第150話
第150話 救援要請
「魔大陸内に次元の歪が発生したようだ。至急調査してほしい。」
魔王エヴァはマザーブレインからの情報から魔大陸内の異変に気が付いた。
魔国自体には、ケルンの様な丈夫な魔法障壁などはない。しかしながら、魔大陸の各地に調査機が埋め込まれ異変があれば、マザーブレインにすぐに伝わる仕組みになっていた。
次元の歪自体は、強力な魔力の収束によって生じたもので、そこから何万という数の甲冑を装備したアンデッドが出現した。
魔国から離れた場所に、整列した一万を超える甲冑を装備したアンデッドは、出陣のときを待っていた。
「どこからともなく現れたアンデッドは何者だ。」
「データベースに記録はありません。この大陸の者ではないと推測されます。」
「侵略といったところか。軌道に乗っている状態の魔国を失うわけにはいかない。全量産型エヴァを出撃させるんだ。」
「かしこまりました。全量産型エヴァ出動命令。」
―――――
「どうしったっち!?」
「緊急出動命令が下りました。現在の依頼をすべて破棄して向かいます。」
ピポナッチと一緒に行動していたボロボロの量産型エヴァが告げ、走り出した。
ピポナッチは魔国にあるギルドへ向かい、受け付けのエヴァに話を聞いた。
「何が起きたっち?」
「現在、魔国周辺に侵略者が出現した模様です。そのため、量産型エヴァの全機は出動命令が出ています。」
「なら、アダマンタイト級冒険者も緊急招集をかけるっち!魔国の一大事っち!」
「私には権限がありません。」
「なら、俺っちだけでも向かうっち!」
そういうとピポナッチはギルドを飛び出した。
―――――
そのころ、ケルンにいたフィルのもとにいる金色のエヴァが異変を察知した。
「フィル様、魔国に侵略者が現れたようです。」
「え!?敵は誰!?」
「マザーのデータベースにも存在しない敵のようです。」
「・・・。予兆もなく急にか・・・。」
「ヘリオスのような転移系の魔法の使える者がいると見た方がいいですね。」
「同盟国の魔国の一大事に何もしないってわけにはいかない。魔王エヴァからの連絡は?」
「今のところありません。自国で対処するようです。」
「・・・。とりあえず、いつでも迎えるようにしよう。」
―――――
桃屋敷とザラキエルは、そびえ立つ魔王城を双眼鏡で眺めていた。
「あそこに我の欲する力があるのだな?」
「はい。あの城の動力源こそ奪うべき代物です。」
「ふむ。しかし、やはり一筋縄ではいかぬか。」
「その様ですね。」
魔国の周りには、次々と量産型のエヴァが整列していく。
その数甲冑を装備したアンデッドと同じ一万機ほどだった。
「リーパーが憑依した特製のアンデッドはどうでしょう?」
「不死の軍勢は、身体が消えてなくなるその一瞬まで動き続ける。この勝負、我の勝ちである。」
「では、私たちは高みの見物といきましょう。」
「そうだな。さて、我しもべ進軍せよ!」
甲冑を装備したアンデッドたちはガシャリガシャリと音を立て進軍し始めた。
その進軍の音は轟音となり、進んでいく。
そして、それと同じタイミングで、量産型エヴァたちもアンデッドたちへ向かって走り出した。
砂埃を上げ、加速していく量産型エヴァたち。
両者が互いにぶつかったとき、それは起きた。
量産型エヴァたちは、帯電した体をひねり、甲冑のアンデッドへ体当たりをした。
その高速スピンは容易に甲冑を貫いた。
バタバタと倒れるアンデッドたちは、高い攻撃力を持つ量産型エヴァに蹂躙される。
「先制攻撃は成功です。こちらの攻撃力は相手を上回っております。」
「なるほど。しかし、油断はするな。侵略戦争だ。相手は何を考えているかわからない。」
マザーブレインの制御室で対応にあたる魔王エヴァがマザーとやり取りをしている。
「問題発生。」
「なんだ?」
「先制攻撃にて鎮圧したアンデッドが再び動き出しています。」
「体当たりごときでは、死なないか。」
甲冑を装備したアンデッドが起き上がり、量産型エヴァの頭をつかみ、その腕を胸に突き刺し、動力源の電雷鉱を引きずり出した。
「想像以上の攻撃力です。量産型エヴァの装甲を貫いていきます。」
「なるほど。死なないかつ、量産型の装甲を破壊する攻撃力か。弱点の情報はまだか?」
「今のところ発見できません。」
「・・・。持久戦では、勝ち目がないというわけか。自国を守ることを最優先としよう。フィルに連絡を。」
「かしこまりました。」




