第21話
第21話 王都帰還
ダンジョン攻略やバルカンの守備についていた騎士たちやバルカンに残された教会の聖職者たちが、城下町のケルンについた。
街を上げてのお祝いムードではなく、悪魔の大量発生は早馬を飛ばし王宮へと知らされていた。
その一報は、不安を煽り、その恐怖は市民たちにも広がり、活気がなくなっていた。
「とりあえず、私はメルトとアルトの件もありますので、教会の聖職者たちを教会まで送り届けます。」
ガルフが言った。
「わかった。私とユーアは先に王宮へ報告しに行っている。のちほど合流しよう。」
「わかりました。では。」
頭を下げ騎士団を乗せた馬車から降りたガルフ。
「王宮への報告は騎士団長に任せて私たちは、フィル様のところへ戻りたいと思いますわ。」
「学園にいるでありんしょう。ここで降ろしていただくでありんす。」
「ああ。今回は本当に助かった。改めて礼を言う。」
「また何かあればお手伝いいたしますわ。」
「それは心強い。その際は、よろしく頼む。」
「承知いたしましたわ。」
―――――
ガルフは、教会の聖職者の残りを連れ足早に、教会へ向かった。
教会の前には、衛兵が門番をしていた。
「フェデルブルク教会の聖職者の生き残りを連れてきた。中に通してもらえるか?」
「これはガルフ様直々、ご足労いただきありがとうございます。どうぞ、中へ。」
教会の内部は、ステンドグラスの眩い光で照らされ、神聖な空気が漂っていた。
「ガルフ様、ここまで連れてきていただいてありがとうございました。」
治癒魔術師のリニア・ステイシーが言った。
「いいえ。それより、メルトとアルトの生存を確認したいのですが。」
「わかりました。今、確認してまいります。」
リニアは、教会の奥へ足早に行った。
数十分後、リニアが戻ってきた。
「ガルフ様、メルト様とアルト様なのですが、現在教会内におられます。健康状態も特に問題はないとのことなのですが、今回の戦場での出来事が相当精神力を使ったようで、お部屋で休まれております。他の聖職者たちも見守りをしていますが、今はそっとしておいてほしいとのことでした。」
「そうですか。しかし、二人は生きているのですね。」
「はい。しかし、今は休息が必要かと・・・。」
「わかりました。生きていることが確認できただけでもほっとしました。」
肩をなでおろし緊張から解き放たれたガルフだった。
―――――
一方、リリィと翆は、フィルの下へ帰っていた。そして、事の経緯をリンに話していた。
「ということがあったわ。」
「適当に付いた嘘がばれないといいわね。特にガルフ様やサリープ様には要注意ですね。」
「そうでありんすね。正体がばれないように戦うのも相当大変でありんした。」
「ところで、フィル様はどちらですの?」
「授業中。」
「早急に伝えたいことがありましたのに。」
「何かやらかしたの?」
「いいえ。違いますわ。いや、やらかしたかもしれませんわね。ダンジョン攻略の際にダンジョンボスが地獄の門を守っていることを知らずに討伐してしまいましたの。そしたら、地獄の門の封印が解かれてしまって・・・。」
「最近噂に聞く悪魔の大量発生の原因は、あなた達だったってことですね。」
「そうでありんすね。わっちもリリィも封印術はわからないでありんす。悪魔の上位体の魔人のリンなら何か出来るんではないでありんすか?」
「まぁ。地獄の門を閉じることは出来ますけれど、封印までは出来ないです。あの封印術式を施しているのは天使たちですから。」
「天使ですの?噂は聞くけれど見たことは無いわね。」
「わっちも見たことは無いでありんす。」
「天使っているの?」
「存在はしていると思いますよ。現に地獄の門は天使の言語で封印されていたはずですから。」
「天使とうちらどっちが強い?」
「どうでしょうか。天使にも順位というものがあるようですから。簡単に測れるものでもないでしょう。とくに、悪魔と一緒で、地上に存在するためには憑代が必要とされていますし、悪魔同様殺す方法はないとされてますね。真っ向勝負であれば、私たちは勝てないでしょう。」
「ふーん。」
不満そうにに藍が言った。
「しかし、どうやって天使の封印術を使わずに、地獄の門を閉じるでありんすか?」
「そうよ。魔人のリンじゃ、地獄の門を封印できないんでしょ?」
「そうです。だから、ただ閉じるだけになりますね。」
「どういうことでありんすか?」
