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【2025年7月30日完結!】天界の司書、転生したら最強でした!  作者: 愛猫私


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第200話

第200話 ガブリエルとフィル



 フィルは、何も起きない状況を気味悪がっていた。しかし、それで思い悩んだところで天界に行けるわけでもないし、『熾天使(セラフィム)』を無理やり呼び出すこともできない。

 後手に回ってしまうからこそ、今従者たちは己の限界を超えようと努力している。

 フィルはどうしても「天照」動力源を返すといったガブリエルの言葉を忘れられなかった。

 もし、「天照」動力源を返す時は、その時こそが開戦の合図だと考えていた。

 その「天照」動力源がどちらの手元にあるかによって、戦況が大きく変わる。今更、マザーブレインに動力源を戻す時間は与えてくれないであろう。

 爆発させ、世界を一瞬で終わらせるという手もある。しかし、それは天界や地獄そのものにも影響が出ると考えられるため、そんなことはしないだろうとフィルは予想していた。

 一番厄介なのは、ガブリエルが「天照」動力源を人質に、フィルの行動を制限させてくることだった。

 これは、『鬼』の一件で、実際にやってきた手法だ。

 

 フィルは、本を読んでいたがそんなことばかり考えており、内容が全然入ってこない。

 

 ふーっとため息をつき、本を閉じた時だった。

 音もなくガブリエルが現れた。

 

 「ガブリエル!?」

 「さて、フィルよ。約束の時だ。「天照」を返そう。」

 「!?」

 「なんだ?そんなに驚くことか?我は、嘘はつかない。熨斗を付けて返そうと約束した。」

 「・・・。お前が何をしたいのかさっぱり理解できない。」

 「至極簡単な話だ。非常に残念だが、地上は淘汰せざるを得ない。」

 「今は天界の理を侵害してはいないだろ!」

 「フィルよ。もうすでに一線を越えている。人口の増加。他の生命の破壊。空気の汚染など。己らは未来と託けて発展を続けている。それが、淘汰の理由だ。」

 「ふざけるな!神は自由意志を与えた!それが地上の者の行いの根源だ!ガブリエルがとやかく言うことではないはずだ!」

 「・・・。フィルよ。お前も元天使なら理解できるだろ?際限があるということだ。天界の図書館も際限があって閉鎖された。だからお前は堕天した。地上にもその際限があるんだ。」

 「なんの際限だ?命か?そんなものはない!」

 「残念だが命にも際限がある。大量に生命が生まれればそれだけ死は早まる。育てきれないからな。これは、天界が行っていることではない。至極普通のこと。人口が増加するということは、魂が飽和するということ。天界には、もはや地上を調整するまともな天使はいない。」

 「だから、地上を根絶やしにして、その魂を吸収するとでもいうのか?」

 「次の世を作る動力源くらいにはなりそうだな。」

 「創造の力を持っていないお前がどうやって、次の世を作るんだ!」

 「生物が存在できない星とする。ただのエネルギーの正負しかない世界。それこそが、あるべき姿。それこそ我々天界が調整すべき世界。我は天使だ。だまし討ちなどしない。1カ月後だ。1か月後に我は天魔神を解き放つ。」

 「天魔神・・・。やっぱりか。」

 「ウリエルから聞いていたのだな?だとしても、到底太刀打ちできる相手ではないだろう。」

 「・・・。さぁ。抗うだけ抗わせてもらうよ。で?「天照」はどうなった。」

 「そうだな。熨斗を付けると言ったのは本当だ。ほれ。」

 

 マザーブレインに搭載されるほどの巨大な「天照」動力源は、小さな姿になっていた。

 

 「これは?・・・。」

 「使い古されたエネルギーの成れの果てだ。」

 「これが熨斗を付けて返すだと?」

 「よく見てみろ。」

 「・・・これは、天使の恩寵?」

 「そうだ。お前の従者の中に天使の恩寵を作りえるものがいるということだ。」

 「・・・なら!」

 「それはダメだ。地上の者が天使を作ることなど到底許されない。ゆえに我の意向は変わらない。」

 「この恩寵が熨斗だと?」

 「お前は『熾天使(セラフィム)』という存在をいまいち理解していないようだな。」

 「僕は、お前たちのような階級で、ものを考えてはいなかったからな。」

 「だからこそ、その恩寵をお前にくれてやる。『熾天使(セラフィム)』の成り損ないに必要なものだ。」

 「『熾天使(セラフィム)』になってガブリエルの言っていることを理解しろっていうのか!」

 「あぁ!理解してもらいたいとも!神の理不尽によって堕天した貴様なら、これが天使にとって正しい行いだということが分かるはずであろう!」

 「・・・確かに何百万回と本で読んだ。淘汰される生物の話は。」

 「なら、その恩寵を使って天界に戻ってこい!そして、我と役目を果たせ!」

 「・・・。残念だけど地上を守るって約束したんだ。ミカエルと。」

 「ミカエルは消えた。いつまでもそんなものの意思を継ぐ必要はない!」

 「もういいよ。この恩寵は、僕のものでもない。ミカエルの意思をつなぐために使わせてもらう。」

 「・・・。ミカエルは消滅した。恩寵を吸収したとしてもミカエルは復活しない。」

 「そんな心配しているのか?ガブリエル。僕自身がもうミカエルなんだ。地上を守ることはもう僕の意思なんだ!」


 フィルは、恩寵と化した「天照」動力源をガブリエルの目の前で取り込んだ。


 「地上の者を甘く見るな。ガブリエル。貴様が例え天魔神を使おうとも僕たちが止める。」

 「神格化しただと!?」

 

 神々しい光を放ち、ガブリエルを圧倒する力を放つフィル。

 

 「『偽神神衣(ぎしんかむい)』は、偽物の神。器だけのものだ。僕の『簡易図書館(インスタント・ライブラリ)』は、その中身。二つが合わさればより神に近い存在になれるんだよ。熨斗つけて返してくれたおかげだ。礼を言うよ。」

 「・・・。だとしても、天魔神を相手にはお前ひとりでは対処しきれまい。」

 「僕は一人じゃない。天使を超える力はもうこの地上にはある。僕の従者は、次世代の神様の卵だ。」

 「・・・。一カ月で到達できると良いがな。」

 

 ガブリエルは、自分の力をはるかに超えるフィルから逃げるように去っていた。

 



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