~序章~第1章~
初めての投稿になります。つたない文章ですが、よろしくお願いいたします。
【序章】
女を抱いた日の朝のことだった。安田幸太郎は女と共に寝ていたベッドの上で、
自らの変化に気づいた。無機物、固形、個体、いや少なくとも、自分が”人間“では
無くなったことだけは、わかった。
枕脇に置いていた、自分のスマホに映る自らを見た幸太郎は言葉が出なかった。
ディルド。
26歳、岩手県出身、経験人数21人、杉並区在住の男、幸太郎は、“ディルド”となって
しまった。
【第1章】
6月。東京はすでに人を殺す太陽の熱線が降り注いでいた。
クーラーをつけなければ、眠れない夜が増えてきた。女に腰を振りながら、
汗をかくこの男幸太郎も、この暑さには耐えられなかった。
(室温設定、間違えたな)
女は冷え性。そんな固定概念のために、クーラーの室温を下げるのを怠った自分に腹が立った。
そんなことを思いながらも、腰を振ることはやめない。早すぎず、リズムよく。
AV会社で働く友人から教わったテクニックである。速さや強さだけではだめなのだと教わった。
もっとも、その友人は素人童貞であるので、友人は先輩か、もしくは男優から教わったのだろう。
友人の性経験はともかく、友人からの知識は男に自信を与えてくれていた。しかし、それ故に幸太郎は行為の最中でも冷静でいてしまう。そんな自分に嫌気がさしていた。
(昔は、へたくそだったからか、もっと夢中になれていたのにな。)
幸太郎は流れ作業のように、体位を変え、後ろから突いていく。徐々に早くなっていく突き。
速さに比例するように、女の嬌声は高くなる。
(冷静にはなるけど、まあ、気持ちよくはなるんだよな)
突きの動きをやめ、女の耳タブを舐める。女は甲高い声を上げ、悶える。舐める。耳たぶから、
穴の中まで、舐める。片方の耳には、指を優しく触れ、舌と連動するように耳を刺激していく。
恐らく、女の聴覚は幸太郎の指と舌の音に支配されている。
男は舌を離し、突きを再開する。指は耳の中で遊ばせているままだ。
(そろそろイコう)
男は高まった射精感を自らの股間に集める。あくまで気持ちである。早める腰の動きに、女は汗を、
涎をまき散らして応える。
「イクよ」
幸太郎の囁きに、女は小さくうなずく。
小さなうめきと共に、幸太郎は精を放った。コンドームの中に。
数秒間、腰を女の股に擦り付けるようにしたのち、幸太郎は女から離れる。
まとわりつく愛液と、しなびたコンドーム。その中には、しっかりと精子がたまっていた。
幸太郎は避妊を怠らない。きちんとコンドームはして、もちろん生で挿入などしない。
女への配慮はもちろんだが、責任を取る事を恐れている。
(彼女ならともかく、セフレみたいなのと生でやる気にはなれないよ。病気も怖いし)
幸太郎はティッシュを女に渡しながら、コンドームをゴミ箱へ投げ捨てる。
「シャワー、浴びる?」
女は幸太郎に上目遣いで聞いてきた。
「いや、いいや。明日で」
「そう。じゃあ、私浴びてくるね」
女は投げ散らかった下着を拾い集めて、風呂場へ向かう。
行為の際の下着は、行為後には行方をくらましがちであるが、今回はすんなり見つかった。
赤の下着だった。Tバックとまではいかないが、そこそこに男に情欲を沸かせる下着だったと思う。
薄暗かったのでよくは見えていない。赤だったか、もしかしたらピンクなのかも知れない。
そんなことを思いながら、幸太郎は汗が染みるベッドに寝そべり、部屋を一瞥する。
いくらかのぬいぐるみと、CD、PC、ソファ、ベッド。棚の上には、東南アジアで
売られてそうな、理解できない表情の置物が置いてある。変わったところはそれくらいで、
いたって普通の一人暮らしの女の部屋である。
男の雰囲気はなかった。
(別に、彼氏がいてもいなくても関係ないけど。いや、万が一鉢合わせたら大変だな。)
そんな不倫ドラマみたいなことへの警戒を持ちながらも、女の分のスペースを空けて、
幸太郎は眠りにつく準備を始める。
(明日は、土曜日だから、この子が起きるまでだらだら寝ていよう。朝立ちしていたら、
朝からやるのもいいかな。)
結局はSEXが好きなのである。
ドライヤーの音が聞こえる。10分ほどドライヤーが動き続け、止む。
忍び足でベッドに近づく音が聞こえる。女は男が寝たと思ったのか、最小の物音で男の隣に寝そべる。
幸太郎は目を閉じていてわからないが、女は幸太郎へと身体を向けているように感じる。
幸太郎は女へ背を向ける形へと寝返りを打つ。