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【2025年7月30日完結!】天界の司書、転生したら最強でした!  作者: 愛猫私


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第13話

第13話 準備期間

 

 サリープは、自室で今回のダンジョンの攻略の準備をしていた。

 「騎士団長のガルフ兄様は、強いが、一人で押し切ろうとする傾向がある。誰一人欠けることなく帰ってくるためには、備えが必要だな。三日間とはずいぶんと短いが、それほど戦況はよくないのだろうな。」

 フィルの作成した、マジックボックスの簡易版の巾着袋ではなく、正真正銘のマジックボックスを所持しているサリープは、念入りにアイテムを収納している。

 このマジックボックスは、古くに出現したダンジョンからの出土品であり、王家に代々伝わっていたものをサリープが成人したときに送られたものだ。ベルトと小さな箱が一体となっている代物で、その箱の容量は、荷車馬車一台分にもなる。

 ポーションや魔法陣を記入した紙の束、その他のマジックアイテムをどんどんと入れている。

 サリープは、王族の中でも地属性の適性を持っており、頭がとても良い。しかし、戦闘には人一倍用意周到で、特に後方からの援護を得意としていた。

 前線にでるガルフとは、とても相性が良く、ガルフはサリープを騎士として自分の団に入れたがっていたほどだ。しかし、サリープは、薬師としての研究に熱心で、いつもガルフからの誘いを断っていた。

 「上級ポーションの在庫は、王国内で5つか。これが量産出来れば、多くの兵士を救うことができるんだけれど・・・。」

 ポーションには、初級、中級、上級と種類がある。上級ポーションは、サリープが言った通り国内に5つしか存在しない。とてつもない貴重品だ。効能は、傷を完全完治させると言われている。

 この世に出回っているのは、初級、中級のポーションであるが、初級では、傷の30%の治癒。中級では60%の治癒効果が確認されている。

 ポーション自体かなり高価な代物であり、大量生産できるような手法は確率されていない。

サリープは、19歳の若さで初級ポーションの作成に成功している逸材で、普段は、商人ギルドを通じて卸しているが、緊急事態用にポーションの備蓄もしていた。

 そして、今回のダンジョンの出現により、王国は商人ギルド通じて、ポーションの買い占めを行い戦場へと送っていた。そのため、第三騎士団に配分されるポーションはなく、サリープの備蓄のみで賄うこととなっていた。

 「それだけ戦況は魔物側優勢ということか。早期のダンジョン攻略が要となる理由はこれか。」

 準備をしているサリープは、自身が持っている最上級の装備で、部屋を後にした。


―――――

 メルトは、教会の用意した馬車に乗り込もうとしていた。

 「メルト姉様、お手をどうぞ。」

 「ありがとうですわ。」

 「手が震えておりますね。」

 「戦場は初めてですもの。少し怖いですわ。」

 「そうですね。僕もです。」

 教会の仕事は、負傷者の手当てだ。

 陽属性のなかには、治癒魔法も含まれるが、メルトとアルトは使えない。

 よって、医学的見地からのアプローチで負傷者を手当てするほかない。

 治癒魔法は、万能であるが、使える者が極端に少ない。その多くは教会にいる。

 王族とは言っても、入信したての下っ端であるメルトとアルトは、包帯の取り換えや傷の縫合、さらには、治癒魔術師への魔力の譲渡などやることが山ほどある。

 教会に入信後は医術について、多くのことを詰め込んだが、今回が初めての実践だ。二人はとても大きなプレッシャーを抱えていた。

 とはいいつつも、教会からは100人以上の聖職者を派遣することになったのは、王族のメルトとアルトのおかげである。

 彼らが率先して戦場へ出ることを聞いた聖職者たちは、王族としてではなく一後輩からのお願いを無下には出来なかった。日頃の二人を見ていたものは率先して戦場への志願を申し出てくれた。