「扉を閉じるだけです。普通に。というか、魔人であれば地獄の門に干渉できるので、普通に手で閉じます。ただ、封印しているわけではないので、また開いてしまうかもしれませんね。でも、閉じてしまえば悪魔は自力で開けることは出来ませんので、十分だと思いますが。」
「ただ閉じるだけでありんすか。拍子抜けでありんすね。」
「封印してた意味ない。」
「確かに、わざわざ封印しなくてもよかったのではないの?」
「さあ、そこら辺の悪魔事情は魔人の私でも知りません。というか、生きている場所が違うので、悪魔のことなんて全部知っているわけではないですよ。」
「それもそうでありんすね。」
「そういえば、悪魔が大量発生した際にフィル様が、言っていました。「悪魔がケルンに大量に入り込んだ」と。」
「まぁ、それもそうですわね。バルカンから近いですし、予想は出来ていましたわ。」
「フィル様は悪魔の気配を察知できるでありんすね。」
「そのようですね。退魔の短剣を作るほどのお方ですし、悪魔にも精通していると思います。あなた達では悪魔を殺せないので、退魔の短剣を複数作ってもらう必要がありますね。」
「あまり舐めないでもらいたいわ。悪魔くらい殺せますわ。」
「わっちと藍は相性が悪いでありんすね。何せ悪魔は物理も魔術も効かないでありんすから。」
「リリィ、ほんとに悪魔殺せる?」
疑いの目を見せる藍。
「本当ですわ。まぁ面倒な倒し方にはなるけれど。」
「ほう。どうやってやるのか聞いてみても?」
「血ですわ。悪魔の血を清い血で浄化するのですわ。簡単に言うと悪魔の憑代になった者に私の血を混ぜれば、殺せますわ。血を操れる私であれば血自体を超強力な聖水に変えられますわ。」
「なるほど。また、面倒な倒し方ですね。」
「仕方ないでしょ。悪魔自体が面倒な奴らなんだから。そんなこというリンはどうやって倒すのよ。」
「私は悪魔の上位互換です。ただ殴り殺せば憑代ともに殺せます。」
「なんですの、その意味の分からない方法は!」
「魔人は悪魔に干渉できるんですよ。さっきも言ったでしょう。だから、地獄の門も閉じれますし、悪魔だって殴り殺せます。しかし、悪魔自体を認識しないとできませんがね。あんな小物の気配など小さすぎてわからないですもの。」
「そこは、なんともお粗末でありんすね。憑代を見たら悪魔とわかるってことでよろしいんでありんすか?」
「そうですね。気配まではわかりませんが、見たらわかります。」
「じゃあ、街に悪魔が侵入したことわかったんじゃない?」
「いや、私はフィル様の学園での手続き等があり、外には出ていませんので、悪魔が侵入してきたかどうかまではわかりませんでした。」
「リン、使えない。」
「な!たとえ私が分かったとしても、悪魔憑きを見分ける術を持たないヒューマンの前でいきなり憑代を殴り殺したら、私がおかしいと思われるでしょう。」
「ふふふ。そうでありんすね。」
「どうにか悪魔と見分ける方法も必要ですわね。」
「それ、必須。」
「フィル様に相談しましょう。とりあえず、授業が終わるまでは、待機ですね。」
―――――
「ただいま。戻ったよ。」
「フィル様、おかえりなさいですわ。」
「リリィと翆帰ってたんだね。おかえり。」
フィルは、リリィ達からダンジョンの件、そして悪魔についてを聞かされた。
今の課題、そして対処方法を考えないといけないとフィルは察した。
「とりあえず、地獄の門を閉じるのは最優先事項だね。これはリンにお願いしよう。」
「かしこまりました。早急に対処いたします。」
「それと悪魔の見分け方ね。とりあえず、今あるのは聖水かリンの目視、それと僕の悪魔感知くらいか。リリィと翆と藍には、何かしら準備しておかないと後々困りそうだね。付与魔術を利用して何かマジックアイテムを作るよ。少し時間がかかるかもしれないからその間にリンが地獄の門を閉じるってことでいいかな。」
「はい、そういたしましょう。ダンジョンの場所はリリィから聞いていますので、すぐに向かうことができます。」
「今は鳴りを潜めてる悪魔だけど何をしでかすかわからないから、警戒しておくように。」
「かしこまりましたわ。」
「承知したでありんす。」
「承知。」
リンはフィルの命により、さっそく出立した。
フィルとリリィと翆は、王宮への報告に出向き、戦場の結果報告と現状の悪魔の被害についての報告を受けた。
その間、藍はリンがやっていた事務処理を適当にやっていた。




