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【2025年7月30日完結!】天界の司書、転生したら最強でした!  作者: 愛猫私


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第175話

第175話 ミカエルの決断



「どうやって、この惨状を救うというのですか?」

 「それを話す前にフィルをここに呼べ。話はそれからだ。」


―――――


 『というわけで、マザーブレインの部屋にミカエルという天使と私がいます。ここに転移してもらえますか?』

 『ミカエルか。事情を知っているみたいだね。わかった。全員でそっちへ飛ぶよ。』

 『お待ちしております。』


 フィルの周りに集まった従者たちは、フィルの作る魔法陣の中へ入った。

 薄暗くなった部屋には、ミカエルと金色のエヴァが待っていた。

 

 「ミカエル。どういう状況だ?」

 「あまり悠長に話している時間はない。今、この国の国民は、ザラキエルがまき散らした病原体に蝕まれて一刻を争う。」

 「病原体!?」

 「さらには、マザーブレインとやらの核が、ガブリエルの手で天界へと奪われてしまった。」

 「今、稼働しているのは、私しかしません。その他の機能は全て停止しています。」

 「マザーブレインの核は、我にもどうもできない。しかし、この国の国民の命を救うことはできる。」

 「そうか。それはよかった。すぐにやってくれ。」

 「しかしだ。フィルも理解しているであろう?天界の天使が地上の者を故意に助けることが許されないことだということを。」

 「何を言っているでありんすか!?此度の侵略戦争は、天界の天使が仕組んだことでありんしょう?」

 「よくわかったな。確信はないが、策をめぐらせたのはガブリエルであろう。」

 「天使が地上を破壊しようとしたのは明白。それを助けることを許さない理由があるのですか?」

 「リン。これは、天界の事情だよ。今回、天使がネクロマンサーを使って侵略戦争を仕掛けたのは、魔国の制度がこの世の理に反していたからだと思う。」

 「その通りだ。寿命を75歳に固定するというのは、地上の者からしたら画期的なアイデアだったのかもしれないが、それは自死に値し、魂は地獄へ落ちる。」

 「フィル様は、それを知っていたのですか?」

 「そこまではわからないよ。正直、画期的過ぎて何が起きるかは想像もしてなかった。」

 「そして、それを編み出したマザーブレインという頭脳の動力源。これが、地上に置くべきものではないと判断された。そして、ガブリエルの手で奪われた。」

 「『天照』・・・。確かにオーバーテクノロジーではありますね。」

 「いけないことなのかぁ?」

 「使い方によったらね。でも、許容される範囲だと思うし、それによって国民の幸福度は上がっていたはず。天界が、いや、ガブリエルが割って入ってくる話じゃないと思う。」

 「動力源については、我も関知することではない。が、何かガブリエルは良からぬことを企んでいるのであろうな。」

 「で、病原体から国民をどうやって救う?」

 「我が助ける。」

 「・・・。大丈夫か?」

 「何がだ?」

 「そんなことしたら次は堕天だけでは済まないだろ?」

 「そこで、フィル。いや、フィルゴームに頼みがある。」

 「なんだ?」

 「我はこの国民を助けることで、消滅するであろう。だが、間違いではないと思っている。地上の者を救うのが天使の役割だと今でも思っている。だからこそ、力を失った恩寵をお前に預けたい。」

 「・・・。わかった。ミカエルの意思とその恩寵をこのフィルゴームが譲り受けよう。」

 「フィル様・・・。」

 「大丈夫だよ。今までの僕と変わらないから。」

 「甘く見られたものだな。消滅するとしても我は『熾天使』なのだぞ。」

 「そうだったね。ミカエルの意思はこれからも尊重していくよ。」

 「頼んだ。では、行くぞ。」

 

 薄暗い部屋で、ミカエルは12枚の翼を広げた。

 辺りは輝き、明るく照らされる。

 

 「『偽神神衣(ぎしんかむい)』」

 

 さらに光は強まり、神々しくなった。

 神の力を使えるようになったミカエルは、地上の者へ使えば消滅してしまうとわかっていながらも惜しみなく力を発揮した。

 

 「『完治(コンプリート・リカバリー)』」


 国民一人一人に光が宿った。

 トリアージされ、命の灯がほとんどなかったものも、ミカエルの力によって完治し再燃し始めた。

 残念ながら、すでに死んでしまった者は、生き返ることはなかったが、国民のほとんどがミカエルの手によって救われた。

 

 「これで我の役目は終わった。」

 「ご苦労さん。ミカエル。」

 「あぁ。フィルよ。済まなかった。」

 「何が?」

 「天界と地上のバランスを保つことができなかった。」

 「ミカエルのせいじゃないよ。」

 「ガブリエルは何かを考えている。気を付けるんだ。」

 「あぁ。わかった。もう任せてゆっくり休んでくれ。」

 「あぁ。そうさせてもらう。」

 

 ミカエルの翼は、ボロボロと光の粒になって消えていく。

 そして、むき出しになった恩寵は、光を失いフィルに取り込まれた。

 

 「地上を守ってくれてありがとう。」

 

 フィルは、ミカエルの恩寵を自分の恩寵に取り込み、ミカエルの思いを知った。

 ミカエルは、純粋に地上の者を助けたかっただけだった。難しいことや細かいことはわからないが、地上の生物たちを混沌から守りたかった。

 その気持ちを貫くことで消滅するとしても、構わなかった。

 フィルはこの正義感に強く感銘を受けた。

 

 これから訪れる脅威にミカエルの正義感を思って立ち向かおうと決心するのであった。




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