 「きっと僕たちならうまくやれますよ。」

 「そうですわね。」

 フェデルブルク教会から聖職者を乗せた馬車が少しずつ動き出した。


―――――


 「リリィと翆。今回のダンジョンの件、ありがとう。僕は待機命令が出ているから何もできない。だから、僕たちの家族をどうか守ってほしい。よろしく頼む。」

 「当然ですわ。私たちがいれば、ダンジョン攻略なんて余裕ですわ。」

 「大船に乗った気持ちでお待ちしておくんなまし。」

 「今回は、他の兵士、騎士、そして特にガルフ兄様、サリープ兄様の目がある。自分たちの正体を隠しつつ全力で戦ってほしい。」

 「おっと、難易度が上がったでありんすね。」

 「いちいち、お前たちの力はどこから来たものだとか聞かれたくはございませんわ。フィル様にも後々迷惑をかけることになりますわ。自嘲しますわ。」

 「無理を言ってゴメンね。」

 「さて、今回のダンジョンの件、残された私と藍については、フィル様同様手出しができません。お二人に任せることになりますが、サポート型の翆はともかく、戦闘特化型のリリィの戦闘力は従者の域を超え露見してしまうと予想されます。リリィ。相当手を抜かなければ、いけないことを理解しておりますか?」

 リンは、自嘲するといったリリィにさらに追い打ちをかけるように言った。

 「第三騎士団団長のガルフより、さらには、サリープ様に手柄を立てさせろと言うことですわね。」

 「はい。そうです。最前線で戦ってしまったら、瞬殺でしょう。そうなった場合は、正体を明かしたのと同義。細心の注意を。」

 「わかっていますわ。せいぜい出しても10%というところですわね。」

 「10%でもダメ。2%くらい。」

藍がさらに厳しく条件を設けてきた。

 「いくらなんでも、2%は低すぎますわ。まったく装備をしていなかったらそれはそれで怪しまれますでしょ。一応、完全装備で行かせていただきますわ。そのうえで、能力を最低限度に抑えますわ。」

 「わっちは、羽織くらいしか、装備はありんせん。軽装と思われた場合、どうしようもありせんよ。」

 「翆の場合は、異国の衣装だから付与魔術施されているって言えばしのげると思うよ。」

 「なるほどでありんす。」

 「じゃあ、そろそろ準備を。」

 リンが、二人を促し、フィルがそれを見送った。


―――――

 

 ガルフは、戦況が気になって仕方なかった。

 第三騎士団も一部は戦場へ行っていることも、第一、第二騎士団そして、バルカンの兵士たちも合わせれば、相当な戦力になっている。しかし、収束の伝達は一向にこない。

 ダンジョンから発生する魔物は、ダンジョンが消滅しない限りには、永遠と発生する。

 今回、ダンジョン外へ出てきてしまうとういうあまり例のないことで、多くの戦力を割いている状態だが、それにしても吉報がこないのを心配していた。

 「戦況は、良くないということか。これでは、増援に行ったとしてもダンジョン外の魔物の物量に押しつぶされてしまうのが目に見えているな。やはりダンジョン攻略が最優先事項か。」

 ガルフは、火属性の適性を持っている騎士であり、その赤い髪同様に赤を基調とした鎧で身を固めている。王族だからといって騎士団長になったのではなく、たぐいまれなる剣術の才能を認められたからこそ、第三騎士団団長を任されている。

 そこら辺の低級の魔物であれば瞬殺できるほどの実力であり、他の団長もそれと同等の力を持っている。

 「陣形、連携を崩されるようなことがなければ、こちらが有利なのだが。それだけの強敵が出現しているということか・・・。他の団長はともかく負傷者の数も気になるところだ。早く行って戦況を確認しなくては。」

 

 ガルフや団長が所有している王国でも数少ない魔剣を腰に携え、その他の準備をしているガルフは、部屋を後にした。


挿絵(By みてみん)

皆様、つたない文章を読んでいただきありがとうございます。愛猫私と申します。

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毎日更新を頑張って参りますのでよろしくお願いします。

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