第98話 ハナの機嫌次第
「もう一度?」
「ダンジョン協会ルースラゴス支部からシーフードダンジョンの調査依頼が入りまして、何組かのパーティに声をかけたんですが即答で断られました」
圧倒的に不人気ダンジョンなので予想通りだが困ったと言う。
「自ら進んで2回も制覇された皆さんならと藁にも縋る気持ちなんです。もちろん指名依頼になりますし冒険者ギルドへの貢献度も上乗せです」
「調査ってじっくり時間をかけるんでしょう?」
「地道なのは無理だな」
「次の目的地までお急ぎですか?」
「ハナちゃんが我慢できないから調査は無理だ」
「すごい勢いで前に進む才能しか無いんです」
ハナが凛々しい顔つきで肯定する。
「…制覇出来そうな実力のパーティには即答で断られていて、もう当てがないんです。なにしろ圧倒的に不人気なダンジョンなので」
「受けようよ!」
への字口のアルバロが立ち上がった。
「アルバロ…」
「でもなあ…」
私と父さんがハナを見る。
「改修で美味しいものいっぱいドロップするじゃん!」
「それぞれのフロアでポップする魔物一覧、ドロップ品一覧、このレベルでいいのでざっくりした地図。この3点をお願いしたいのです」
見せられた地図のクオリティは落書きレベルだった。
── いけるんじゃない?
── だよな?
父さんと目で会話した。マッピングで出した地図を書き出せば、これより立派な地図が出来る。
「ハナがぐずったら一旦中止して改めて入ればいいじゃん。そこまで困ってるならこっちの都合に合わせてくれるでしょう?」
「交渉はお任せください」
「ハナちゃん、シーフードのダンジョンに行く?」
「飽きちゃった」
アルバロが崩れ落ちた。
「うちのハナちゃんがシーフードのダンジョンに飽きたと言っている」
「この間、泊まり込んだもんね」
とりあえず2〜3日は街の外の森や荒野の日帰り依頼を受けながらハナの様子をみることにした。
どうせ不人気ダンジョンだから人も来ないし急がないという雰囲気にアルバロがプンスカしていた。




