第118話
第118話 ヘリオスVSリン、紅、茶々丸2
紅の放った魔法は、自分たちをドーム状に囲う炎の盾だった。
射出される水滴は、着弾するまえに蒸発し消えていく。
「これなら何もできないだろぉ!」
「ありがとうございます・・・紅。」
「ワン!」
「大丈夫か!?リン!」
「今のところまだ平気です。しかし、攻撃が通じない以上かなりジリ貧です。」
「確かに。持久戦になったらあいつの方が絶対に強いなぁ。」
すると、ジューっと音を立てていた水滴の連射がぴたりと止んだ。
青色のヘリオスは、威力の少ない水滴で攻撃しても意味がないと悟ったようで、次の手を繰り出した。
それは、紅が作り出すドーム状の盾の上に出現した。
「嘘だろぉ!?」
紅が作り出すドーム状の盾の10倍ほどの水球がふよふよと空中に浮かび上がっている。
その水球はゆっくり下降し始めた。
「さすがに耐えきれないよぉ!」
「紅!火力を上げてください!」
「もうやってるよ!」
茶々丸も岩石の盾を紅の盾の上に作り上げた。
高熱に熱せられた岩石は熱したフライパンに水を注ぐようにジューっと水蒸気を上げながら、巨大な水球を蒸発させていく。
しかし、水球の巨大さに対しては、焼け石に水であった。
メキメキと音を立てて崩れていく茶々丸の盾。そして、さらには紅のドームにも襲い掛かる。
「ぐぅーーー!」
紅は苦悶の表情をしている。紅の持つスタッフはこれ以上ないほど光を出して輝いている。
リンは、限界が近いことを感じ、自分の持てる最大の攻撃でこの窮地から脱しようと考えた。
「紅!この水球を吹き飛ばします!」
「バカ言ってんじゃないよぉ!そんな技があるなら早くやりなさいよぉ!」
「これを使ったら、私の戦闘力は激減します。いいですね?」
「ハンマーを使うのか!とりあえずいいからやってくれぇ!」
リンは、魔力を溜め、体中に電気を帯び始めた。
その電気は、徐々に強まり、リンを中心に雷が迸るかのように、辺りにバリバリと音を立て始めた。
その時、
『リン、聞こえるかな?今どこにいる?』
『フィル様、我々は今、ヘリオスと対戦中でございます。』
『え!?なんで!』
『我々の方が先にヘリオスのもとに着いてしまったようです。念波を使用しながらでは対戦に集中できませんので、ここで切らせていただきます。急いで加勢を・・・。チッ!』
窮地に割り込んできたのはフィルの念波だった。どうしようもない状態のこの時に空気の読めない念波はリンを苛立たせたが、集中力を切らさずに魔力を溜め切った。
「紅!行きます!」
「任せたぁー!」
「『真魔人電子槌!!!!!』」
超巨大な水球に着弾したリンの戦槌からは6本の杭が解き放たれ、一本一本が強力な電磁砲になっていた。
水球のなかに打ち込まれた杭は、ものすごい電力を生み水球を凄まじい勢いで分解していく。
水素と酸素に分解され消えていく水球は、雷を帯びた衝撃が吹き飛ばした。
その瞬間、分解された水素と酸素が紅の炎と反応し超巨大な大爆発を起こした。
爆発に巻き込まれたリンは地面に叩きつけられた。
「ぐぅ!」
「リン!大丈夫かぁ!?」
「ワン!」
すぐさま駆け寄る紅と茶々丸。
巨大な水球からの脅威は収まったが、リンが大ダメージを負った。
青色のヘリオスは、何もものを言わないが、その一瞬を見逃さなかった。
紅に体を抱えられ、立ち上がろうとしたリンを水滴が貫いた。
リンだけではない、茶々丸もその餌食になってしまった。
水球は吹き飛ばして消し飛んだはず、再度水球を作っている様子もなかった。
しかし、どこからともなく現れた水滴の槍でリンと茶々丸は戦闘不能になった。
「は?」
紅は自身の体温が異常に高いので水滴の槍を受けることはなかったが、その水滴の槍の出所を探した。
巨大な水球は、リンの『真魔人電子槌』の電気分解によって水素と酸素に分解された。
そして、その水素と酸素は、紅の炎で着火し大爆発を起こした。そのとき、水素と酸素は再び反応し、水を生成していた。
それを青色のヘリオスは見逃さなかった。
とことん相性の悪い相手と戦っている紅は、意識を失ったリンと茶々丸を見て怒りが抑えられなくなっていた。
「ヘリオスゥゥゥ!!!!!!」
爆発的に温度が上昇し、辺りが灼熱の地獄と化す。いや、地獄程度では収まらない。紅は、超新星爆発が起きるほどの凝縮した熱の塊と化していた。




