第104話
第104話 西側の武人
「単騎で乗り込めるって言っただろ!」
「信用されていないのです。」
「はぁ?嵐龍より俺のほうが強いだろ!」
「それは違います。私のほうが強いです。そもそも強いだけでは、今回の東側への攻撃は成り立ちません。目的は大名の暗殺なのですから。あなたみたいな派手な戦闘方法では、邪魔にしかなりません。」
「カッチーン!よく言うわ。派手な戦闘なら嵐龍だってそうだろ!」
「違います。私は繊細に攻撃しているつもりです。」
「どこがだよ!山吹き飛ばしてるだろうが!」
「あれは山が弱いからです。」
「山が弱いって何言ってんだ!」
一人は、白い虎の獣人であり、もう一人は、長い髪に切れ目の長身、腰には身長と同等の刀が携えてあった。
二人を乗せた小舟は、ゆっくりと進んでいた。
二人は西側の武人であり、東側の大名暗殺の命を受け、海上を進んでいたところだった。
「あぁん?なんだぁ?」
「あれは東側の船ですね。」
「よくもまあ、ずけずけと俺らの小舟に突っ込んできやがる。」
「危ないですよ。」
「うるせえ!生意気だから止めるんだよ!」
白い虎の獣人が小舟の先端に行き、突っ込んでくる船の先端を思いきりぶん殴った。
「うるぁ!」
ものすごい衝撃が迸り、海上に水しぶきが上がった。
「あ?」
「何をしているんですか。雷虎は。」
その衝撃に乗っていた小舟が耐えられずに、こなごなになり二人は海上に投げ出された。
長身の男は、海に沈むことなく空中に浮いている。しかし、白い虎の獣人は、海にぷかぷかと浮いていた。
「おい!何見てんだ!」
「哀れで。」
「ぶっ飛ばすぞ!」
「さて、どうしましょうか。」
「無視すんな!」
「東側の船なので、放っておくわけにはいきませんね。」
「ったくよぉ。嵐龍と違って海の上じゃ戦えねぇんだよ。俺は!」
「とりあえず、甲板に行ってみましょう。連れていきましょうか?」
「誰が手を借りるか!」
―――――
とてつもない衝撃に3人は驚いた。
「なんでありんすか!?」
「何かに衝突したのかしら。」
「ぶつかった!」
船体が衝突で前のめりになり、後方が持ち上がってしまった。
船は、浮き上がった船尾がバシャンと大量の水しぶきを上げ叩きつけられた。
リリィは、船首に向かい海をのぞき込む。
そこには、何か怒鳴りあっている声が聞こえた。
すぐさま、甲板に戻り、翠と藍に報告した。
「誰か居たわ。敵かも。」
「船を壊されたら大変でありんす。」
「今のパワーからして結構強いかも。」
「そうね。逃げるのも手かもしれないわね。」
すると、そこに嵐龍の足に捕まり、ふわふわと浮きながら甲板に上ってきた雷虎が言った。
「おいおい!逃げるってのは無しじゃねぇか?東側の魔術師さんよぉ!」
「確かに。見逃せません。簡単には西側に行かせるわけにもいきませんので。」
完全に勘違いをしている二人だが、誤解を解くには、到底聞き入れてくれる態勢ではなく、闘気むき出しであった。
「勘違いしているでありんす。わっちらはただここを・・・。」
「おいおい。動くんじゃねえ。」
雷虎は目にも止まらない速さで、翠の口を塞いだ。
翆は、目をぱちくりさせ驚いていた。
そこに打ち込まれた、氷結弾が雷虎を翠から遠ざけた。
「お姉ちゃんに近寄るな。」
「なんだぁ?ありゃ?」
初めて見るライフルを不思議そうに見る雷虎。
「話にならないわね。私があの白い虎をやるわ。翆と藍であの切れ目をお願い。」
「わかったでありんす。」
「わかった。」
「ああん?俺の相手がこんなちっせえやつなのかぁ?」
「あなたも小さいじゃない。ふざけてるの?」
「んだと!?俺はでっけぇ男だ!」
「身長の話をしているのだけれど・・・。獣人はやっぱり馬鹿が多いわね。」
「てめぇ。泣きわめいて謝っても許さねぇぞ。」
リリィの挑発にまんまと乗りイライラを隠し切れない雷虎。
それを横目に長身で切れ目の嵐龍がゆるゆるとあいさつした。
「私のお相手はあなた方ということですか。さて、二人相手とはいささか骨が折れますね。刀は一本しかありませんし。」
「あんまり時間もありんせんので、長引かせるつもりはないでありんす。」
「本気でいく。」




