判断を推奨します。船体に複数の冒険者と兵士が乗り込み混乱している状態です。騎士団長の統率力が必要と判断します。」


 甲板の上で一緒に戦っていた量産型エヴァが言った。


 「・・・そうか。マルス!ユーア殿!撤退だ!」

 

 ガルフは、甲板に設置された頑丈な扉から船体へ戻っていった。

 

 量産型エヴァは、絶えず状況を確認し、有効打を計算している。

 しかし、この天魔神たちの計り知れない広範囲の攻撃に、全体像を掴むことすらできていなかった。

 

 現状、天魔神ライズにより、都アルムストラが壊滅し、大量の溶岩が流れだし辺りを焼き尽くしながら広がっている情報と、天魔神チラスにより、都アドレニスは、大洪水で建物は破壊しつくされ、こちらも壊滅状態であるという情報が共有されていた。

 

 そして、その二つの都の境界線で溶岩と洪水がぶつかり、大量の蒸気を上げ、どんどんと地形を変化させていることも、共有されていた。

 この天変地異に対して、量産型エヴァでは太刀打ちができない。天変地異の副産物である、飛来する岩石や雹などから船体を守ることがやっとであった。

 

 戦況は、翠と藍が天魔神たちの相手をしているが、気象状態の変動が大きすぎるため、量産型エヴァでは、どういう状況になっているか把握することは困難だった。

 他の船にいる量産型エヴァに共有する情報は、残酷なものになっていた。

 フィルたちの故郷は、破壊され、同盟国も完全に溶岩に飲み込まれていた。

 

 その情報を各船へと共有する量産型エヴァたち。

 見たままを報告すれば、ここは地獄であった。しかし、天魔神はあと2体もいる。

 その情報がいまだに来ないのが不気味であり、もしかするとすでに船は破壊されてしまっているのではないかと、船体の中にいる人々は感じていた。

 

 「大丈夫だ!この脅威。我が弟、フィル・バン・アドレニスとその従者たちが必ずや突破してくれる!」

 

 声を上げたのは、サリープだった。王としての肩書は今ではもうなくなっているが、一人の先導者として、混乱する民を一喝し、静まらせることができた。

 恐怖とは伝染するもの。しかし、その恐怖に打ち勝つために、大陸を一つの国として立ち上げ、団結すると決めた。国民たちもそう。おびえるだけではなく、生き残るための準備をしてきた。

 各々が混乱する冒険者や兵士たちを優しく毛布で包み込む。しかし、最前線で命を落とす覚悟ができていたとはいえ、恐怖により逃げてしまうのは理解できる。さらには、船の外側では、屈強な精神を持つ戦士たちでも逃げ出すほどの地獄が広がっていると思うと、怖気が止まらない。

 いつこの船が破壊され、命がなくなるかわからない緊張状態が続いていた。

 

 再び、恐怖が蔓延し始めたときにそれは起きた。

 船の中にいたすべてのものが、動かなくなり、行動が停止した。

 それは、量産型エヴァも例外ではなく。すべての意識のあるものが停止した。

 

 都アルムストラと都アドレニスを蹂躙し、破壊の限りを尽くしている天魔神ライズと天魔神チラスと戦っている、翠と藍が苦戦している中、フィニアと魔国にも天魔神の大規模な攻撃が行われた。

 

しかも、魔国に解き放たれた天魔神フィアは、大陸全土を飲み込んでいった。



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