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第94話 全員でダンジョン

「ただいまー!」


 玄関で浄化するとハナがキッチンに向かって駆け出した。


「おかえりハナちゃん。ご飯出来てるぞ」

「おいしいにおい」

 父さんに抱かれたハナがフンフンして目を細めている。



「見事なアクアパッツァだね」

「リオ様が釣り上げました!」

 リザが嬉しそうに報告してくれた。リザのこういうところが可愛い。食いしん坊なのに私たちが戻るまで待っててくれるところも好き。


「リザが獲ったアサリと一緒にアクアパッツァにしてみた。〆はリゾットにするぞ」

父さんが大きな魚を取り分けて配る。


「おいしー」

「美味しい出汁が出てる!今日のダンジョンで出たシーフードも立派だったよ。お昼はドロップしたロブスターを食べたんだけど、すっごく美味しかった」

「不人気ダンジョンって言ったくせに!」

「不人気なのは事実じゃん」

「ぐぬぬ…」

「でも風向き変わりそうじゃない?フルーツが無くても真珠のために行く価値あると思うけどね!」

「でしょう?」

「真珠の手前で脱落しちゃうの勿体ないね」


「後でダンジョンのシーフードも見せてくれ」

「うん」


〆のリゾットも美味しかった。

「おなかいっぱい」

ハナがお腹をポンポンした。

「美味しかったね」

「うん」



「カナ、ダンジョンのシーフード出せるか?」

「ちょっと待って」

キッチンに父さんが並べたバットの上に少しずつ出してみる。


 ロブスター、ホタテ、蛤、車海老、甘えび、雲丹など甲殻類や貝は殻ごと、サーモンや鯛などは切り身でドロップした。


「これはいいな!」

「美味しかったよ。海老が殼ごとあると美味しい出汁をとれるからいいよね」

「魚も切り身だと扱いやすくていいな、しかも鮮度が良い。これはこのまま刺身でいけるな」

横でアルバロがドヤ顔だ。


「俺も行きたい」

「じゃあ明日もダンジョンに行こうか」

 明日は父さんとリザもダンジョンだ。不人気ダンジョンはハナやリザが暴れても誰にも迷惑をかける心配が無くていいな。




「すみませええええええん!」


 今日もシーフードダンジョンの受付に誰も居なかったから叫んだ。


「昨日のカナさん!」

「ハナちゃん、おはよう〜」


「今日は父さんたちも一緒に攻略します。戻らなくても心配しないでください。なんだったら中で何泊かしてくるかもしれないので」


「…まさか気に入ったんですか!?」

「だいぶ改修があったようなので我々も調査に入ろうと計画しているんです」

「すでに最上階まで攻略されたとのことですので止める理由は無いんですが…」


「心配してくれてありがとう、でも大丈夫なので!」


 ダンジョン職員の皆さんがムキムキな父さんを見る。

「大丈夫ですよね!」

「宿泊予定も承りました」

「危険を感じたら戻ってくださいね」



「いってらっしゃーい!」

全員で見送ってくれた。



 入るなりハナとリザが無双するのでドロップ品を拾いながら後を追う。

36階ボス部屋のセイフティゾーンでお昼。昨日よりもペースが早い。


「昼はバラちらしにしたぞ。あら汁もあるからな」

さっそくドロップ品でお昼にした。


「おいしー」

 ハナのあら汁は慎重におつゆだけをすくって渡したので両手でお椀を持ってごくごく飲んでいる。うちのハナちゃんは旨味の分かる子なのだ。


「バラちらしも美味しいよ!」

「アルバロも気に入ったか?ホテルの鮨屋に配属されていた時の人気メニューなんだが今日はホテルより豪華だぞ」


「魚って美味しいですね…」

「おかわりあるぞ」

「食べます!」

 父さんがわんこそばのように次々と盛り付ける。


「おなかいっぱい」

 ハナが寄りかかってゴロゴロしてくる。これはお昼寝の合図だ。どうせ誰も来ないし、ゆっくり攻略するつもりなので時間もある。


「ハナがお昼寝だから私も寝る」

 インベントリからブランケットを出してハナと一緒に丸くなる。



「あれ…」

起きたらアルバロに膝枕されていた。

「起きた?」

「ありがと」

「うん」


起きてハナをアルバロに渡してお湯を沸かす。

「緑茶でいいかな」

 アルバロもリザも肯くので急須を出してお茶を入れた。ボソボソとお喋りしていると父さんが起きてハナも起きた。


「よく寝たな」

「そうだね」


「ハナ、フルーツ食べたい」

 ダンジョンでドロップしたマスカットを渡すとぷちぷち可愛く食べた。


 休憩したら続きを攻略しよう。今日は帰りの時間を気にしなくて良いので気持ちに余裕がある。

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