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【2025年7月30日完結!】天界の司書、転生したら最強でした!  作者: 愛猫私


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第184話

第184話 エルメスとサリープ3



 サリープとエルメスは、フィニアのエルメスの家にいた。

 マンドラゴラの採取には、フィニアの樹海へ入る必要があった。

 安全とは言えないフィニアの樹海で採取を行うために、準備をしていた。


 「私の家に人を入れたことは無いのだが、特別だ。」

 「そうなのですか。」

 「なんだ?女性の部屋だぞ?」

 「いや、何と言いますか・・・。何もありませんので・・・。」

 「必要な物以外は置いていない。残念だったな。」

 「なにも期待していませんよ!」

 「はっ!可愛げのない王子だな。」

 「エルメスさんから見たら私は子供なのでしょうけど、私はアドレニス王国の第二王子です。」

 「子供だとは思っていない。可愛らしいとは思っているが。」

 「そういうところですよ!」

 「ははは。冗談はさておき、フィニアの樹海には、魔物が出る。用心すべきだ。特に私は前衛ではない。何かあっても、後方からの攻撃になってしまう。」

 「私も土属性の魔法が多少使えるレベルです。」

 「はぁ。それでは、私の後ろから離れるな。」

 「わかりました。肝に銘じておきます。」

 

―――――

 

 サリープはもともと用意周到な男であるため、マジックボックスの中にいろいろマジックアイテムが入っている。

 そのなかには、ポーション以外にも役に立つマジックアイテムがある。

 そういった品を持ち歩いているため、今回も何かあればそれを使用しようと思っていた。

 だが、フィニアの樹海は、一筋縄ではいかなかった。

 

 サリープはフィニアを少し出たところからそれを感じていた。

 ローブを着たサリープには、鬱蒼とした植物が行く手を阻むのだ。

 大樹だけではなく、地上には大小さまざまな植物が生えており、枝や葉、足元には根が張り巡らされており非常に歩きづらい。

 エルメスは、軽装な装備であるが、ルーン文字の刻まれた胸当てをつけている。

 小さなナイフ一本でどんどん先に進んでしまう。

 

 「エルメスさん。もう少しゆっくりお願いできますか?」

 「この調子では、マンドラゴラの生息域まで日が暮れてしまうぞ。」

 「ですが、この格好では、進みづらくて・・・。」

 「うむ。地上から行くのはやはり間違っていたか・・・。」

 「野営するのであれば、準備はしてありますので、もう少しゆっくりでお願いします。」

 「わかった。そうしよう。」

 「ありがとうございます。」


 エルメスは、サリープを気遣いナイフで辺りを切り開いていく。

 少し道幅の広くなった植物の中をゆっくりと進んでいく。

 

 すると、エルメスが立ち止まった。

 

 「サリープ殿。動くな。」

 「!・・・。」

 「シルバーエイプだ。1匹か。やり過ごそう・・・。」

 

 そこにいたのは、巨大な銀毛のゴリラのような魔物だった。

 その腕は丸太のような太い腕で、銀色の体毛が特徴的だった。

 シルバーエイプは、辺りをキョロキョロしながら、植物の実を食べている。

 サリープやエルメスよりはるかに大きいシルバーエイプは、二人に気づいていない。

 しかし、ちょうど先に進むところに陣取っており、迂回しなければならなかった。

 

 「サリープ殿、私に捕まれ。」

 「わかりました。」

 

 サリープはエルメスの肩に捕まった。

 

 「そうじゃない。私がサリープ殿を背負う。」

 「え?」

 「なんだ?」

 「男としてのプライド的なものが・・・。」

 「サリープ殿にそんなものがあったとはな。」

 「・・・。ありますよ、一応。」

 

 サリープはエルメスに背負われた。

 そして、エルメスは、隣にあった巨木に手を当て、魔力を込めた。

 すると、エルメスの足元から巨木の枝が生え始め、木の上へと押し上げていった。

 これは、エルフの植物を操る魔法である。

 どんどんと上昇していく二人。木の上に到着すると、エルメスが弩弓を取り出し、矢に紐を取りつけ、シルバーエイプの奥にある巨木に放った。

 紐の付いた矢は、巨木に突き刺さり、簡易的なジップラインを作った。

 ロープスライダーを取りつけて、サリープを背負ったまま、シルバーエイプの奥にある巨木へ渡った。

 

 「なんだ?怖いのか?」

 「さすがに高いです・・・。」

 「さすがアドレニス王国の王子様だな。」

 「いや。育った環境が違いすぎますよ。」

 「はっ!この先もと危険だぞ。」

 「足手まといになるつもりはありませんので。」

 「言うじゃないか。次もこのままジップラインを作って行くがいいか?」

 「魔物の脅威がない安全な場所に行ったら地上に下ろしてください。一応、マンドラゴラ以外の薬草も採取したいので。」

 「そうか。高いのが怖いのだな。」

 「そうじゃありません!」

 

 軽口を叩きながら、さきに進む二人。

 

―――――


樹海のなかは、日暮れが早いため、安全な木の上に陣取り野営することにした。

エルメスの魔法で、巨木の枝の上に大きな横穴を作り、サリープがそこにマジックボックスから取り出した簡易テントを張った。

さらには、魔石を使った簡易コンロや携帯食や飲み物を用意した。てきぱきと用意するサリープをエルメスは眺めていた。


「王子はそんなこともするのか?」

「これは、マジックボックスを持つ者の役目ですよ。夕食も用意しますので、エルメスさんは休んでいてください。」

「こんなところで料理をするのか?携帯食で十分だぞ?」

「だめですよ。お腹が減っては何とやらですので。」

「匂いに魔物が来なければいいのだが。」

「それは心配ありませんよ。そこに置いてある御香が、魔物除けの効果を持っていますので。」

「ほう。便利だな。」

「旅のお供に私を連れて行けば不便はありません。なんて。」

「確かにな。」


 夕食を食べ終え、火を消し、御香を最大限炊いた状態で、二人は狭い簡易テントのなかでゆっくりと休んだ。

 サリープは、なぜだかエルメスのことを意識してしまい、なかなか寝られなかった。



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